42.誕生日
その日リルはお使いを頼まれた。街に行って指定のお店から品物を受け取って来て欲しいそうだ。リルとリアとジャスティンの三人で街で買い物するのは初めてで、とても緊張した。琥珀もマロンも連れて行けない。
リルはリアの手をぎゅっと握る。そうしたらきっと何でも大丈夫だと思えるからだ。ジャスティンが御者をして馬車を走らせる。
二人でお話ししながら街に向かった。馬車を降りても二人は手を繋いだままだった。
品物の受け取りはすぐに終わった。あとは適当に街を見て回る。この頃にはリルの緊張も解けて散策を楽しめるようになっていた。
露店で可愛い髪飾りを見つけた。お姉ちゃんに似合いそうだと言ったら、リアもリルの為に髪飾りを選んでくれた。デザインは違うがお揃いの花の髪飾りだった。髪飾りを購入して屋台でクレープを食べる。とても楽しい時間だった。午後には帰ると約束していたので名残惜しいと思いながら帰宅した。
拠点の敷地に入った途端、おかしな所で馬車が止まった。ジャスティンが馬車の扉を開けてくれると、あったかスポットに神獣たちと騎士のみんなが揃っていた。何やらシートが敷いてあってピクニックのようだ。
イアンがリルを抱き上げて言う。
「リル、リア、七歳のお誕生日おめでとう!」
その瞬間みんなからおめでとうの声が上がる。リルは呆然とした。お誕生日の意味を飲み込めなくて固まってしまう。
しかしジワジワと意味がわかって涙が溢れてきた。
地下にいた頃、お誕生日がいつなのか、暦を知らなかったリルには分からなかった。メイドにプレゼントと称して冷たい水を掛けられたことがあったが、こんな温かいプレゼントは初めてだった。
リルはしゃくりあげて泣いてしまった。リルが泣き止むまで、みんな優しく見守ってくれた。
リルが泣き止んだ後、みんながプレゼントをくれた。
リアと一緒に受け取ってゆく。
『私たちからのプレゼントはこれよ』
神獣たちからは綺麗な花束を貰った。みんなで冬に咲く花を探してくれたらしい。とても大変だったのではないだろうか。
「これ全員からよ、似合うといいんだけど」
騎士たちからは全身トータルコーディネートされた服と靴、バッグとアクセサリーを貰った。二人お揃いでとても可愛い。
「俺からはこれな、女の子にプレゼントなんて初めてだったから、気に入ってくれるといいんだが」
イアンからはネックレス型の可愛い時計を貰った。ちなみにリアは剣を貰っていた。時計は護身用にもなるらしく、鎖を引っ張ると大きな音が鳴った。
「リル、お誕生日おめでとう!私からのプレゼントはさっきの髪飾りね」
リアはそう言って笑う。
「お姉ちゃんもお誕生日おめでとう!私からのプレゼントも、さっきの髪飾りでいい?」
二人でお揃いの髪飾りを指して互いを祝う。
リルはこんなに嬉しいプレゼントは生まれて初めてだった。リアと一緒にずっと笑っていた。
シートの上にはご馳走が用意されていた。みんなリルとリアの好きな物ばかりだ。二人は嬉しくてたくさん食べてしまった。このご馳走はミレナからのプレゼントらしい。
食後には大きなケーキがあった。美味しすぎてお腹がパンパンになるまで食べてしまった。
リルはこの日のことを絶対に忘れないと思った。
この先何年たっても絶対に忘れることなんてできない。
生まれてきてよかったと、初めて母に感謝したくらいだ。
今日貰ったプレゼントも、ずっとずっと持っていようと思う。
「みんなありがとう!」
リルは改めてみんなに感謝した。
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