番外編 たぬたぬブートキャンプ
ハルキがカメラを作ってくれて、写真で自分の姿を見たたぬたぬは絶望していた。自分がこんなに太っているとは思っていなかったのである。
『だから言ったじゃない。運動しなさいって』
琥珀はたぬたぬを前足で転がすと、ボールみたいじゃないと言った。
たぬたぬはタヌキの中でもひときわ若い、まだ六歳くらいのタヌキだ。幼いうちからリアが甘やかしたからこんな事になってしまった。
琥珀はたぬたぬを無理やりにでも運動させる事にした。
『サボるんじゃないわよ、まだ走れるでしょ』
琥珀はたぬたぬを追いかけ回す。たぬたぬは重い体を引きずりながら懸命に足を動かしていた。
『ほらまたスピードが落ちてるわよ、もっと速く走りなさい!』
たぬたぬは息を荒らげながらも走り続ける。痩せなくては!たぬたぬの頭にはその言葉しか無かった。
リルは琥珀の言葉を通訳しながら、リアの様子を窺った。流石に少し反省しているようだ。
リアは前世でみちるが少食だったことを覚えていた。お姉ちゃんの作るクッキーが大好きだと言いながら、日に日に食べられる枚数が減っていったのを鮮明に覚えている。それはリアにとって恐怖だった。
だから美味しそうに食べている姿を見ると安心してしまうのだ。つい欲しいだけあげたくなってしまう。
リアは琥珀に追いかけられながら懸命に走るたぬたぬを見て、申し訳ない気持ちになった。
厨房に行くとリアは寒天と蜂蜜でゼリーを作る。
低カロリーなご褒美を用意してあげようと思ったのだ。
ゼリーを作って戻る頃には、疲れすぎて完全に動けなくなったたぬたぬが居た。
ご褒美のはちみつゼリーをスプーンですくってたぬたぬの口に入れてやる。たぬたぬは幸せそうな顔をした。
『せっかく走ったのにまたお菓子を食べさせて!』
琥珀はご立腹だったが、ムチだけでなく飴も必要だろう。
リアはもうすこしたぬたぬの体重管理に気を使うことにした。
その日からそれ以上たぬたぬの体重が増えることはなくなった。
しかし増えることこそ無くなったが、標準体型になることもなかった。
結局リアはたぬたぬを甘やかすことを止められないのであった。
前話の感想が面白かったので、写真に絶望したたぬたぬのお話です。




