第129話 俺は、告白する。
(side:健一郎)
3月。
今日は、桔梗が高校を卒業する日だ。
在校生は休みだ。
俺が制服で校門で待っていると、桔梗がやってくる。
「卒業おめでとう」
「ありがとう」
俺がお祝いの言葉を言うと、桔梗はうれしそうにする。
「ね、抱きしめて」
桔梗が、上目遣いで俺にねだってくる。
「それは、後で」
俺がじらすと、桔梗がせがんでくる。
「嫌、ここでして」
抗議しつつも、何か期待する目を俺に向ける。
「ダメ。後で」
「あぁん」
桔梗が、悶えつつうれしそうな顔をする。
「この後は最後の制服放課後デートだろ?そのときにいくらでもできるだろ?」
「でも」
桔梗が、欲しがる目をする。
「ほら、行こう。車まで案内してくれ」
「もぅ」
俺が強く手を握りながら言うと、不満げな顔をしながら俺を車へと案内する。
「高校生活の最後に、こういうところに行きたかったの」
桔梗の運転する車に揺られること数時間。
隣県の岬に来ていた。
「ここ、知ってる?」
「いや、知らない」
「ここで、あそこにある鐘をカップルで鳴らして、この鍵をフェンスに一緒に掛けるとそのカップルは一生添い遂げるって言われてるの」
「へぇ。いわゆる、恋人の聖地的な?」
「そう」
桔梗が、場所の説明をしながら、海のほうを見ている。
「ねぇ、健一郎くん。私たちのこの関係は、いつまで続くかわからない。
けれど、何かの理由があって別れることになるまで、私はあなたのカノジョでいたい。
そして、私は別れたとしても、あなたと付き合ったことを人生で後悔することはないって、ここで伝えたい」
桔梗が、真剣な顔で俺に言う。
「俺も、桔梗のことが好きだから、できる限り桔梗の恋人でいたい」
「え?」
俺が正直な気持ちを吐露すると、桔梗が驚いた顔をする。
「そういえば、今まで言ったことなかったよな?
桔梗、俺は桔梗のことが好きだ」
俺の告白を聞いた桔梗が、俺に抱き着いてくる。
「うれしい。私も、あなたのことが好き。
だから、別れなければならなくなってしまうそのときまで、私の恋人でいてください」
桔梗が、涙目で俺に告白する。
俺は、桔梗のことを目一杯力強く抱きしめる。
「あぁ、うれしい。こんなに力強く抱きしめてくれてる」
桔梗が恍惚としながら、俺のハグを受け止める。
「ね。ここに来た時に言った恋人同士のジンクス、やりましょう?」
「あぁ、やろう」
ハグをし終わった後、俺は桔梗の提案を受け入れ、鐘を鳴らしに行く。
鐘を鳴らした後、鍵を売店で買って、フェンスに掻ける。
「今日は、ここまで付き合ってくれてありがとう。
もう遅くなってしまったから、急いで帰るわね」
「一応、帰るのは夜になるかもとは家族に言ってるから、とりあえずは問題ない」
「わかったわ。じゃ、行きましょう」
桔梗が、車を走らせ、来た道を戻る。




