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51.結局

 その日リルとリアは厨房でトロトロに煮た角煮を作っていた。角煮は肉食の神獣たちの大好物なので、作り置しているのだ。代わりに神獣達が角煮に合う獲物を狩ってきてくれるので、催促だと思っている。

 

 アナスタシアは塩分が多いと微妙な顔をしていたが、草食神獣が食べようと思えば肉も食べられると聞いて、普通の動物とは違うと諦めたようだった。今のところアナスタシアのスキルでも神獣たちに異常は見つけられない。

 でも確かに塩分が気になるのは事実なので、できるだけ薄味で作っている。

 

 二人がせっせと角煮を量産していると、アナスタシアが呼びに来た。イアンが呼んでいるのだそうだ。リアはなんとなく呼ばれた理由を察してしまってげんなりする。

 

 二人は厨房を出ると、待っていた琥珀とマロン、そして最近ずっとリアにくっついているようになった肥満気味のタヌキを連れて団長室に向かう。

 タヌキは本人曰くリアの守役のつもりらしいが、お菓子が欲しいだけだなとみんな思っている。

「名前付けてあげないの?」

 リルがリアに問うと、じゃあ『たぬたぬ』でと返ってきた。リルは聞いたことを後悔しかけたが、タヌキはとても嬉しそうだった。

『わーい名前だ!名前がついたよ!』

 リアの腕の中で大はしゃぎだ。リルは何だかほっこりした。


「いいなあ、私もパートナーが欲しい」

 アナスタシアは鳥に満遍なく好かれているようだが、大抵いつも違うメンバーだ。それも嬉しいが、リルと琥珀たちのような関係が羨ましかった。いつかきっとできるよとリルが笑う。

 アナスタシアはまだここに来たばかりだ。もう少ししたら相性のいい子が見つかるだろう。

 

 

 

 三人が団長室に着くと、ノックをして中に入る。

「来たか、ごめんな突然呼び出して」

 イアンは心底申し訳なさそうに言うと、三人をソファに座らせた。

「まあ、簡単に言うと、視察団がここに来たがっているそうだ」

 やっぱりかと、三人は思った。

 イアンがリアを見て言った

「ただ、目的はリルだけでは無い。三人ともだ。エクス王国は無条件に神獣に好かれる人間に会ってみたいと言っている」

 リアは顔を顰めた。

「実際にその目で見て、自国でも同じ能力を持った人間を探したいと言うことですよね」

 そういうことだと言ってイアンはため息をついた。

「ただお前たちは国の宝だ。そう易々と会わせられない。兄上は会うにあたって条件をつけた。まずお前たちの顔を隠すこと。そして『通訳者』を含め会えるのは三人までだ。向こうはそれを了承した」

 

 リアはため息をついていたが、リルは『通訳者』に会えるとワクワクした。アナスタシアは納得したような表情をしている。

 三者三様な反応にイアンは笑ってしまった。

 

「視察自体はどんな状況なんです?」

 リアの質問にイアンが答える。

「順調だよ、隣国もこの国のように近々神獣騎士団を作るらしい。全体的にこちらを真似た構成にするようだ。ただ、神獣たちにそれを伝えるのにどうしたらいいのか悩んでいるのが現状だな。向こうの『通訳者』は神獣に警戒されているから」

 

 リアは少し考え込んだ。

「なら取り急ぎこちらから神獣を派遣するのはどうですか?旅をしてみたいと言っている神獣もいますし、こちらの神獣は活動期で人間に慣れています。『通訳者』が居るのなら、コミュニケーションにも問題は無いでしょう。同じ神獣が説得すれば向こうの警戒心も解けるでしょうし、話し合いに持ち込むくらいはできるのでは無いでしょうか。まあ、一時的な対応策にはなりますが、神獣保護と共生の基礎くらいは固められるのではないでしょうか」

 

 リアのアイディアを、イアンはリヴィアンに魔道具の鳥を飛ばして伝えた。返事が返ってくる間、リルも神獣たちに事情を説明する。隣国に旅行がてら仕事をしても構わないという神獣は意外と多く居た。

 特に鷹とキツネは乗り気だった。なんだか争奪戦が起こりそうな勢いだった。

 

 リヴィアンの方も、それが可能なら提案してみたいとのことだった。恩も売れるし、こちらにデメリットはほぼないのだから当然だろう。

 視察団がここに来る時には、リヴィアンもここに来るという。

 詳しい話はそれまでに詰めておくそうだ。

 


 

「エクス王国の『通訳者』の子は大丈夫なんでしょうか?」

 アナスタシアが心配そうに言う。イアンはなんとも言えない顔で彼女の現状を教えてくれた。

「隣国も気を使っているようだが、精神的に相当堪えているようだ。無理もないだろう。実際こちらの神獣保護策を見学する度顔色を悪くしていたそうだ。自分には無理だと泣いていたと聞く」

 リルはそれを聞いて、会えたら優しくしてあげようと思った。神獣たちは優しいから、いつかきっと仲良くなれると教えてあげよう。

 

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