番外編 海
拠点にハルキがやってきた時、神獣達はいつもソワソワする。少数の神獣がドライブに連れて行ってもらえるかもしれないからだ。
車から降りるなり集まってくる神獣達を見てハルキは言った。
「俺もう王城よりここに住んだ方が良くない?」
リル達は大賛成だ。実際このすぐ後、ハルキはグロリアと結婚して拠点に新しい家を建てて住む事になるので、その気になったハルキの行動力は侮れないものがある。魔道具技師として優秀な上に愛し子なので大体のわがままが通ってしまうのである。
ハルキは足元で裾をカリカリやっていたキツネを抱き上げると、車に新しく付けた神獣用トレイラーを紹介した。これでより多くの神獣をドライブに連れて行ってやれる。
神獣達は大歓声を上げていた。
「すごい!さすがハルキさん!さすハル!」
アナスタシアが拍手でハルキを称える。リル達も一緒に拍手する。
トレイラーは巨大だ。しかもトレイラーのガラスは、外側からは中にいる神獣達が見えない仕様になっている。この大きさのトレイラーを引けるハルキの車はどれだけ馬力があるのかとリアは感心した。
今日もドライブ権をかけてかけっこする準備をしていた神獣達は落ち着いた。今までは枠が少ないから取り合いになっていたのだ。一度にたくさん行けるなら譲り合いができる。神獣達は基本的にいい子なのである。
リル達は車に乗り込むと海に向かった。護衛がジャスティン一人では心許ないのでグロリアも付いてきていた。
海に着くと、神獣達は歓声をあげる。
「遠くに行くほど深くなるからね!遠くには行かないように!」
アナスタシアが皆に注意喚起する。
何匹かの神獣はまとわりつく砂を鬱陶しそうにしていた。
真っ先に海に入ったタヌキが驚愕して大声をあげる。
『しょっぱい!しょっぱいよこの水!』
みんなビックリして海水を舐めてみる。
「ああこら!海の水は飲んじゃダメ!泳ぐだけにしなさい!」
アナスタシアは監視員として大忙しだ。
リル達はトレーラーの中で水に入れる服に着替えると、神獣達と一緒に遊び出した。拠点にプールはあるが、海はまた違った良さがある。
皆でボールを使ってビーチバレーのようなことをしたり、砂でお城を作ったりした。
リアは神獣達のために筏を引っ張って泳いでやっている。
琥珀がマロンを乗せて泳いであげている。マロンはしぶきを浴びて海を満喫しているようだった。
タッキーは空から溺れている神獣が居ないか監視していた。
たぬたぬは砂浜で砂に埋められて眠っている。お腹の部分により大きく砂を盛って埋めたのはナツとハルキだ。笑いながら写真を撮っている。
夕方まで遊ぶと皆で魔法のシャワーを浴びて乾かす。海初体験の神獣達は満足したようだ。
「お土産に貝殻を拾っていこうか」
リアの言葉にみんな賛成して、誰がいちばん大きくて綺麗な貝殻を拾えるか勝負した。
明日は大きい子達にお土産話をしてあげないといけないなと思いながら、みんな楽しく拠点に帰るのだった。
「海というのはいいね、どうしてあんなに広いのだろう。あの先にはどんな世界が広がっているのか、ロマンがあるじゃないか」
マロンの言葉にリルは頷いた。この世界の海の向こうには何があるのだろう。日本にいた時は世界の全容を簡単に知ることが出来た。この世界ではそれが無い。冒険がしたいと言ったマロンの気持ちが、今のリルにはよく分かった。
ただ今二章の準備中ですので、更新もう暫くお待ちください。
新連載も始めているので、お時間ある方はどうか読んでみて下さい!




