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43.春の異変

 冬が終わり、拠点には春がやってきた。そろそろ活動期が始まる頃だ。リルは神獣たちを心配していた。


 それは突然にやってきた。連絡網で各地に飛ばした鷹達から、強力な変異種の目撃情報が多く寄せられるようになったのだ。

 リルはそれをイアンに伝え、知らせを受けた各拠点の聖騎士たちが対応する。鷹達は求められると何度も聖騎士たちの元に飛んでくれた。

 

 リアは鷹達から寄せられた情報を整理してまとめる役割を担ってくれている。リアのまとめた情報書類は分かりやすいと評判である。『かなめ』は警察官として情報をまとめることに慣れていたそうだった。

 

 鷹達は国旗の刺繍された旗をつけたカゴを使って怪我をした神獣を最寄りの治療師の元まで運ぶ。これで神獣たちの被害は最小限に抑えられていた。人間の方も、事前に神獣たちが情報をくれるお陰で対策ができ非常に助かっているという。

 

 小さな鳥たちも頑張った。安全な空から魔物の纏う邪気を察知し偵察してくれたのだ。そのため優先順位を設けて魔物の討伐ができた。

 

 拠点によっては神獣と人間が共闘する場面も多くあったようだ。

 

 リル達のいる拠点近くの森でも、凶暴化した魔物の変異種が多く目撃された。戦えない小さい子たちは完全に拠点住まいになってしまっている。変異種が現れる度、軍が拠点にやってくるので、リルとリアは用心のためベールで顔を隠していた。

 イアンも団長兼治療師として、とても忙しくしている。

 

 

 

 今日は拠点にドラゴンがやってきた。ドラゴンはいつもの活動期では人の入れない森の奥の魔物を担当しているのだが、今回はその他にも定期的に各森を廻り、強力な魔物が出現する度助けてくれていた。


『リルよ、今日はこの森の魔物退治に力を貸そう』

 そう言って飛びたったドラゴンは驚くほどの数の魔物を狩ってくる。毎回ドラゴンが魔物を狩った後は数日森が落ち着く。神獣と違って魔物はどこかから湧いてくる物だが、湧き直しには数日かかるようだった。

 

 それのお陰で軍人さん達にも休む時間が出来、討伐も上手くいった。前回の活動期の記録より圧倒的に死傷者が少ないと、みなドラゴンに感謝した。

 助けてくれたのが建国王と契約を交わしたドラゴンと同一の個体だと知ると、騎士たちは祈りを捧げるようになった。

 

 

 

 日々は目まぐるしく過ぎてゆく。夏になった頃、森の一つに災害級の魔物が出現したと情報が入った。その魔物はゆっくりと人里に近づき、討伐しようとした軍を一網打尽にしたのだ。ドラゴンがすぐに向かってくれたので被害は最小で済んだようだが、多くの者たちが亡くなった。

 

「どうして活動期なんてあるんだろう」

 リルが思わずそう零すと、ドラゴンが答えてくれた。

『魔物は世界の浄化の為に必要なのだ。この世の核に溜まった穢れを魔物を通じて外に出す。今は溜まりすぎた穢れを一気に吐き出す期間だ。この期間が無いと世界は均衡を保てないのだ』

 とにかく世界のために必要なことはわかった。結局はできるだけ誰も死なないようにするしかないのだ。

 

『この活動期は神が与えた試練でもある。人類が試練を乗り越えることができるよう、神は美しく磨かれた魂を持つものを度々この世界に呼び寄せ、特別な力を与える。今回はそれがリルとリアであるのだろう。ウィルスの時と同じだ』

 リルは困惑した。自分が人類のために神が呼び寄せた存在だと聞いてもピンと来なかった。


『なに難しく考えることは無い。お前のやりたいことをやりたいようにやればいいのだ。神獣はみな力を貸してくれるだろう』

 今までと同じように、人間と神獣が仲良く暮らせるようにすればいいのだろうか。それならリルにも出来そうだった。


「私たちの他にも呼び寄せられた人は居るの?」

『居るであろうな。大半が大きなことは為せずに儚くなるが、中にはウィルスのように最高の結果を出す者もいる。リルとリアにはウィルスのようになって欲しいものだな』

 それはとても難しいことなのではないかとリルは思った。お姉ちゃんと協力したら出来るだろうかと考える。やはりあまりピンとこなかった。

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