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第133話 俺は、誕生日を祝われる。

誕生日。



「「「お誕生日、おめでとう」」」



街中にあるレンタルスペースだろう一室、その中で、俺は3人に誕生日を祝われていた。



「静、麻衣、桔梗、ありがとう。

でも、いったい誰がここまでしてくれたんだ?」



俺が訊くと、桔梗がよくぞ聞いてくれた、という顔をする。



「私が、場所の選定をしたわ。

あ、支払いは気にしないで頂戴」



次に、麻衣もドヤ顔をする。



「物の配置とか飾り付けは、あたしが考えてやったんだよ」



静は、二人のことを静かに見ている。



「そうだったのか。ありがとう、二人とも」

「「どういたしまして」」

「わたしは、健くんの体調管理をしてたよ」



静が、俺の手を握りながら隣で言う。



「だから、最近やたら過保護だったのか」

「そうだよ」

「えっと、あたしたちもいるんだけど」

「あ、忘れてた」

「忘れないでください!料理を持ってきますね」



静のすっとぼけに、麻衣がすごい嫉妬した声を出す。

麻衣が珍しくそんな感情を出したことに、俺は少し驚く。




「おぉ、すごいな」

「でしょ?手配はあたしでしたんだ」



またも栗栖が、したり顔をする。



「あ、代金は心配しないで。全部あたし持ちで」



申し訳なく思い財布を出そうとして、栗栖に止められる。



「今日は、わたしたちの好意に全部甘えてほしいから」



静が、俺の肩を抱きながら言う。



「そ、そうか」

「そうなの」



静の言葉に、俺はもう何も言わないことにする。




「それじゃ、今から健一郎の誕生日パーティを始めます」



料理がそろって、栗栖が高らかに宣言をする。



「本日の主役、健一路に乾杯の音頭を取ってもらいましょう」

「じゃ、じゃあ。今日は本当にありがとう。乾杯」

「かんぱーい」



俺が音頭をとると、皆が一斉に食べ始める。

そして。



「健くん。ほら、あーん」

「あ、ズルいですよお姉さん。私もやりたいです」

「あたしも!」



やっぱり、こうなるか。

静が少し食べて、俺に食べさせ始めた途端に2人がそう言ってこっちに来る。



「いいよ。じゃあ、健くんが嫌にならない範囲で、やろっか。

健くん、もうダメになったら言ってね」

「わ、わかった」



静がとりもちながら、3人で俺への食べさせあいが始まる。

さすがに3人からなので、少量ずつにしてもらいながら食べる。



「ん、もう腹いっぱい」

「じゃ、ここまでだね」



俺が申告すると、3人同時に手が止まる。



「3人とも、あんまり食べてないよな?

俺はもういいから、あとは3人で食べてくれ」



俺が言うと、3人は頷いて、各々が座ってた場所に行って食べる。

そして、話しながら食べてると、料理が完全になくなる。



「料理がなくなったことだし、プレゼントを渡しましょうか」



それから少しして、桔梗がそう言って、いそいそと何かを取り出し始める。



「そうだね、あたしも用意したし、ここで渡そうよ」



麻衣も、桔梗に同調する。



「どっちからにする?」

「言い出しっぺの私からでいい?」

「いいよ」

「ありがとう。私からはこれ。喜んでもらえるかしら?」



桔梗が、俺にプレゼントを渡してくる。

開けると、グローブが入っていた。



「もしかして、最近欲しいもの訊いてきたのって」

「そういうこと」

「ちょうど今通学で使ってるやつがもうダメになりそうになってたから、助かったよ。

ありがとう」

「喜んでもらえて、何よりだわ。

もし国公立前期、後期ともに落ちてたら、健一郎くんにプレゼントを渡せなかったから、この場で渡せて、よかったわ」



桔梗の言葉に、静が反応する。



「ん?ここにある国公立って一つしかないよね?

てことは、あの大学か。綾瀬さんって何学部なの?」

「医学部です」

「あぁ~。ほぼ会うことないね」

「お姉さんの学部は何なのですか?」

「工学部なの」

「でしたら、そうですね」



静と桔梗が、学部の話をする。

で、今の話を聞く限り、大学内で会うことはほとんどないってことか。

それがいいことかどうかはわからないが。



「で、これが、あたしからのプレゼント」



麻衣も、俺に渡してくる。

この箱は、なんか知ってる気がする。

そんなことを思いながら開けると、ヘルメットが入っていた。



「健一郎のヘルメット、だいぶヘタってたから、それにした」

「え?」



俺は、疑問に思った。

ヘルメットは定期的に交換してるし、そんなことはないはずなんだが。



「そうか。ありがとう」

「どういたしまして」



礼を言うと、栗栖がニコッとする。



「わたしのは、帰ってからのお楽しみ」



静は、そんな意味深なことを言う。



「で、プレゼント渡すのも終わったし、この機会にあたし、健一郎に訊きたいことがあるんだよね」



プレゼントをもらった後、麻衣が真剣な顔つきになる。



「健一郎は、あたしたちの中で、誰が一番好きなの?」



麻衣のその質問で、場の空気が凍る。



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