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第20話 俺は、ギャルから連絡先を要求される。

結局、俺と栗栖は、同時に教室の前までくる。



「先入れ」



俺は栗栖に、先に教室に入るように言う。



「一緒に入ろうよ」



栗栖が言う。



「一緒に入る必要なんかないだろ」



俺が反論すると、栗栖がなぜかむくれる。



「いいじゃん、一緒に」



そう栗栖が言った瞬間、ホームルーム開始のチャイムが鳴る。



「ほら入れ」



俺が教室に入るように促すと、栗栖は寂しそうな表情で教室に入る。

なんで俺と教室に入れないというだけで、栗栖はあんな顔をしたんだ?

そんな疑問を持ちながら、俺は栗栖が教室に入った後、もう一つの入り口から入る。

俺が席に座った直後、担任の教師が入ってきて、ホームルームが始まる。






その後は何かあるわけでもなくいつも通り放課後になった。


コンコン


生徒指導室のドアをノックすると、入れと言う声が聞こえたため、俺は生徒指導室に入る。



「失礼します」

「来たな、伊良湖」



あの時俺を抑えた教師が、俺が来たことを確認して、感心した顔で言う。



「はい。それで、私に対する処分はどうなりましたか」



俺はストレートに、教師に自身の処分がどうなったか質問をする。



「ああお前の処分だがな、今回は無罪放免だ」

「……はい?」



俺は一瞬教師が何を言ったのかわからず、首をかしげる。



「もう一度言うぞ。お前は無罪放免だ」



俺が言ってる意味を理解できないと思ったようで、教師がもう一度俺に処分内容を言う。



「私は、最低でも1週間の自宅謹慎は覚悟してました。いったいどうしてですか?」

「あの後、生徒に聞き取り調査とかいろいろしたんだ。

だがな、聞いた生徒全員が『伊良湖が一方的に殴られてた』と言っていたからな。

伊良湖に関しては、何も手出ししてないから悪くない、と異口同音に言っていた。

お前が騒ぎを起こした、手を出したと言う証言も証拠もない。

だから、処分する理由もない。だからお前に対しての処分はない」



教師が、俺が処分されない理由を説明する。



「なるほど、そういうことですか」



俺は教師の説明で納得がいった。

生徒会長のときも栗栖のときも、俺はあれらのときには行動には細心の注意を払っていた。

彼女たちだけではなく、俺も被害者と認定されるように。

それが功を奏したらしい。



「そんなわけだから、もうお前は帰っていいぞ」

「わかりました」



教師が帰ってもいいと言ったので、俺は帰ることにした。

だが扉を開ける直前になって、気になることがあったので聞いてみる。



「あ、その前に一つ聞いてもいいですか?」

「何だ?」

「あの先輩はどうなったんですか?」



俺は、あのクズ男が今回の件でどんな処遇となったのか気になったので、ついでに教師に聞いてみる。



「あいつか。あいつは退学だ。開校以来、初めての退学処分者だ」

「もしかしてあの先輩、過去にも似たようなことを?」

「ああ」



あの男、過去にも相当いろいろやってたらしい。



「あいつ、ことあるごとに問題を起こしててな。学校史上最大の問題児と言われていたんだ。

今までは親が親だったから、我々教師も対応に手をこまねいていたんだ。

今回の一件で、さすがに我々も看過するわけにいかなくなってな。退学処分にした」



これを聞く限り、もしやあの男はどこぞの金持ちの息子なのか?

何か匂うが、それを知る必要はないし、知ったところで何の意味もないから、これ以上考えるのよそう。



「なるほど。そうだったんですね」

「ま、そういうことだ。じゃ、気を付けて帰れよ」

「はい、失礼します」



俺は生徒指導室を後にする。

俺が駐輪場まで来た時、朝と同じように栗栖がそこに立っていた。



「伊良湖」



栗栖が俺の姿を見るや近づいてくる。



「どうしてまたここにいる」



俺は栗栖に問いかける。



「あんたのことを待ってた」



栗栖が、俺の質問にそう答える。朝の一見といい、またなぜ?



