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45. お願いボード

 リルは神獣たちの使うボードの内容を一生懸命考えていた。横から琥珀とマロンが覗き込んでアドバイスして来る。

『絵もそうだけど色でも分けるといいと思うよ。ボードの縁に色を塗って項目ごとに分けるんだ』

「神獣は色を識別できるの?」

 普通動物は色を識別できないものが多いはずだ。『みちるちゃん』が言っている。

『神獣だからね、普通の動物とは違うのさ』

 リルは驚いた。もうずっと一緒にいるのに知らないこともあるものだなと思う。

 

 神獣達のためにまず作ったのはイエスとノーのボードだ。神獣たちが人間の問いに答える際に使えるだろう。イエスが赤、ノーが青にした。

 次は危険を知らせるボードだ。これはとても迷った。魔物の種類は変異種も含めると沢山あるのだ。ただ危険な魔物が出ただけでは人間の方が大変だ。

 うんうん唸っていると、リアがこれが一番詳細な魔物図鑑だと言って図鑑を持ってきてくれた。中には魔物の絵が書いてあって読みやすい。ボードで危険を知らせたら、図鑑で種類を指す。それが一番効率的なような気がした。

 

 次は数のボードだ、一から十までの数を丸で表す。神獣たちがみんな数を数えられることは確認済みだ。

 後は魔物以外の緊急事態を伝えるボードも作った。怪我や病気、後は密猟者を見つけた時など役に立つだろう。

 

 最後は普段のコミュニケーションに使えるボードだ。お腹がすいたとか、一緒に遊ぼうと問いかけるとかそんな内容だ。

 内容を厳選したつもりなのに少し多くなってしまった。まあ聖騎士達も神獣たちも賢いから何とかなるであろう。

 リルは試しに拠点にいる神獣たちにボードの使い方を教えてみた。

 

 ボードの意味を一つ一つ教えて、リルの方から色々質問してみる。イエスとノーのボードはみんな簡単に覚えられた。

『ねえ、これイエスでもノーでもない時はどうするの?』

 琥珀が言うのでどちらでもないというボードも作った。これは黄色にした。

 色々な状況に対応できるようにジャスティンにも試してもらう。

「じゃあ、森の中に変異種が三体現れた時はどうする?」

 神獣たちは一生懸命考えてボードを選んで持ってくる。

 これくらいの量なら小さい子達もすぐに覚えられるようで安心した。

 

 その光景を偶然見ていたメイナードは紙ではすぐボロボロになってしまうからと、軽い木で小さくボードを作り直してくれた。神獣が咥えやすいように紐も結んでくれた。これを拠点の入口に置いておけば何時でもコミュニケーションがとれるだろう。

 リルはできたボードをイアンのところに持っていこうとしたが、リアに一旦止められる。

「待って、各拠点の神獣にボードの意味を伝える人材が必要でしょう?とりあえず鷹さんにお願いしよう」

 

 リルは笛を吹いた。これは鷹達に言われて持っている鷹を呼ぶための笛だ。

 リル達は鷹に事情を説明すると、すぐにボードの内容を覚えてくれた。鷹はかなり頭がいいのだ。

 詳細な文字を覚えたい神獣を募集したところ、鷹達はすぐに立候補してくれた。鳥の手足では文字が書けない事を心配していたら、彼らは器用にくちばしの先で地面に文字を書いていた。機動力の高い鷹が文字を覚えてくれれば心強い。他にもクマは木の棒を抱えて文字を書くことが出来た。後日クマと鷹を集めて授業をする予定だ。

 

 イアンにボードの話をすると、すぐにリヴィアンに連絡をとってくれた。明日から各拠点を回ってボードの使い方を神獣たちに教えて欲しいと返事が来た。鷹達は張り切って明日からの重大任務に備えている。

 鷹達はどうやら各拠点の聖騎士たちとかなり仲良くなっているようだ。一年も頻繁に行き来していたのだからそうなるだろう。

 

 

 

 リアは聖騎士たちのためにボードの説明が書かれた説明書を作ってくれた。

 イアンがエクス王国からの使者が視察に来る前に完成して良かったと言っている。このボードはエクス王国の使者もきっと喜ぶ。ウィルス王国に倣い、神獣と円満な関係を築くことが視察の目的なのだそうだ。そういう事ならリルは協力を惜しまない。

 

 そしてなんと、エクス王国にも『通訳者』スキルを持つものが見つかったのだそうだ。視察には彼女も同行して神獣とのあり方を学ぶのだ。

 リルは少し、自分以外の『通訳者』に会ってみたかった。でもリルとリアはもう少し大きくなるまで顔を晒せない。レイズ王国の聖女をまだ覚えているものがいるかもしれないからだ。

 リルは会えないことをちょっと残念に思った。

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