番外編 リアはリルを拒まない
今日は街にお買い物に行く日だ。朝からリアはリルの部屋に行っていた。
リルを起こすと顔を洗わせ、鏡台の前に座らせる。
「今日は編み込みにしてハーフアップにするね」
リアは器用にリルの髪を編み込んでゆく。前世でもよくこうやって髪を結っていた。難病を抱えた『みちる』は外にほとんど出られない。だからせめて気分だけでも上げられるように日替わりで髪型を変えていた。
リアは久しぶりにリルの髪を結って楽しくなった。途中に花の飾りを差し込んで可愛くしてゆく。
「お姉ちゃん頭がお花畑になってるよ」
リルはちょっと乗せすぎでは無いかと思ったが。リアとしてはこれくらいが丁度いいと思っている。
あっという間に花の妖精が完成した。
「お姉ちゃんも座って、私がやるから」
リルも髪結は得意だ。リアは別に自分はこのままでもいいのだが、リルの願いだから仕方がない。
リルはリアの髪も編み込みにして花飾りを挿してゆく。リアの髪もリルとお揃いになった。
今日の服はロザリンが作ってくれたお揃いの服だ。鏡の前に立つとどこからどう見ても双子だった。リルは出会った頃はリアより小さかったが、最近は追いついてきて身長差も数センチになった。
リアは姉妹ではなく双子に見えるのが嬉しかった。
護衛のジャスティンを連れて街に繰り出す。ジャスティンは護衛だからといつも口を挟まずに居てくれる。
実質姉妹デートである。リアはリルの好きそうなお店を事前に調査済だ。まず可愛らしい小物を売っている雑貨店にやって来た。
琥珀によく似た狼の刺繍がしてあるハンカチがあったので、リルに勧める。リルは喜んで購入していた。リルがタヌキもあるよと言うので見てみると、シュッとしていてたぬたぬには似ても似つかない。二人で笑ってしまった。
次にスイーツ巡りだ、未だに沢山食べることができないリルのためにみんな半分こする。大きめのものはジャスティンも巻き込んで三等分した。ジャスティンは大人しく余りを食べてくれた。
お腹がいっぱいになると、みんなのお土産を見繕う。
その時だった。リルがファンシーショップを見つけてしまったのは。そこはフリルとレース、パステルカラーの商品で溢れていた。リルは一度でいいからお姫様のような格好をしてみたかった。そこに売っている服は可愛くて絵本の中のお姫様のようだ。
リルはリアにお願いした。お揃いであの服を着て欲しいと。
一人で着るのは少し恥ずかしかったのである。
リアは二つ返事で了承した。ジャスティンに驚愕した目で見られたが、リルの願いなのだからリアに拒むという選択肢は無い。
二人はショップで服を購入してその場で着替えさせてもらった。
頭に着けた花飾りも相まって、二人は本当に妖精のようである。
そのまま二人は街で買い物を続けた。ただでさえ目立つのにさらに目立つようになった二人を護衛するジャスティンは大変だった。
日が暮れる前に拠点に戻ると、二人の格好を見た騎士達に可愛いと褒められる。
何かロザリンの琴線を刺激してしまったらしく、興奮したように服を作ると言って部屋に帰ってしまった。
その日は二人は一緒にお風呂に入って一緒に眠った。
昼間の楽しさが抜けなかったからだ。
リアはまた二人で着飾って街に出ようと誓った。リルもリアと一緒にまたお洒落して買い物に行きたいと思っていた。
同じようなことを考える二人は、やっぱり双子なのである。
付き合わされるジャスティンはちょっと可哀想。
感想で姉が妹を構い倒すだけの話が読みたいとあったので。姉妹の通常のやり取りを少し。




