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リアと剣1

 送られてきた歌劇の招待状を前に、リアはため息をついた。招待状はリルとリア、アナスタシアとジャスティンの四人宛だ。

 彼は拠点からあまり出ない私達を気遣って、しょっちゅう娯楽に招待してくれる。

 リアにとっては心臓に悪いことこの上なかった。どうしてこんな事になったんだったか、そうだあの時からだ。

 リアは彼に出会った時のことを思い返した。

 

 

 

「『剣神』のスキルですか?」

 イアンの話を聞いていたリアは目を見開いた。『剣神』のスキルはとても珍しい、剣術系のスキルの中でも最高峰のスキルだ。それを伯父になったリヴィアンが持っているという。

 それを聞いた時、リアは今度拠点にリヴィアンがやって来たら手合わせしてもらおうと決めた。

 そしてその時は存外早く訪れたのである。

 

 リヴィアンはリアのお願いに快く応えてくれた。お互い剣を構えて合図とともに剣を振るう。結果は惨敗だった。当たり前だ。子供と大人で体格も違う上に、相手は国でも一、二を争う剣の使い手なのだから。それでも学べることはあるだろうと、リアは何度でも挑んだ。

 リヴィアンは弱いものいじめをしているような気分になっていたが、挑んでくるリアが楽しそうなので何度も付き合っていた。

 リアは悔しいのだろう、何とか一撃食らわせられないかと模索していたが全く当たらないのだから。結局その日はリアの手が痺れたところで終了となった。

 

 悔しそうに座り込むリアにリヴィアンが提案する。

「僕の息子が『剣豪』のスキルを持っているんだけど、彼を指南役に付けようか?」

 リアは目を見開いた。『剣豪』は『剣神』の一段下のとても珍しいスキルだ。ジャスティンの『守護者』といい珍しいスキルが発現する血筋なのだろうか。いや、忘れかけていたが彼らは王族だった。

 リアは疲れすぎて思考が霞んでいたが、リヴィアンの提案に是非にと返答していた。リアはリルを守るため、何がなんでも強くなりたかったのである。

 

 父親であるリヴィアンから事の次第を聞いたエルヴィスは、困惑した。

 エルヴィスは今年で十八歳になるが、大の女嫌いで有名だった。父もそれを知っているはずだった。そんな父が自分に女の子の子守を押し付けるとは一体どういうことなのか、エルヴィスは分からなかった。

「騙されたと思って会ってみなよ。お前は好きだと思うぞ、ああいうタイプ」

 ああいうタイプと言われても、エルヴィスは父の跡を継ぐため父の補佐をしている。リアの事情も大体知っていた。彼女は可哀想な子だ。実家で虐待され単身この国に亡命してきた、元侯爵家のお嬢様だ。

 双子の妹である『通訳者』を溺愛していて、彼女のために聖騎士になりたいと言い出した子だ。その辺は好感が持てるが、恐らくは親戚であるグロリアのような世間知らずなのだろう。

 彼女が騎士になりたいなんて言い出して家出した時も大変だった。彼女には騎士がつとまるだけの覚悟がなかった。イアンや周りが陰ながら支えて何とか今までやってこられたのだ。グロリアはそれでも自立心があるだけマシな方だったが、女の相手は疲れると言うのがエルヴィスの持論だった。

 

「しかし、補佐である私が居なくなれば父上が大変でしょう?」

 暗に面倒くさいと父に告げる。

「大丈夫、君がいない時はエディスに付いてもらうから」

 エディスは一番下の弟だ。そろそろ仕事を覚えさせなければならない歳だ。ジャスティンが父に反発して聖騎士になってしまったため、自動的に父の補佐候補にされてしまったある意味可哀想そうな弟である。本人は文官気質で雑務が性に合っているらしいが、本心は分からない。兄であるジャスティンを見てしょうがないなと溜息をつき、兄の我儘に付き合う姿を何度か見かけているからだ。父としては一番素直で使いやすいのだろうが、兄としては可愛いのでもう少し自由に生きて欲しかった。

 嫌そうな顔をしていたのだろう。父にため息をつかれた。

「お前はちょっと弟達に甘すぎると思うよ。ジャスティンの時も何だかんだでジャスティンの味方をしてただろう。エディスを自由にさせてあげたいのは分かるけど、エディスはこの仕事を嫌っていないよ、お前は大人しくリアの先生になりなさい」

 エルヴィスは不承不承ながらも頷いた。どうせ厳しく接していればすぐ音を上げるだろう。

 

 リヴィアンは単に息子の性格上、リアには好感を持つだろう位しか思っていなかった。

 この選択が激しく間違っていたと知った時には、もう何もかもが手遅れだったのである。

 

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