69.リル
それから更に五年の月日がたった。この五年間は平和そのもので、リル達は神獣達との友好を模索しながら穏やかに過ごしていた。
ドラゴニアの新しい聖女とも仲良くなって、エクス王国のメリーとも交流は続いている。
そしてとうとうレイズ王国の結界が消失した。精霊に見放されたのだ。レイズ王国は解体され、土地は国境を接するウィルス王国とエクス王国とドラゴニア聖国の三国で等分する事になったらしい。
転生者組は故郷の消失を聞いても特になんの感慨もなかった。もうウィルス王国が故郷のような心地になっていたのだ。
「みんなーおやつの時間だよー!」
拠点は今日も賑やかだ。集まってきた神獣達が美味しそうにクッキーを頬張っている。あれからメイナードによってアスレチックも少し増えて、神獣達は毎日楽しそうに遊んでいる。
たぬたぬの体重はこの五年で多少増えた。リアは大きくなって筋力がついたので、持ち上げるのに支障はないから大丈夫だと思っている。
リアは変わらず剣の腕を磨きながら、特別神獣保護隊の仕事をこなしていた。
アナスタシアには鷹のパートナーができた。まだ若い鷹だがタッキーという名を貰っていつもアナスタシアのそばにいる。
タッキーはパートナーが欲しいと嘆くアナスタシアを見て可哀想に思ったらしい。なら自分がなってやろうじゃないかと志願したのだ。
ハルキはナツと一緒によく遊びに来る。各国との技術交流を盛んに行っており、よく他所の国のお土産を持ってきてくれる。
そして驚くことにグロリアと結婚するそうだ。十歳近く歳が離れているが問題ないらしい。
琥珀とマロンは変わらずリルの傍に居た。リルはもう完全に『みちるちゃん』とはお話ししなくなった。二つの人格がゆっくりと混ざりあって、子供らしさは完全に消えている。
マロンはそのことが何より嬉しかった。辛いことも全て忘れて幸せになって欲しいという願いが叶ったのだ。
これからもリルはこの拠点で神獣達と幸せな時を過ごすだろう。
沢山の出会いがあって、別れもあるかもしれない。でももうリルは大丈夫だ。拠点のみんなの優しさに触れて、きっと悲しいことも乗り越えられる。
リルは誰より幸せな女の子になったのだ。
これからもきっとずっと優しい毎日が続くだろう。
完結まで読んで下さってありがとうございます!
このお話は元々この半分くらいで終わる予定でした。しかし、あまりに読んでくれる方が多かったので少し長く続けてしまいました。
まだ書きたい話もあるので、たまに番外編を更新するかもしれません。
応援して下さった皆様、本当にありがとうございました!
別の作品もよろしくお願いします!