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密猟者とお馬さん1

 アナスタシアが厩舎の掃除をしていると、ジャスティンがやって来る。ジャスティンのお目当てを知っているアナスタシアは、彼のために道を開けてやる。

「お前さ、掃除するなら声くらいかけろよ。一人で大変だろ?」

 どうやら道を開けた意味は無かったらしい。アナスタシアは片足が不自由だ。歩く時は杖を使って生活をしている。

 厩舎の掃除は力仕事も多い。片足では余計に負担が大きいだろう。

 現にジャスティンの愛馬のルーサーは心配そうにアナスタシアを窺っている。

 ジャスティンはため息を吐くと厩舎の掃除を手伝った。

「ありがとうジャスティン」

 アナスタシアは呑気に笑っている。アナスタシアは頼れと言っても頼らないのだ。こっちから見つけて声をかけてやるしかないと、ジャスティンは長年の経験で知っている。

 ジャスティンはルーサーを見て出会った頃の事を思い出した。アナスタシアがよく厩舎の掃除をしているのを知ったのは、あの頃だった。騎士たち以上に馬の様子をよく見に来て、気になる度掃除をしていた。あのころから、結局何も変わっていないのだ。

 

 

 

「密猟者ですか?」

 イアンに呼び出された四人は眉根を寄せてイアンの話を聞いた。

「そうだ、外国から流れて来た集団でな、最近捕まったんだが、生きた神獣を足として使っていたことが判明したんだ」

 足として使っていたということは馬の神獣だろうか。マーリンが見つけたと言うから本当に神獣なのだろう。馬の神獣なんてリル達は見た事がなかった。外国から流れてきたと言っていたから、遠くの方に住む神獣なのだろう。

「森に返そうにも生息地が分からない。当人達の希望もあるだろうから、一度話が聞きたくてな。頼めるか?リル」

 リルはもちろんと大きく頷いた。

 アナスタシアも健康診断しなくてはと張り切っている。アナスタシアの『獣医』のスキルは直感的に動物や神獣の健康状態を知ることが出来るのだが、きちんと体重などを測るに越したことはない。

 明日こちらに移送されてくると聞いて、リルは話すのを楽しみにしていた。

 

 次の日、十頭ほどの馬が拠点に移送されてきた。

 馬を引き連れてきたのはジャスティンの二つ年上の兄のエルヴィスだった。

 エルヴィスはリアを見つけると抱き上げた。弟は完全に無視である。

「リア、久しぶり。また大きくなったんじゃないかい?」

 リアはエルヴィスが相手だと借りてきた猫のように大人しい。色々諦めただけとも言える。

 エルヴィスはリアに剣を教えるようになってからリアのことを猫可愛がりしているのだ。

「お久しぶりです。エルヴィス様。……馬の事を教えてください」

 リアが話を本題に戻そうと声をかけるも、エルヴィスはリアのことを下ろすつもりは無いらしい。抱き上げたまま話を続けた。

「そうだ、リル、頼めるかい?今後のことに関して希望を聞いて欲しいんだ」

 

 リルは馬達に話しかける。

「はじめまして、私はリルと言います。お馬さん達は今後どうしたいですか?」

 馬の中でも一際大きな馬が言う。

『初めまして、『通訳者』よ。我々は安全に暮らせる場所に行きたい。ここはこの国でも最も安全な場所だと聞く。ここのナワバリの代表に繋ぎを頼みたいのだが』

 ここで暮らしたいということだろう。リルは喜んで通訳した。そしてこの国の神獣達の代表でもある銀狼族を呼ぶ。

 実は今日の話を神獣達にしたところ、ここで暮らしたいと言った時のために銀狼族の中でも偉い子が拠点に来てくれていたのだ。

『やはりこうなったか、我々は諸君達を歓迎する。住処は森を歩き回って決めるといい。皆には話を通しておこう』

 

 話はトントン拍子で進んだ。馬達はここでの生活に慣れてきたら森の巡回に力を貸してくれるそうだ。

「ありがとうリル、助かったよ」

 エルヴィスがリルの頭を撫でる。リアは未だエルヴィスに抱かれたままである。先程から仏頂面をしている。ジャスティンはリアをここまで大人しくさせられる兄を、ある意味尊敬していた。

 リアから助けを求める視線を感じたが、黙殺した。自分が出ても、兄にいいように遊ばれるだけである。昔から舌戦でも実践でも、勝てたことなど一度も無いのだ。

「それじゃあ俺は行くよ。ジャスティン、彼女達をちゃんと守るんだよ」

 エルヴィスは名残惜しそうにリアを下ろすと、また来るからねと言ってリアの頭を撫でて帰って行った。

 リアは深くため息をついて、やっと自由になったと安堵していた。最初の頃はリアも逃げ出そうとしていたのだ。でも無駄だと気づいた。逃げようとすればするほど面白がるのだ、彼は。

 

 結局馬達はアナスタシアの健康診断を受けてから、森に住処を探しに行くことになった。

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