表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/118

13歳

新章突入です。

 レイズ王国が滅んでから少し、拠点には新しい風が吹いていた。リルとリアは十三歳になって身長も伸びた。

 ハルキはグロリアとの結婚を機に拠点に小さな家を建てて生活するようになった。同じ転生者の存在はハルキにとって希望の様なものであり、手放しがたいものだった。王城よりも拠点で生活したいというハルキの希望が叶えられた形だった。

 

 そしてグロリアのお腹には今赤ちゃんがいる。懐妊が判明した時は大騒ぎだった。七つも年下のグロリアに先を越されたロザリンは喜びつつも落胆していた。三十を超えたロザリンには未だ恋人すら居ない。他の拠点のメンバーも相変わらずだった。

  

 今日も拠点は平和だった。今はたぬたぬを琥珀が追いかけ回している。この光景はここ三年ほどよく見られるようになった。これだけ運動しているのにたぬたぬは何故か痩せない。外見は全く変わらないのだ。しかし素早さと運動能力は確実に上がっていた。動けるおデブになったのだ。追いかけ回している琥珀は解せないと首を傾げていた。

 リアは流石たぬたぬとご褒美にクッキーをあげていたが、この場合褒められるべきは琥珀である。リアは相変わらずたぬたぬに甘かった。

 

 マロンとナツはその光景を見てため息をついている。二匹はハルキが拠点で暮らすようになってから意気投合したらしく、よく二匹で語り合っていた。たまにタッキーも混ざってなにやら難しい話をしていたりもする。マロンはハルキがナツのために作った回し車を見て気に入り、同じものをリルの部屋に作ってもらっていた。運動が好きな二匹にはたぬたぬの気持ちはわからない。

 

 マロンに回し車を作ってからハルキは拠点の前庭にもいくつか回し車を作った。ナツ達に作ったように多機能では無いが、小さな神獣達に大人気だ。

 たぬたぬを気遣って一応大きいものも一台作ったのだが、たぬたぬはほとんど使おうとしなかった。その代わりかけっこ勝負で勝ちたい他の神獣達に大人気になったのだった。

 

 ルーサーはよくタッキーの止まり木のそばにいて話をしている。たまに琥珀のたぬたぬ追いに参加して楽しそうに走っている。ルーサーはまだ神獣としてはとても若いのだ。遊びたい盛りなのである。


 

 

「そういえば、とうとう完全に決まったみたいだよ。元レイズ王国をどう三等分するか」

 リアが思い出したように言った。レイズ王国は結界が崩壊して滅びたが、まだ後処理が終わっていない。元々小さな国だ、レイズ王国に国境を接していたウィルス王国、エクス王国、ドラゴニア聖国が共同で住民たちの支援はしていたが、何処で国境線を分けるか話し合いが纏まっていなかった。それに元レイズ王国の住民は長く結界内に籠っていたため、価値観の違いで支援が難しい部分もあった。事前に分かっていたこととはいえ、後処理は大変だったらしい。

 それもこれからは少しずつ落ち着いてくるのだろう。

 

「皆はどうするの?元々レイズ王国に住んでた種類の子も多いよね」

 リルが神獣達に聞くと、みんなここを離れたくないと言っていた。

『ここに来たい子はいても離れたい子はいないと思うよ』

 リルの足元で毛繕いをしていたキツネが言うと。みんな一斉に頷く。

「まあ、快適すぎるし離れたくないよね、ここ」

 十九歳になったアナスタシアが苦笑してあったかスポットに寝転んだ。

 とはいえ、元レイズ王国の土地にも魔物が湧くようになったので、少数の神獣には移動してもらわなければならないだろう。リルは頭を悩ませた。

「ここ以外の森から移住してもらうしかないかな」

 リアも困ったように笑う。すでに元レイズ王国の森にも聖騎士の拠点は作られていて、後は神獣待ちの状態らしい。魔物を間引くのが神獣の役目だと神獣達は理解しているので、少数は移住に同意してくれるだろう。

 少し申し訳ないなと思いつつ、リルは神獣達の説得を頑張ろうと気合を入れた。

 

 

 

 

「居た居た!ちょっと手伝ってくれ!」

 ハルキが何か箱を持って走ってくる。こういう時は面白い発明がある時だ。リル達は今度はなんだろうとワクワクした。

「ちょっとこれのテストに付き合ってよ」

 そう言ってハルキが箱から出したのは少し分厚い前世のタブレット端末のような物だった。

「前に作った通信機あっただろう?あれの映像付きのやつ作ってみたんだ」

 それはテレビ電話ではないかとリル達は思った。ハルキは二年前に電話のような魔道具を発表して周囲を大いに驚かせた。前世の様な番号式ではなく、予め本体同士を繋いで登録した機体同士でしか喋れないが、革命的な代物だった。ただ距離に比例して魔力の消費量がとんでもないことになるゆえ、大量の魔石を消費するので軍や富裕層の間でしか普及していない。

 リル達も最近はメリー達とたまに通信機で会話していた。

 それがテレビ電話である。なんとグループ通話にも対応しているらしい。リル達は大はしゃぎだ。相変わらず魔石の消費量は可愛くないようだが、高給取りのリル達には大した痛手では無い。

 早速テストしてみると、とても映像が綺麗だった。魔法は精霊にお願いして使うものだから、精霊達が頑張ってくれてるのだろう。

「うん良さそうだな。後は悪用されないように秘匿の魔法を刻めば完成だから、出来たらあげるな」

 魔道具作りはプログラミングのようなものだ。中身を覗かれて悪意を持った改造をされないようにセキュリティーをしっかりさせる必要があった。そのセキュリティーを秘匿の魔法というらしい。きっと中には膨大な精霊文字が刻まれているのだろう。

 リル達は映像付き通信機が出来上がるのを楽しみにしていた。

ブックマークや評価をして下さると励みになります。

お気に召しましたらよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