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学園祭への招待1

 その日はリルとリアの誕生日だった。二人にパーネルから綺麗なベールが届いた。毎年のことだ。もうレイズ王国が滅びたし、大きくなって顔立ちが変わったからベールは必要無いのだが、説明した方がいいだろうか。

「お姉ちゃんはどう思う?」

 リルはベールを眺めていたリアに聞いた。

「そうだね、手紙で軽く説明しようか。……なんかベールを取らないで欲しいって言われそうだけど」

 リルは首を傾げる。どうしてだろう、しっかり目を見てお話しできる方が良いはずなのに。

「ライバルが増えるからなー」

 リルにはリアの言うことがよく分からなかった。リアはパーネルに初めて出会った時のことを思い出してため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 それはいつも通りエルヴィスが娯楽代わりにと入れてくれた仕事だった。エルヴィスはなかなか自由に出かけられない愛し子達に、視察と言う名目で国を回る仕事をくれる事があった。

 視察される側は神獣を連れて愛し子達がやってくるのを歓迎している。活動期から神獣信仰は強まっていた。

 その日来た仕事は学園祭の訪問だった。王国の貴族が必ず通わなくてはならない貴族学園で、学園祭が行われるのだ。学生達に愛し子の有難みを教える機会でもあるらしい。

 リルは学園祭と聞いてとても嬉しかった。みちる時代にも参加したことの無い憧れの行事だ。リルの浮かれようにリアも嬉しくなった。事情を察したアナスタシアもリルに合わせてくれている。

 

 学園祭への参加が決まった頃、ハルキから贈り物が届いた。開けてみると、そこには目の部分に穴の空いたアイマスクのような形状の仮面が入っていた。

「……何これ?」

 絶句するリアに、アナスタシアは腹を抱えて笑っている。そしてリルは可愛いと大はしゃぎだ。

 ハルキの手紙にはこうあった。

「ベールだと視界が遮られるでしょ?これなら顔もある程度隠せるしちゃんと見えるし、可愛いから良くない?因みに兎がリルちゃんで、猫がリアちゃんで、クマがアナスタシアちゃんね」

 リアは仮面を投げつけようかと思った。仮面は柔らかい毛皮で出来ていて、上部には耳が付いていたのである。それぞれ黒い猫とピンクの兎と淡いブラウンの熊だった。リルは早速兎の仮面を付けてはしゃいでいる。アナスタシアも熊の仮面をつけて面白がっていた。

「お姉ちゃんも着けよう!」

 嬉しそうなリルの言葉に、リアは不満を飲み込むしか無かった。

 今の私は幼女、大丈夫、許される、恥ずかしくないと心の中で唱えて仮面を着けた。これをリア達に送ってハルキは何を着けるつもりなのか、リアはそれが気になってしまった。三十にもなろうかという男がかわいい動物仮面は無いだろう、流石に。

 

 

 

 視察の時には拠点で恒例行事が行われることになっていた。それは連れていく神獣を数匹選ぶ為のレースであった。今はみんなウォーミングアップ中である。

 今回の学園祭にも参加希望神獣達が続々エントリーしていた。因みに一度視察に参加したメンバーは参加不可である。希望者が多いためそうなった。

 大きい子達は森の見回りもあるし、移動時の問題もある為、参加できるのは基本的に小さい子だけになってしまうのだが、それでも大きい子達に不満は無いようだった。お土産話を楽しみにしていると、小さな子達を暖かく見守っている。

 ちなみに琥珀やたぬたぬなどの各人のパートナーはパートナー特権で毎回参加できている。

 

 参加権を獲得するため、最近の神獣たちの遊びはかけっこが多くなっている。アナスタシアは運動量が増えていいことだと満足気だ。ただ一番運動しなくてはいけないたぬたぬがパートナー特権で不参加なことだけが不満だった。

 みんなが走る中ヘソ天で横たわっていたたぬたぬは、アナスタシアの視線に気づくと慌てて走った。アナスタシアは怒ると怖い。おやつを抜かれてしまう。

 たぬたぬが参加したレースの結果は当然のごとくビリだった。

 

 ウォーミングアップも終わっていよいよ本戦。みんなリルの合図に合わせて一斉に走った。体の大きさごとに順位が決められて、十匹ほど参加神獣が決まった。敗れた者たちは次の機会に権利を勝ち取るため、かけっこの練習をするのだった。

 

 ちなみに当日はドラゴンのシドーも行くことになった。ウィルスの作った学園がどうなったのか見てみたいということらしい。ドラゴンは学園が創立した頃のことも知っているのかとリル達は話を聞くのが楽しみになった。

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