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エクス王国のドラゴンさん

 リアは赤い鱗のついたネックレスを付けて、鏡の前に立つ。今日はこれからお出かけだ。このネックレスは巷で大人気の恋愛成就のお守りだった。恋が永遠に続くことを願ってつけるのだ。

 リアはこの鱗を貰った時のことを思い出した。リジェネは元気にしているだろうか。リジェネはとても不器用で、優しいドラゴンだった。

 今度またウィルス王国のドラゴンさんに連れて行ってもらおうかとリアは思った。きっと女同士、会話に花を咲かせられるだろう。

 リアはリジェネに出会った時のことを思い出しながら、待ち合わせ場所に向かった。

 

 

 

 

 

 今日は拠点にドラゴンが遊びに来ていた。ドラゴンは小さくなってリルの腕の中に収まっている。リルとリアはなんだかドラゴンに元気がないような気がして心配だった。

「ドラゴンさん、どうしたの?」

 ドラゴンはハッとすると、リルを見上げて言った。リアのために同時に文字も書いてくれている。

『すまぬ、ここに来る前にエクス王国に居るドラゴンの元に寄っていたのだ』

 エクス王国のドラゴンと言えば、人間を拒絶していたというあのドラゴンの事だろうかとリルは思った。


「エクス王国のドラゴンさんが心配なの?」

 なんだかしょんぼりとしているドラゴンの姿に、リルも悲しい気持ちになった。

『そうだな、心配だ。アイツはこのままずっと一人でいるつもりなのかと思ってな』

 ひとりぼっちは寂しい。リルもエクス王国のドラゴンが心配になった。

 

「エクス王国のドラゴンさんは人間が嫌いなの?」

 リアがそう問うと、ドラゴンは慌てて否定した。

『それは違う。アイツはただ傷つきたくないだけだ』

 人間と付き合うと傷つくのだろうか。リルにはよく分からなかった。

『人間と我々は寿命が違いすぎる。アイツは失う事を恐れているのだ』

 確かにそれはとても怖いことかもしれない、リルも大好きな人が亡くなってしまったらとても悲しいだろう。

 リアも前世でその気持ちは痛いほどよく知っている。『みちる』を失った時の痛みは筆舌に尽くし難かった。

 

「そっか……それはどうしてあげたらいいんだろうね」

 リルとリアは頭を悩ませた。でもどうしたって人間はドラゴンのように長生き出来ないのだ。

 悲しむなと言うだけなら容易いが、それは死にゆくものが言う言葉では無いだろう。

『ああ、わからないから思い悩んでいるのだ』

 

 リルはエクス王国のドラゴンに会ってみたくなった。きっと優しいドラゴンなのだろう。

「きっと何かきっかけが必要だよね」

 リアの言葉に、リルはエクス王国に居るメリーに手紙を書いてみることにした。

 

 

 

 メリーの手紙によると、エクス王国のドラゴンに対する記述はおよそ三百年前に途絶えているらしい。

 ドラゴンが人間と交流を止めたのがそのくらいの時期なのだそうだ。

 だが、ドラゴンと積極的に交流していた一族の末裔が、エクス王国に残っているらしい。

 その一族には『リジェネを一人にするな』という当時の当主であったユリシーズの遺言が残っているそうだ。

 リジェネと言うのはユリシーズがつけたドラゴンの名前なのだそうだ。

 

 しかし、一人にするなと言っても当の本人が一人になりたがっているため、どうしようも無いのが現状だそうだ。

 メリーはその一族の末裔に詳しい話を聞いてくれた。

 ユリシーズの一族はドラゴンの住む森を管理する一族だった。しかし以前の当主はドラゴンを崇めこそすれ、親しくなろうとはしなかった。

 ユリシーズは変わり者だったのだ。少年時代に憧れのドラゴンの住処まで行って交流を持つくらいには。

 二人の交流はユリシーズが死ぬまで続いた。それからだ、リジェネが人間を拒絶するようになったのは。

 大切な友を失ったのだ。リジェネの悲しみは計り知れないだろうとリルは思った。

 リアはまた別の感想を抱いたようだったが、憶測だからと話してくれなかった。

 

 アナスタシアにその話をすると、アナスタシアは言った。

「それ、もう突貫するしかないんじゃないかな?」

 実にアナスタシアらしい簡潔な答えが返ってきた。

「きっかけていうのはね、待ってたって中々ないんだよ。きっかけは自ら作らないと。思うよりまず行動だよ」

 確かに、と二人は思った。こういう時アナスタシアはとても頼もしい。

「というわけで、乗り込もう!リジェネさんのところに」

 

 ウィルス王国のドラゴンに協力を依頼すると、面食らっていた。

『人間は強いな、追い返されるかもしれないぞ』

 そしたら相手が諦めるまで挑むだけだと、アナスタシアは語った。

『なるほど我慢比べか、それならこちらに分がありそうだ』

 ドラゴンは愉快そうに笑った。

 こうして三人はエクス王国に旅立つことになったのだった。

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