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46.文字を教えよう

 今日のリルは張り切っていた。神獣たちに文字を教える日だからだ。

 リルは大きな板に文字を一つ一つ書いてゆく。

 今日の生徒はクマと鷹だ。神獣の中でも頭の良い組み合わせである。

 クマも鷹も、リルの真似をして地面に文字を書いてゆく。まずは文字の種類を覚えてもらい、それから単語や文章を教えることにしたのだ。

 

 リルは授業を始めてから、神獣たちの賢さを侮っていたことに気がついた。

 神獣たちの誰に問題を出しても、一度教えたことは間違えない。神獣とは正しく神の獣なのである。神の恩恵をその身に受けているのだ。

 リルも後ろで見学していたジャスティンもとても驚いた。

 これならすぐに文字を覚えられるだろう。リルが次のステップに進もうとした時だった。

 

 空を暗い影が覆った。最近では聞きなれた翼の音がする。ドラゴンだ。

 ドラゴンは地上に降り立つと翼を畳んだ。

「どうしたんですか?ドラゴンさん」

 リルが大きな声で問いかけると、ドラゴンは笑った。

『なに、リルが神獣に文字を教えると聞いたのでな。この老いたドラゴンも学ぶべきかと思いやって来たのだ』

 なんとドラゴンも勉強会に参加するようだ。

『一度ウィルスに簡単な文字は習ったが、あの時とはもう言語が変わってしまったようでな。もう一度学び直すことにしたのだ』

 リルはドラゴンを歓迎した。

 

 もう一度基本から説明すると、ドラゴンもすぐに文字を覚えてしまった。優秀な生徒でリルは楽ちんだ。

 次によく使う文法を教えてゆく。こちらは少し手こずる子がいたが、概ね理解できたようだった。元々言葉は理解しているのだ。それに当てはめれば良いだけとはいえ、すごい理解力だった。

 一日目だけで文章の基礎を学び終えた神獣たちは嬉しそうだ。あとは単語をひたすら覚えれば、簡単な筆談くらいできるようになるだろう。

 リルは次の授業はどうしようか考える。

 やはり、絵も交えて分かりやすい単語カードを作るべきだろうか。そしてそれを使って文章を作る練習をする。それがいいかもしれない。

 リルは次の授業も楽しみだった。

 

 

 

 勉強会が終わると、リアがオヤツを作ってきてくれた。今日のオヤツは角煮まんらしい。

 クマと鷹に合わせたようだ。

 リアはドラゴンを見て困ったような顔をしていた。ドラゴンに角煮まんは小さすぎたからだ。

「ごめんなさい、ドラゴンさん、小さいものしかなくて」

 ドラゴンは気にするなと笑った。

『久しぶりにこうするかの』

 そう言うと、ドラゴンはどんどん縮んでしまった。鷹と同じくらいの大きさになって胸を張る。

「すごい!ドラゴンさん小さくなれるんだ!」

 リルは大喜びで手を叩く。リアとジャスティンは呆然としてしまった。

『ははは、私の十八番じゃ、凄かろう』

 姿だけではなく声まで可愛くなっていて、リルは感激した。リアとジャスティンは漸く正気に戻ってドラゴンを見つめた。

 リルがおもむろに小さくなったドラゴンを抱き上げる。あまりに可愛かったからだ。

『なんだリルよ、お前も小さいのが好きか。ウィルスもよく可愛いは正義と言っておったの』

 ウィルスさんとは気が合いそうだと、リルは思った。

 

 

 

 色々あったが皆で温かい角煮まんを食べる。お肉がぎっしりで美味しい。

『リアは料理が上手いわね、こんな美味しいもの初めて食べたわ』

 クマがリアを褒める。リアはいつの間にかやって来ていたタヌキに角煮まんを食べさせていた。リルが通訳すると嬉しそうに、また作ると約束した。

 

「お口に合いましたか?」

 リアがドラゴンに聞くと、ドラゴンは口いっぱいに角煮まんを頬張っていた。最古の龍の威厳はどこに消えてしまったのか。

『うむ最高だ。これは神に奉納しても喜ばれるぞ』

 リルが通訳すると、リアはお礼を言いながら大笑いしていた。ドラゴンが小さくなった衝撃から立ち直り、今度は面白くなったらしい。

 

「ねえ、ドラゴンさん以外はみんな姿を変えられないの?」

 リルの疑問にみんな無理だと答える。

『簡単なことの様にやっていらっしゃるが、凄いことなのだぞ。神の御業に近いことだ』

 鷹が尊敬を込めた目でドラゴンを見ながら説明してくれた。

 リルは、ならアリスみたいに小さくなれないのかとガッカリした。

 それにしても小さくなったドラゴンは可愛い。

 リルはドラゴンの頭を撫でながら、毎回小さくなってくれないかなと思っていた。

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