第18話 あたしは、気持ちに気づく。
「おっはよー☆」
「あ、麻衣、おはよー!」
あたしは朝、みんなに挨拶して仲間と話をしながら、教室で彼が来るのを待っていた。
でも彼は、いつまで経っても来ない。
え、今日休み?そう思っていたら、予鈴の5分前ぐらいに来た。
そしてあたしは、結局彼に話しかけることができないままホームルームの時間になったため、あたしは席に着く。
その後も話しかけようと、毎時間授業が終わった瞬間に立ち上がって、彼の席に行こうとする。
でも、彼はあたしが席を立った瞬間には、すでにいなくなっていた。
一体どうやったら、授業終わった瞬間に席からいなくなるのよ。
その後も、何度も何度も彼に話しかけようとするが、どうしても捕まらない。
昼休みですら捕まらない。
結局その日あたしは、彼に話しかけることはできずに放課後になる。
あたしは、生徒指導の先生に生徒指導室に呼ばれたため、おとなしくそこに行く。
「すまないな栗栖。急に呼び出して」
「いえ。昨日のことですよね」
「そうだ。昨日いったい何があったのか、教えてくれるか」
そう言われたため、あたしは昨日起こったことを全て、詳細に話す。
「ん、よくわかった。で、昨日の顛末はこれで間違いないか?」
生徒指導の先生が、しゃべった内容を書いた紙を見せてそう言ってくるので目を通す。
間違いはないので、先生に間違いありませんと言う。
「よし。じゃもう帰っていいぞ」
先生にそう言われたのであたしは家に帰る。
その後も、彼と話をしようとしたけど、何度話しかけようとしても、絶対に話しかけるタイミングを狙ったかのように、授業以外のときは絶対に席にいない。
おまけに朝は遅刻ギリギリ、放課後は脱兎のごとく帰るから、捕まえることが出ない。
このままじゃ埒が明かない。
そう思って、1年の時同じクラスだった女子を探して、片っ端から彼について話を聞いてみた。
彼について聞くと、どうやら1年の時から、そもそも彼はそんな感じらしい。
更に聞いたところでは、彼はどうやら1年の時に、何かの出来事に巻き込まれて以来、ずっとそんな状態らしい。
その出来事っていうのが何なのか聞いてみたけど、全員知ってるでしょ、と言って教えてはくれなかった。
それを聞いてなお、彼を捕まえられない中、彼が授業合間の休憩に、椅子に座ってる日が、一日だけあった。
ただそんな日に限っていろんな人から話しかけられ、彼のもとに行くことができない。
やむを得ずその日は、彼のことをクラスの仲間と話しをしながら、観察することにした。
休憩中も授業中も、彼のことをずっと見続けていたが、彼に誰も話しかけようとはしない。
彼も、誰とも一言も話しかけたり話そうとしない。
まるで会話なんて必要ない、とでもいうかのように。
結局その日の放課後まで、彼のことを見続けていたが、常にそんなカンジだった。
その一日彼を観察する中で、あたしはふと思った。
どうして彼は、人と関わろうとしないのか。
なぜ彼は、そこまでして孤独でいようとするのか。
なんで彼は、そんな状態に何の疑いも持ってないように振舞うのか。
あたしは気づけば、彼のことがすごく気になっていた。
彼は、あたしが窮地に陥ったとき助けてくれるくらいにはお人好しなのに、なんで普段はそこまで人に無関心なの?
何であたしのことを助けてくれたのに、その後話しかけて来たりしないの?
でもあたしも、なんでそこまで彼のことを?
そっか、あたしは彼、いや伊良湖のことが、たぶん――――――――




