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47.捨て子

 春が近づいた頃、リルとリアは八歳になった。その年の誕生日には昨年より多くの神獣たちが集まってくれ、沢山のプレゼントを貰った。

 リルもリアも最近は神獣たちに言葉を教えたりするので忙しかったため、久しぶりのゆっくりとした時間だった。

 


 

 活動期以来リルとリアは、聖騎士団の『特別神獣保護隊』に属していることになっている。これはリルの為に作られた所属先で、名前の通り特別な方法で神獣を保護し、共生方法を模索するための隊である。

 入隊資格は神獣に対して有効な特別な能力を持っていることである。リアは何故か初対面の神獣にも全く警戒されないという事が入隊理由になっている。

 

 まあリヴィアンが言うには、リルとリアに給料を与えた上で自由に行動させるために適当に作った隊らしいのだが、真面目なリアのお陰でしっかり稼働している。

 リルの神獣観察日記の内容を綺麗にまとめて研究成果としているのだ。聖騎士団の統括として、神獣に関する事柄を一手に引き受けているリヴィアンですら舌を巻く貢献ぶりだ。

 そんなこんなで、リルとリアは八歳にして高給取りだった。

 二人の生活ははっきり言って順風満帆。こんなに幸せになれるなんて、リルは地下にいた時は思ってもいなかった。

 

 

 

 そんな時だった、神獣たちがリルの所に急いでやってきた。

『大変なの、人が倒れてたの』

『治してあげて』

 小さな神獣達の後ろから、クマが現れた。肩に人間を担いでいる。

 リルは急いでイアンを呼びに行った。

 

 それは十四歳くらいの女の子だった。手足をロープで縛られ衰弱していた。

 ロザリンが縄を解き、状態を確認する。グロリアが救護室で寝かせる準備をしている。それはとても手慣れていた。何人もの人間を保護してきたのは本当のことだったのだ。ただリルがここに来てからは無かっただけで。

 

 リルは自分も捨てられた身でありながら衝撃を受けた。縄で縛られていたということは、この子は自分で森に入った訳では無い。誰かに捨てられたのだ。

 リルは何をしたらいいのか分からなくてオロオロした。最終的に、リアに邪魔になるからと別室に移動させられてしまった。

 

「ここにはよく人が捨てられるって聞いてたが、あれは酷いな……」

 ジャスティンが眉間にシワを寄せている。

「わざわざ縛って捨てるなんて、悪質にも程がある」

 リアは怒っていた。

「まあまだ分からないが、なにか大きな罪を犯した罪人かもしれないし、リルとリアは近づくなよ」

 ジャスティンは釘を刺した。しかしリアは不服なようだった。

「私は彼女が目を覚ましたら彼女の所に行く。私の力が必要なはずだから」

 顔を顰めたジャスティンは何も言えなかった。リアのスキルを知らないからだ。しかし護衛としては承服しがたい。

「なら俺も一緒に行く」

 結局折衷案をとる事になってしまった。

 

 

 

 イアンのスキルで、女の子は一応喋れるくらいには回復したらしかった。しかし、片足は人為的に折られていて体は殴られたように傷だらけだったそうだ。リルは胸が痛かった。

 リアは腕輪を外すと、女の子の尋問に参加する。リルもついて行った。

 イアンは腕輪を外したリアを見て少し顔を顰めたが、リアの能力が必要だと思い直して、何かあったら服を引いてくれと言った。

 

「ここはウィルス王国第二聖騎士団の拠点だ。君が森で衰弱していたところを保護した。まず君の名前を聞かせてくれ」

 女の子は少し考えると言った。

「アナスタシアです。姓はありません」

 嘘では無い。

「そうか。アナスタシア、何があったのか聞かせてくれ」

 アナスタシアはリル達の方を見た。困惑しているようだった。しかしリルの足元にいる琥珀と、肩に乗っているマロンに気がついて目を見張っていた。

「彼女たちは大丈夫だ、とにかく話してくれ」

 イアンは先を促す。アナスタシアは決心したように口を開いた。

 

「私の住んでいた村は酪農を生業としていました。でも、魔物が現れて壊滅的な被害を受けたのです。国は何一つ助けてくれませんでした」

 そこまで言って、アナスタシアは少し躊躇った。だがすぐに意を決したように話し出す。

 

「私のスキルは『獣医師』です。村では重用されていました。でも、村が荒れ果て食料もなくなった時、誰が言い出したのか、獣を治せるなんて不吉だと、お前が魔物を呼んだんだろうと言われて……そして森に捨てられました」

 

 話には何一つ嘘はなかった。本当にただ理不尽に酷い目にあったのだろう。イアンは彼女を丁重に保護することにした。

「そうか、神獣信仰が強いこの国では『獣医師』は歓迎される。安心していい。少し療養したら君の受け入れ先を探そう」

 アナスタシアはホッとした様子だった。

「ありがとうございます」

 そして疲れていたのだろう。すぐに眠りについてしまった。

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