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64.遊びにきました

 リル達は神獣達の文字勉強会の真っ只中だった。勉強会は日に日に受講者が増えていて、皆続々と文字を覚えだしている。

 リアは神獣達の為に文字のカードやブロックを作ったりして大忙しだ。

 神獣の中にも勉強嫌いな子がいるようで、そんな子達はアナスタシアにブラッシングされていたり、邪魔にならない所で遊んでいたりする。

 そんな時、見覚えのある車が拠点前の坂を登ってきた。

 

「あれ?なんか取り込み中?」

 降りてきたのは先日亡命して来たヘクターだった。

「ヘクターさん!」

 リルは一目散にヘクターの元に走ってゆく。

 リアとアナスタシアもヘクターの元へ向かった。

「ああ、名前、ハルキに変わったから改めてよろしく」

「よろしくハルキさん!」

 リルはハルキも拠点暮らしになると思っていたのに、そうならなくてとても残念に思っていた。

 だから遊びに来てくれて嬉しかったのだ。

 

「どちら様ですか?」

 突然やってきてリル達と戯れ始めたハルキを見て、グロリアとロザリンは警戒していた。

「ハルキさんはね、この間亡命して来た人だよ」

 話だけは聞いていた二人は例の賢者の再来かと納得した。愛し子だとも聞いていたので少し警戒を解く。

「何故この車でやってきたのですか?」

 グロリアは王国の宝に当たり前の様に乗ってきたハルキに問いかける。

「ああ、この車の秘匿の魔法を解いたら、王様に褒美として貰ったんです」

「解いたのですか!?あの魔法を!?」

 グロリアは掴みかからんばかりの勢いでハルキに詰め寄った。ハルキは目を白黒させている。

 

 実はグロリアは幼い時何度も挑戦していたのだ。それこそ傍で見ていた魔道具技師に呆れられるまで。それでも解くことは叶わなかった。

 それを解いたという魔法師が目の前に居るのだ。グロリアはハルキを質問攻めにした。

 弱いところを見つけてあとは力業でぶち壊したと聞いて、グロリアは落ち込んだ。彼は『魔法師』である自分よりも、そして車を制作した魔道具技師よりも強い力を持っているのだ。

 そしてそれを扱う術にも長けている。

 愛し子は皆魔法に関して才能がありすぎる。神獣に好かれるということは精霊に好かれるという事でもあるのかもしれないと、グロリアは思った。

 

 ハルキは落ち込んだグロリアを後目に、ある物に視線が釘付けになっていた。

 リルが抱えていた、小さくなったドラゴンである。

 最初は人形かと思った。しかし確実に動いている。

「それってドラゴンの子供?」

 ハルキはリルに聞いた。

「子供じゃないです。小さくなってくれてるだけの大きいドラゴンさんです」

 ハルキは感動した。だってドラゴンだ。夢の生き物だ。異世界転生した時に真っ先に会いたいと思った、あのドラゴンが目の前にいるのである。

 

『うむ、異界から導かれし魂の持ち主か、今回は四人もいるとは多いな……しかも一国で生まれたのか……何か意味があるのかもしれんの』

 リルはドラゴンの言葉を障りのない範囲で通訳した。

「レイズ王国を何とかしろってことなんですかね?」

 アナスタシアは首を傾げている。

「俺たちが何かしなくても、あの国は自滅して解体されると思うけど?」

 ハルキが言うと、ドラゴンは頷いた。

『それもまた運命というやつなのだろう。神は何かを期待してお前達を送り込んだのだろうが、結果に関しては別問題だ。神はただ災いを回避するための力を人類に与えただけにすぎない。それ以上の手出しをすることは無い』

 あまりいい要約が思いつかなかったリルはそのまま通訳した。

 

 聞いていたグロリアとロザリンは、神が送り込んだという言葉に絶句していた。リアもアナスタシアもハルキも平然としているから、既に知っていた事なのだろう。以前に聞いて以降口を噤んでいたジャスティンは微妙な顔をしてグロリア達を見た。後で話し合いが必要だろう。

 

 

 

 リル達は中断されていた勉強会を再開した。

 ハルキは勉強会が終わるまで、勉強嫌い組と遊ぶようだ。癒しが欲しいらしい。

 ハルキは背が高いので持ち上げられるのが楽しいらしく。皆タカイタカイされていた。

 リス達はハルキの頭にしがみついている。

 

 勉強会が終わって駆けてきたリルと琥珀を見たハルキは、俺も一匹連れて行っちゃ駄目かなと呟いた。

 その瞬間一匹のリスがクククッと鳴いてハルキの頬をペチペチ叩く。

 

「ねえ、リルちゃん、この子なんて言ってるの?」

 リルはリスの訴えを聞いて笑う。

「一緒に連れてってって言ってるよ」 

 リスはハルキの頭の上に乗ると居座る姿勢になった。ハルキの茶色の髪に紛れて、一見何かわからなくなっている。

 ハルキは喜んだ。

「じゃあお前は今日からナツな。よろしくナツ」

 ナツはキュッと鳴いて嬉しそうだ。

 

 それを見ていたアナスタシアはずるいずるいとハルキを叩く。アナスタシアにはまだ名前を付けられるようなパートナーが居ないのだ。

 ハルキは完全なとばっちりである。

 

 結果珍しくふくれっ面のアナスタシアにハルキがお土産のお菓子を渡したことで、機嫌が直ったようだ。

 

 アナスタシアに早くパートナーが出来るといいなと、リルは思った。

 

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