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学園祭への招待2

 学園祭当日、拠点にやってきたハルキは狐の面を付けていた。硬質な陶器のような素材でできた半面に、穴の空いた目の周りには青のインクで芸術的な文様が書いてある。リアは自分だけカッコよくて狡いと思った。

「何?リアちゃんなんで怒ってんの?俺なんかした?」

 ハルキとしては完全に善意で仮面を作ったので、リアの怒りの理由は分からなかった。ハルキがアナスタシアと同じでノリの良い、いや物事を深く考えない質だから、リアの羞恥心が分からないだけかもしれない。

 リアはこの人には言っても無駄だと諦めることにした。

 リルはハルキの仮面がカッコイイとはしゃいでいた。ナツがどうしてリスでなくてキツネにしたのかと、ハルキに伝えて欲しいとリルに訴えている。ナツとしてはお揃いが良かったのだろう。話を聞いたハルキは俺にリスは可愛すぎるから無理だとナツに謝っていた。

 

 暫くするとシドーもやってきて、小さくなってリルの腕の中に収まった。談笑しているとエルヴィスが大きな馬車で迎えに来た。活動期の時に仲良くなった騎士達も護衛として付いてくれるようだ。

 エルヴィスはリア達の仮面を見て可愛いと褒めた。おおとしか言わなかったジャスティンとは兄弟なのにえらい違いだ。リル達は神獣達と共に馬車に乗り込む。ハルキと会えなかった間の情報交換をしながら学園に向かった。

 

 学園は広大な敷地に建てられていた。初代国王が作った全寮制の貴族学園らしい。リル達が馬車から降りると歓声が上がった。どうやら早々に歓迎されているようだ。適当に手を振って移動の準備ができるのを待つ。貴族学園だから日本の学園祭とは違うと聞いていたが、入口に屋台のような物が建ち並んでいて、美味しそうな匂いがしていた。売っているのは学生ではなくちゃんとしたお店の人らしい。生徒達は領地経営の一環で祭りの運営方法を学んで、今日実践しているのだとエルヴィスが説明してくれた。


 神獣たちも馬車から降りて、移動の準備ができた頃、二人の学生に声をかけられた。

「ようこそいらっしゃいました愛し子様方。神獣様方。生徒会長のマントン・ソラナスです。姉がいつもお世話になっております」

 なんと生徒会長はグロリアの弟だった。グロリアは弟が学園にいるとだけ言っていたが、生徒会長とは知らなかった。

 もう一人は綺麗な青みがかった黒髪の男の子だった。

「生徒会役員のパーネル・ジェイ・ドラゴニアと申します。ドラゴニア聖国の第三王子です。いつも聖女ジュリアナと親しくして下さってありがとうございます」

 パーネルと名乗った男の子はリルの腕の中のドラゴンを見て緊張した様子だった。無理もない。ドラゴニア聖国ではドラゴンは神にも等しい存在だ。

 

 リル達は彼らに案内されて学園祭を楽しむことになった。リルの腕にはシドーと、肩にはマロン、横には琥珀が居る。リアはたぬたぬを抱いていて、ハルキの肩にはナツが居る。アナスタシアの横には子馬のルーサーと、その鞍に取り付けられた止まり木に止まったタッキーがいる。そしてその後ろに台車に乗せられた神獣達が騎士に押されていた。はっきり言って何処へ行くにも目立ってしょうがない。何度かこの状況を体験しているリル達は、周りを気にしないように頑張っていた。

 

 マントンとパーネルは学園の歴史などを説明しながら学園内を案内してくれた。途中シドーが創立時の裏話を語るため、マントン達も驚いていた。シドーは目を細めて懐かしそうにしている。リルはシドーを気遣ってそっと撫でた。

 

 学園祭には生徒達の企画や出し物もあった。サークルがあるようで、手作りの作品が飾られていたりもした。演劇もあったので見てみると、神獣達が大はしゃぎして楽しそうにしていた。

 こんなに喜ぶなら、旅の一座にでも拠点に寄ってもらうかとエルヴィスは考えた。神獣達の為の公演なんて言ったらどんな反応をされるだろうかと楽しみで仕方ない。

 

 リル達は学園祭を満喫していた。途中ハルキが魔道具制作のサークルの子達に質問攻めにされるというトラブルはあったものの、とても有意義な時間を過ごすことが出来た。日が暮れてきた頃、リル達は応接室でお茶を飲みながらマントン達に感想を伝えていた。リルが御手洗に行くと言うので、学園の卒業生であるジャスティンが、道案内と護衛も兼ねて一緒について行った。

 

 リルが居なくなった応接室で、リアは口を開いた。

「妹を邪な目で見るのはやめて頂けますか?」

 その目は真っ直ぐパーネルに向けられていた。

 ハルキはお茶を吹き出して腹を抱えて笑い出す。エルヴィスは可哀想なものを見る目でパーネルを見ていた。マントンは頭を抱えていたし、アナスタシアは必死に笑いを堪えようとして失敗していた。

 パーネルは顔を真っ赤にして、口をパクパクさせていた。

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