バーベキューパーティー1
リルは魔法で火を起こしながら考えていた。今ではこのバーベキューパーティーも慣れたものだが、最初は大変だった。思い出して笑ってしまう。
「どうしたの?リル?」
アナスタシアが同じように魔法で炭に火をつけて聞いてくる。
「一番最初のバーベキューパーティーのことを思い出してたの」
リルが言うと、アナスタシアが遠い目をした。
「ああ、あれか……発端の私が言うのもなんだけど、大変だったね」
しみじみと言うアナスタシアにリルはまた笑ってしまう。
懐かしいなとリルは獲物を狩ってくるクマさん達を見ていた。
「バーベキューしたいな」
アナスタシアがポツリと零す。季節はちょうど秋だ。なんだか昔を思い出してそう言ってしまった。
「バーベキュー……!」
それはリルの憧れだった。リルはバーベキューをしたことが無い。前世はずっと病院生活だったのだ。リルはテレビでしかバーベキューを知らなかった。
リルの様子を見たリアは、やってみてもいいんじゃないかと提案する。
アナスタシアもリルの様子を見て察したようだ。本格的にやってみるかという話になった。
善は急げとイアンに相談する。イアンは話を聞いて野外炊飯の事かと首を傾げた。こちらではただの道楽で野外炊飯をする事はあまり無いらしい。外で炭火でお肉を焼いて食べるのが美味しいのだとアナスタシアたちは訴えた。イアンは不思議に思ったが、神獣達も喜びそうだし良いかと許可を出した。
三人はジャスティンを連れて業務用の調理道具が売っている店に行く。屋台調理用の大型の調理台が買えるらしい。炭火でお肉を焼くのに丁度よさそうなのを、神獣達のことも考えて四台ほど購入した。
網と鉄板と炭も購入する。
拠点に戻ってくると、留守番していた琥珀達から美味しいものを作ると話を聞いたらしく、みんな集まっていた。小さくなったドラゴンまで居る。バーベキューの内容と、今から数種類のタレ作りをするのだと言うと、その間に神獣達は獲物を狩ってきてくれると言う話になった。今は森が落ち着いているので、ライオンさん達にも声をかけてくれるという。滅多に来られない子達が来てくれるのは嬉しいことだ。
リル達はさっそくタレ作りに取り掛かった。普通のタレに、草食の子用に野菜につけるフルーツダレなんて変わり物も作ってみる。そして野菜を予め切って串に刺しておく。
準備をしているとハルキとリヴィアンとエルヴィスもやって来た。事前に魔道具の鳥を飛ばしておいたのだ。
「お土産にお酒と、珍しい野菜買ってきたぞー」
ハルキが三人からだとお土産を差し出す。
リヴィアンはついでにイアンに用事があるらしく、団長室に行ってしまった。
ハルキとエルヴィスとジャスティンで火起こしの準備をしてくれると言うので後はお肉待ちである。
森から気配を感じて、振り返ったリルは絶句した。
リル達がタレ作りをしている頃、神獣達はなんの肉を狩ろうか相談していた。
『やはり森の深いところに居る魔物がいいだろう。リル達には珍しいと言うからな』
クマが言うと、森の奥深くまで走る。小さな雑食の子達は今回はお休みという事になった。大きい獲物の方がいいだろうと考えたのだ。
途中ライオンに会ったクマはことの次第を説明する。
『ならば他の者達にも声をかけて獲物を狩ろうではないか、ばーべきゅーとやらが楽しみだな』
ここの神獣達は人間の作る料理の美味しさを知っている。きっとばーべきゅーとやらも美味しいのだろうと舌なめずりをした。
ドラゴンは森の最も深いところにいる、人間達には伝説と呼ばれる魔物を狩ってくると言ったらしい。それには及ばないが、ライオン族の誇りにかけていい獲物を狩ろうと決めた。
『ほう、では勝負だ。我々より美味い獲物を狩ってみろ!』
触発させたクマがこう言ってしまった為、それがヒョウやらトラやらオオカミ達にも伝播していつの間にか、それぞれの種族の誇りをかけた狩り対決になっていた。
結果山のような肉が拠点に積み上がったのである。
リルは神獣達にどの種族が優勝か問われ困ってしまった。そこにドラゴンが飛来する。口には一匹の魔物が咥えられていた。
『この時期のこの魔物のメスは肉が柔くて美味いのだ、ん?どうした?お前達?』
「優勝!優勝はドラゴンさん!皆頑張ったね!」
リルは咄嗟にドラゴンに全てを押し付けた。ことの次第を知ったドラゴンはこんなに大量に狩ってどうすると神獣達を叱り飛ばした。
神獣達は皆伏せて反省していた。
珍しい光景である。
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