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50.隣国の視察

無事『特別神獣保護隊』に入隊することになったアナスタシアが拠点に馴染んできた頃、隣の同盟国であるエクス王国から神獣とのあり方を視察するための視察団がやって来たらしい。

 

「私はエクス王国のことは全く知らないんだけど、神獣信仰が強い国なの?」

 アナスタシアがタヌキを体重計に乗せながら言う。

「そうだな。この国みたいに聖騎士団がある訳じゃないが、密猟者の取り締まりに関してはかなり厳しい。先日の活動期の一件で国民にさらに神獣信仰が広がりつつあるみたいだ」

 ジャスティンが次のタヌキをアナスタシアの元へ誘導しながら答えた。

「そうなんだ。ああ、やっぱりこの子は肥満気味だね。おやつは控えましょうねー」

 

 肥満と言われたタヌキが絶望した表情でリアの元へ走ってゆく。

「ああ、やっぱり、おやつあげ過ぎたね。これからは控えようね」

 リアがタヌキを持ち上げるとタヌキは悲愴な表情で鳴き始めた。

「それかもっと運動させよう?せっかくアスレチックがあるんだから」

 アナスタシアが笑いながらタヌキに言った。タヌキはリアの腕から抜け出すと一目散にアスレチックに走ってゆく。そんなにお菓子を減らされるのは嫌らしい。

 リルは健康診断の終わった子達のブラッシングをしながら笑った。


「エクス王国の『通訳者』はどんな人なのかな?」

 リルがウサギを転がして遊んでやりながらポツリと呟いた。

「聞いた話ではまだ子供だそうだ。十一歳の女の子らしいぞ。突然国に連れていかれてかなり戸惑っているらしい」

 ジャスティンはかなり詳細なエクス王国の情報を知っているらしい。

「まあ、突然国の重要人物にされたらそうなるよね」

 猛烈に運動するタヌキを眺めながらリアは同情した。


「全く自然体なやつもここに居るけどな」

 ジャスティンはリルを見ながら言った。リルはキョトンとしている。

 アナスタシアはイノシシを体重計に乗せて心配した表情をした。

「でも大丈夫かな、そんな状態で他国の視察でしょ。まだ何も分かってないんじゃないのかな?」

 ジャスティンが次のイノシシを誘導しながら難しい顔をした。

「まあ、そうだろうけど、連れてこない訳にはいかなかったんだろう。隣国としてはやっと見つかった『通訳者』だからな。この国みたいに神獣と契約を交わしたいんだろうから……」

 リルは体重測定の終わったイノシシをブラッシングしながら考える。契約なんてしなくても仲良くなる方法は沢山あるのになと。

 

「そもそも隣国にドラゴンなんているの?契約するならドラゴンとでしょう?」

 神獣たちの健康診断のデータをまとめながらリアが言った。

「一応いるらしいぞ。この国とは反対側の方に。ただ、話し合いをしようとしたら怒って追い返されたらしい」

 そうだろうなとリアは顔をしかめる。


「森ごとに縄張りのトップと話し合いする方が楽なんじゃないかな、それ。なんにせよ十一歳の女の子には難しいよね。多分私たちみたいに無条件に神獣に好かれるわけじゃないだろうし」

「……やっぱりそうなのか?」

 ジャスティンはキツネを捕まえようとして逆に遊ばれながら、また難しい顔をした。

 『通訳者』だから神獣に好かれる訳では無いと、この国は先日知ったばかりだ。現に隣国の『通訳者』は神獣に近づくのすら大変だったらしい。今この国はなんとか神獣に好かれる者を集めようと、好かれる要因を探しているところだ。

 

 ジャスティンは恐らくはその答えをリアの言葉から知ってしまったが、国には伝えないでいる。聡明なリアが口をつぐんでいるのだ。何か障りがあるのだろう。

 今のところ守護霊が何かしら関係しているのではという事になっている。見つかった神獣に好かれる者全員が守護霊憑きと言っているのだ。そう考えるのが自然だろう。

 

 

 

 リアは走りすぎてバテているタヌキに水を飲ませながら考える。

 向こうは何としてもリルに会いたいと言い出すだろうなと。

 そうなったら何としても自分も同行しようとリアは誓った。

 頑張って運動したタヌキにご褒美のクッキーを一枚あげながら、リアは自分の推測が当たらない事を祈った。

 

 

 

 ジャスティンはリアを見て思う。リアは一度懐に入れた者に甘すぎる。タヌキが痩せられる日は永遠に来ないのではないだろうか。

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