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56.神獣達の冒険

 リルが風邪をひいたという話を聞いた神獣たちは相談した。

『どうしよう、どうしたら元気になる?』

 キツネがオロオロとしながら言う。

『僕聞いたことあるよ、森の中にどんな病気も治しちゃう伝説の花があるんだって』

『じゃあそれを取ってこよう!』

 ウサギ達はリルの為に花を探しに行くことにしたようだ。

 皆で森の中へ駆けて行く。

 それを止めたのは小さなネズミだ、そうマロンである。

『待って、その話は本当かい?僕も探しに行くよ』

 マロンはキツネの背に乗せてもらうと森を駆けた。まず噂の元を知っているであろう古参の神獣に逢いに行くためだ。

『銀狼族の族長なら場所を知っているかな?』

『早速行ってみよう』

 小さな神獣たちは銀狼族のナワバリまで走った。既に息も絶え絶えである。

 

『お前たち、一体何をしに来た?』

 族長が走りすぎて疲れきった神獣たちに問う。

『僕たちはどんな病気も治す花を探しているんだ。族長、何処にあるか知らないかい?』

 マロンが必死に族長に訴える。

『なるほど蒼月の花を探しているのか。お前さんが出てくるという事はリルに何かあったのか?』

 マロンは一生懸命事情を説明した。

『そうか、だが我らの鼻を以てしてもその花を見つけるのは困難だ。伝説の花と呼ばれるくらい珍しい花だからな。月光がよく当たる場所にある青く大きな花というくらいしか情報もない』

『族長様はその花を見たことがあるのかい?』

『あるが、以前見つけた場所にはもう咲いていない。アレは群生しないのだ』

 マロンはガッカリした。苦しそうなリルに花を届けてあげたかったのだ。

『まあ、そう落ち込むな、我ら銀狼族も力を貸そう。森中の銀狼が探せばきっと見つかるであろう』

 マロンは族長に感謝した。今度は銀狼の上に乗せてもらって森の中を走り回る。

 目を皿のようにして青い花を探した。

 

 しばらく探していると、鷹が現れた。鷹王と呼ばれている鷹の中でも一番の権力者だ。

『マロンよ、話は聞いた。今鳥たちにも空から花を探させておる。情報が入ったら教えよう』

 マロンは神獣たちの協力に感謝した。

 そして鷹達だけでない、他の森の神獣たちも探してくれているようだ。

 リルは森の神獣たちに愛されている。みんなリルの為に動いてくれているのだ。

 マロンは心から神獣たちに感謝した。

 

 暫く森を捜索していると、マロンの元に鳥たちから報告が入った。

 青い花を見つけたという。

 慌ててその場所に行くと、銀狼の族長が崖をのぞきこんでいた。

『間違いない、あの崖の中腹にあるのが蒼月の花だ』

 

 そこは断崖絶壁の途中にある出っ張った場所だった。鷹達が取りに行こうとしたが、吹き付ける風が強すぎて飛べないようだ。

 マロンは覚悟を決めた。丈夫なツタを体に巻き付けると、他の神獣にツタを持っていて欲しいと訴える。

『まて、飛び降りる気なのか!危険すぎる』

 皆マロンを心配していた。

 

 しかしマロンの決意は固かったのである。

 ツタの反対側を木に結び付け、颯爽と崖を飛び降りた。

 みんな心配そうに下をのぞきこんでいる。崖下は本当に風が強かった。マロンの小さな体は風に煽られ今にも落ちてしまいそうだ。

 神獣たちは必死でツタを掴んだ。

 

 やがて風が少し弱まったのだろう。

 マロンは花の元までたどり着けたのである。マロンは急いで花をもぎ取ると、神獣達に引っ張って欲しいと合図した。崖の上に辿りつくと、みんな口々にマロンの健闘を讃えた。

 花を持って早くリルの元へ行かなくては。マロンはまた銀狼族の背に乗せてもらうと、拠点に戻った。

 

 

 

 拠点でルイスとイアンを見つけたので声をかけると、ルイス曰く、リルの体調は落ち着いているようだった。

 イアンがマロンの持ってきた花を見て目を見開いた。それはイアンが長年捜し求めていた花だったからだ。花びら一枚でどんな病気も癒す奇跡の花だ。

 

 イアンはマロンを連れてリルの元へ向かう。そして花弁を一枚食べさせた。その瞬間、リルの熱はすぐに下がった。苦しそうな様子もみられない。疲れで眠っているようだが、もう元気と言って差し支えないだろう。

 

 イアンはホッとした。そしてマロンに向き直る。

「なあマロン、その花の花弁を一枚分けてはくれないだろうか」

 マロンはキョトンとした。だが思い出す。イアンの父親は病に侵されているのだ。『治癒』の力を持つイアンだが、彼の力は病気ではなく怪我治療に特化していた。『治癒』の力を持っていながら父を治すことが出来ず、イアンは落ち込んでいたのだ。

 

 イアンの父親ならリルにとってはおじいちゃんだ。ここは協力すべきだろうとマロンは考えた。花弁を一枚ちぎってイアンに渡す。

 花弁を受け取るとイアンは神に祈るようにしていた。

「ありがとうマロン、リルも父も助けてくれて。やっぱりマロンは最高のネズミだな」

 イアンはマロンを撫でる、マロンは満更でもなさそうにしていた。

 マロンは他の神獣たちのおかげだと言いたかったが、言葉が伝わらないので仕方がない、リルが起きてきてから本当のことを話すことにしよう。

 

 翌日リルはすっかり元気になって、神獣たちにお礼を言っていた。神獣たちの語る冒険譚にハラハラしながらも、そこまでしてくれたことが嬉しかった。

 

 後日、イアンの父の病も完治したと連絡が入った。イアンはマロンへのお礼にマロンの大好きな高級チーズを沢山買っておいた。

 リルもおじいちゃんが完治したことに大喜びだ。落ち着いたら礼を言いに拠点に来ると聞いてリルはとても楽しみだった。

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