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53.国外旅行争奪戦

「ごめんなさい」

 拠点へ戻ったメリーはキツネを抱いたまま大人たちに頭を下げて謝った。

「いや、我々も申し訳なかった。もっと配慮するべきだったのに無理をさせてしまった」

 ブレンダンが申し訳なさそうにメリーに言う。

 

 和やかな空気が流れかけたその時、上空に見慣れた影が出現した。

「あ、ドラゴンさんだ!」

 前庭に降り立ったドラゴンは、視察団を目にすると言った。

『隣国から使者が来ていると聞いた。伝えたいことがあってきたのだ。リル、通訳してくれるか』

 リルは頷くと、視察団の人達に説明した。ブレンダン達はまだ困惑しているようだったが、ドラゴンからの伝言ということでしっかりと聞く姿勢になった。

『お前たちの国にいるドラゴンだが、あれは昔人と色々あってな。対話は諦めてはくれぬか。その代わり、神獣たちと人間が交流することに関しては口を出さないそうだ。活動期の時も神獣の住処を守るためなら力くらいは貸してやると言っている。だからそっとしておいてやってくれ』

 そう語るドラゴンの目は悲しみに満ちていた。一体何があったのかリルは気になったが、そのままを通訳した。

 

 ブレンダンがドラゴンに頭を下げて了承した。ドラゴンが敵対すれば国は亡びる。了承するしかないのであった。

 ドラゴンはそれだけ言うと去っていった。

 

 ドラゴンが去ったその場には沈黙が広がっていた。ブレンダンたちは初めてドラゴンと対話したのだ、無理もない。

 やがて正気に戻ると、話し合いを再開した。

 

「人に慣れた神獣を我が国に派遣してくださるそうですが、そのキツネ様の事でしょうか?」

 ブレンダンはメリーが抱えているキツネを指して言う。メリーはこのキツネが一緒に来てくれたら心強いと思っていた。

 

 リヴィアンがリル達を見るとちょっと困った様子だった。

「あの、実はまだ決まってなくて、メリーさんに選んでもらおうかと思ってたんです」

 リアが言うと、メリーは驚いた。

「それならこの子がいいです!」

 メリーは抱いているキツネを指して言う。

 

 その瞬間神獣たちからブーイングが起こった。旅に行きたいと志願していた神獣たちだ。

『ずるいよ、僕たちにもチャンスを!』

『不公平だー』

 何が起こっているのか分からないブレンダンたちは目を白黒させた。

 リルが事情を説明して、もう一匹くらい連れて行ってくれないかと言う。

 エクス王国としては断る理由がない。リヴィアンも一匹くらい増えても構わない様子だった。

 

 

 

 かくして、神獣たちの国外旅行争奪戦の火蓋は切られた。

「ではルールを説明します!今から三枚のカードから一枚をメリーさんに選んでもらいます。メリーさんが選んだカードと同じものを選んだ神獣が最終審査のアピール合戦に進めます!」

 突然始まった謎のゲームに、ブレンダンとダニエルは困惑した。リヴィアンや騎士たちは微笑ましそうに手を叩いているのでここではこれが普通なのだろう。

 これが神獣たちに好かれるということなのかと見当違いな事を考えていた。

 単に拠点の人間がリル達の奇行に慣れているだけである。

 

 オーディエンスは大盛り上がりだ。神獣達はみんな歓声を上げながら勝負の行方を見守っている。

 メリーがカードを選ぶと、旅に行きたい神獣達は頭を悩ませてカードを選んだ。メリーのカードが公開された瞬間、悲喜こもごもな声が上がる。

「さて最終審査に駒を進めたのは四名だ!一体誰が選ばれるのか!最後まで目が離せない!」

 リルの実況にオーディエンスが沸く。ノリが完全にテレビ番組でよく見る実況である。

 

「残ったのは鷹が二羽と、キツネが一匹、ネズミが一匹ですか、難しい展開になりましたね」

 リアが悪ノリして解説を付け加える。

「鷹かぶりしているのが気になりますね。空を飛べるというアドバンテージが弱くなってしまいます」

 アナスタシアも楽しそうに解説に参加している。

 ブレンダン達は最早何も考えずに状況を見守ることにした。これが神獣に好かれる愛し子のやり方なのだと自分を納得させる。

 

「さて、最終審査のアピール合戦!トップバッターはネズミです」

 ネズミは前に出るとアピールを開始した。

『僕は小さいし軽いから何処にでも持ち運べるよ。隣の国にも僕の仲間は沢山いるから、神獣たちの説得は任せてよ!絶対役に立つよ!』

 ネズミは小ささと仲間の多さをアピールポイントにしたようだ。

 

 今度はキツネが前に出る。

『一匹目がキツネなんだから、二匹目もキツネで揃えるのがいいんじゃないかな?ほら、僕ら二匹ともモフモフだよ!一緒に寝たら気持ちがいいよ!』

 キツネはもふもふの毛並みをアピールした。

 

 次に若い方の鷹が前に出る。

『僕の魅力はなんてったって飛べることさ。手紙だってすぐに届けられるよ。メリーの故郷にだってひとっ飛びさ』

 この鷹はメリーの情に訴えかけることにしたようだ。

 

 最後に貫禄のある鷹が前に出た。

『私は鷹の中でも地位が高い、多くの神獣が私の声になら耳を傾けるだろう。神獣との融和を目指すなら、これ以上の適任はいないと自負する』

 

 それぞれのアピールが終了し、結果はメリーに委ねられた。

 みんな固唾を飲んで結果を見守る。

 メリーが選んだのは最後にスピーチした鷹だった。やはり神獣との融和が楽になるのが魅力だったのだろう。

 

 選ばれなかった子達はガックリしてしまっている。しかしルールはルールだ仕方がないと鷹の健闘を称えた。

 

 こうしてメリーの相棒は決定したのであった。

 

 

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