33.ソリと花火
イアンが城に行った次の日、リルは神獣たちの為のあったかスポットで編み物の続きをしていた。上手く行けば今日中に完成させられるはずだ。
リルの周りでは、ロザリンが作った毛糸のボールで神獣たちが遊んでいた。子ウサギ達は子ヒョウ達と仲良くなったようで、じゃれあって遊んでいる。大きさが違いすぎて少し怖いが、子ヒョウたちは上手に加減ができているようで、転がされている子ウサギは楽しそうだった。
水場では白鳥が他の神獣たちに武勇伝を語ってきかせている。
平和だなとリルは思った。
みんなに明日はお祭りなんだよと言うと、とても羨ましがられた。今度神獣たちのお祭りを開催してあげるのもいいかもしれない。
リルはマフラーを編みながらお祭りの構想を練る。
中々いいアイディアは思いつかなかったが、考えるだけで楽しかった。
昼頃になって、ようやくイアンにプレゼントするマフラーが完成した。中々にいい出来だとリルは思った。マフラーが出来上がってしまうと、リルは途端に寂しくなる。早くイアンが帰ってこないかと街の方を見た。
『リル、寂しいの?だったらみんなで遊びましょう。遊んでいたらすぐに帰ってきてくれるわ』
リルは琥珀の言葉に頷いた。
倉庫にメイナードが作ったソリがあったはずだと思い出したので、それを持ってくる。
雪かきで出来た雪山に登るとソリで滑り降りた。初めての体験でとても楽しかった。するとみんなも集まってくる。リルは順番にみんなを抱っこしてソリに乗せてやった。
リスたちがリルとソリの隙間に挟まって何度も滑っている。
ちょっと大きい子はリルが抱っこしてくれないと乗れないので不満そうだ。
するとタヌキが体を丸くして、坂から転がり始めた。楽しかったらしく何度も転がっていた。リルは怪我をしないかハラハラしてしまう。
『人間の考える遊びは楽しそうね』
白鳥は羽繕いをしながらのんびりとその光景を眺めていた。
夕方リルが休憩していると、ヘイデンがやって来て言った。
「即位式の前夜祭を見ないか?」
そんな楽しそうなものがあるのかと、リルは二つ返事で見たいと言った。
みんなはもう目的地にいるらしい。リルは琥珀とマロンを連れてヘイデンと拠点の前庭に行った。
そこでは夕食の用意がしてあった。リルはここで前夜祭をするのかと不思議に思った。
ヘイデンが面白そうな顔をして言った。
「今日と明日は空に花火が上がるんだよ」
リルは興奮した。それはとても綺麗なものだと『みちるちゃん』の記憶で知っている。
みんなで夕食を食べながら花火が上がるのを待つ。マロンは花火を見た事がないらしく、ずっとソワソワしていた。
やがて大きな音がして、空に花火が打ち上がった。この拠点は山の上の方にあるから花火がよく見える。
リルは感動した。
『花火というのは綺麗だね、名前のまま大輪の花のようじゃないか』
マロンはじっと花火に見入っている。
森の中から神獣たちも姿を現して、みんなで花火を楽しんだ。
リルは少しだけ、お父さんと一緒に見られたらなと思ってしまった。
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