「俺を待つ必要はないだろ。何のために」



俺は栗栖に理由を問いかける。

すると栗栖は、俺の質問に俺が見たことがない笑顔で答える。



「あんたの連絡先を聞くためにね」

「は?」



栗栖の答えに呆気にとられる。

たかがそれだけのために、俺を待ってたのか?

俺の連絡先なんて聞いて、何になる?

俺は栗栖の答えに、脳内が混乱する。



「だ・か・ら、あんたのL〇NEでもなんでもいいから、連絡先を聞くためにここで待ってたんだよ。あんたの連絡先教えて」



未だ俺の脳内は混乱しているが、栗栖は確かに俺の連絡先を知りたいがために、ここで待っていたという。

そして栗栖は、俺に連絡先を教えるよう要求している。

俺は栗栖の真意が読めず、栗栖の要求を拒否する。



「連絡先を知ったところで、お前が俺に連絡よこすような用事が起きることはない。その逆も然りだ。

だから、お前が俺の連絡先を知る必要はないし、俺も教える気はない」



俺がそういった瞬間、栗栖は悲しそうな目で俺に懇願する。



「どうしてもだめ?」



さっきまでは強気で要求してきたのに、今度は俺にすがるようにして、連絡先を聞き出そうとする。

正直ここまで変化が激しいと、何か裏があるとしか思えない。



「なぜそこまでして知りたい」



俺が連絡先を聞きたい理由を訊くと、栗栖はその理由を朝とは打って変わって、はっきりと真っ直ぐ俺を見据えて答える。



「あんたと、まずは友達になりたいの!」



は?一体どういうことだ?



「まずってなんだまずって」



友達になりたいというのはわかったが、なぜまず、という枕詞がつくのか。

その意味が分からず、俺は栗栖にそう質問する。



「あたしね、もしかしたら、あんたに惚れちゃったかもしれないの」



栗栖が俺に惚れる?そんな馬鹿な。あり得ない。

それが仮に本当だとしても、きっかけは一体なんだ?

俺にはそんな疑問がわくが、今は一旦、それについては考えないことにしよう。



「だからね、本当にあんたに惚れたのかを見極めるために、最初はあんたと友達になって、一緒に出かけたりとかしたい。

そのために、連絡先を知りたいの」



その答えなら、とっくに出てるんじゃないのかね。

そう思うが、よく考えたら俺自身この高校に入学してから、友達と言える人間がいない。

あと、どうせ結末はわかりきってるし、それくらいならいいか思い、栗栖に連絡先を教える。

最悪、あとでなんとでもなるし。



「わかった。友達になろう。

栗栖、連絡先教えるから、とりあえず電話番号を教えてくれ」



そう言うと栗栖は目を輝かせ、ありがとうと言った後電話番号を言う。

俺は言われた電話番号に電話をかける。すると栗栖のスマホが震える。



「じゃぁ次は、メアドを教えてくれ」



栗栖からメアドを聞き、メールを送信する。するとまた栗栖のスマホが震える。

俺の電話番号とメアドが入ったアドレスが映ったスマホの画面を、栗栖がうれしそうに見せてくる。



「ねぇ、LONEってやってる?」



メアドを教えた後、栗栖が嬉しそうな顔のまま、こんなことを訊いてくる。

栗栖の一言に、俺は固まる。



「え、もしかしてLONEのアカウント持ってない?」



栗栖が困惑した表情になる。

俺は正直に、栗栖に伝える。



「ああ。今まで必要なかったから、アプリすら入ってない」

「え!?じゃあインストしよ!ね!!」



正直に言うと、栗栖が食い気味に言う。

俺は栗栖のテンションに戸惑いつつも、栗栖の言うことに了承する。

栗栖に教えてもらいながらアカウントを作り、友達登録を済ませる。



「じゃあ今日からあたしたち友達ね。近いうちに連絡するから、その時はよろしく」



そう言ってスマホをポケットにしまった栗栖は、駐輪場から去っていく。

俺はそれを見届けた後、いつも通り家に帰った。

まぁ、たぶん嘘か反故にするかだろうな、そんなことを思いながら。

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