第128話 私は、麻衣の未来を憂う。
(side:優子)
夜。
夕食が終わってから、私は麻衣に、彼氏くんのことについて、訊いてみる。
「麻衣」
「どうしたの?お母さん。そんな真剣な顔で」
「麻衣は、健一郎君のことどう思ってるの?」
私が訊くと、麻衣がなにを訊いてるの?というように答える。
「彼氏で、あたしが本気で好きになった、初めての男。
それがどうかしたの?」
麻衣が、不思議そうな顔をする。
私は、今日あったことを話す。
「実は、ショッピングモールで偶然健一郎君に会ってね。
そしたら、隣に女の子を連れてたの。
しかも、義理の姉でカノジョで、年上のお姉さんだったの」
「あぁー。健一郎、今日お姉さんとデートするって聞いてたけど、そんなとこにいたんだ」
「知ってたの!?」
「うん。学校で聞いたんだ。今日はお姉さんの誕生日だからデートできないって」
私は、麻衣から聞いた情報に驚愕する。
「麻衣は、それでいいの?」
「しょうがないじゃん。健一郎は一人しかいないんだから」
「物理的な意味じゃなくて、心理的な問題をしてるの。
麻衣は、健一郎君が他の女性といてもいいの?」
私が焦りながら訊くと、麻衣はあっけらかんとする。
「いいよ。だって、あたしたちがお姉さんに要望して、付き合うのを認めてもらってるから」
「そ、それは、健一郎君に同意はとったの?」
「とってるよ」
麻衣が、淡々と私の質問にそう答える。
「まさかお母さん、あたしの邪魔しないよね?」
麻衣が、私ににこやかな顔で確認くる。
私は麻衣のその顔に、いたたまれない気持ちになる。
「麻衣は、それでいいの?」
「さっきも言ったじゃん。いいんだよ。
結局別れることになっちゃったとしても、あたしはこの恋は後悔しない」
麻衣が、そう言い切る。
「でも」
「いいんだよ」
麻衣が、これ以上は言わせないというように、私が言おうとするのにかぶせてくる。
「だとして」
「お母さん?」
もはや、何も言わせてくれない。
「わかったわ。私はもう何も言わない」
私は毒気を抜かれ、もうどうでもよくない。
「わかってくれて、ありがとう」
麻衣が、笑ってない笑顔見せる。
「訊きたいことってそれだけ?
「え?ええ」
「じゃあ、部屋に戻るね」
麻衣が、部屋へと行ってしまう。
「わからないわ」
あの彼氏くんが、本当に複数人と付き合ってて、その一人が麻衣で、彼氏くんと付き合ってる女の子全員が納得してる。
いくら彼氏くんに魅力があるからとはいっても、こんなことしてたら、大事な麻衣の人生を無駄にしてしまう可能性が高い。
でも、あの様子じゃ、麻衣は別れる気ないし、下手に別れさせたら余計にこじれるのは目に見えてる。
「しばらく、様子を見るしかないわね」
いろいろなことが一気に起きすぎて、考えることに疲れてしまった。
「でもいずれは、どこかで話し合いが必要でしょうね」
私は、それがいつになるだろうかと思いながら、家事をする。




