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【書籍化】捨てられ転生幼女はもふもふ達の通訳係【Web版】  作者: はにか えむ
幼女編

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32.リア

 挨拶が済んだところで早速話し合いを始めることになった。

 リアの今後についてだ。彼女はまだ幼い。隠れて暮らすにしても、保護者が必要だった。

「さてリア、今日は君に提案したいことがあってイアンを呼んだんだ」

 リヴィアンが話を切り出すと、リアは頷いた。

「このイアンの養子になってリルと共に暮らす気はないかい?」

 リアは目を伏せて首を横に振った。

「私が王族の養子になるには大義名分が必要なはずです。私はそれを持ち合わせていません」

 なるほど賢い子だとイアンは思った。リアは視野がとても広い。

「『真実の目』を持ち、『通訳者』の双子の姉なんだ、二人一緒に引き取ってもおかしいことは無い」

「私が『真実の目』を持っていることは明かせないでしょう?」

 リアはこちらの言葉に全て正論で返してくる。だが、きっとリルの近くへ行くことを躊躇っているのだろう。

「明かさなければいい、ただ『通訳者』の姉が有用なスキルを持っているからついでに保護したと言うだけで十分だ。もうミレイユは死んだと隣国では発表されている。成長した後のことを考えると王族の養子になっていた方が安全だ」

 

 そう言うと、リアは黙ってしまった。イアンは優しく語りかける。

「リルは姉に会えるなら会いたいと言っている。マロン……君の実家に住んでいた神獣が、君は優しいと言っていたからね。その上リルも、君がリルの存在を知らなかったことを知っている」

 リアはまだ葛藤しているようだった。

「リルは姉に憧れている。リルの守護霊の『みちるちゃん』には優しい姉がいたと言っていたからそれのせいだろう。姉妹としてリルとやり直して欲しい」

 

 それを聞いてしばらく、リアは涙を零しながら言った。

「それでも私は怖いのです。私が関わる事で妹が辛い記憶を思い出してしまうかもしれない。やっと幸せになった妹から、私はもうこれ以上何も奪いたくないのです」

 リアは少し間を置いて言った。

 

「『みちる』と『かなめ』は双子でした。でも『みちる』だけが生まれた時から病弱でした。彼女は人生のほとんどを病室の中で過ごしたのです。『かなめ』は生まれた時に『みちる』から多くのものを奪いました。健康な体も夢も。健康な『かなめ』を見る度に『みちる』が何を思っていたのか、『かなめ』はずっと怖かったのです」

 リアは話しながらずっと、ただ涙を流していた。

「私も、同じようにリルから沢山のものを奪ってしまいました。私はリルに会うのが怖いのです。この『真実の目』でリルの本心を知ってしまうことが、どうしようもなく恐ろしいのです」

 リアは前世から深い罪悪感を抱えながら生きていた。二度目の人生もその焼き直しのような物だった。リルが今幸せなら、そのまま苦しい記憶を全て忘れて欲しい。リアが居ない方が、リルはきっと幸せなのではないか、そう強く思っている。でも、本当にその通りだと突きつけられてしまうのは怖かった。


 イアンもリヴィアンも返す言葉が見つからなかった。しかし、二人に姉妹の守護霊が憑いたのも、珍しいスキルを持っているのも偶然ではなく神の意思だったのではと感じていた。

 涙を流すリアにリヴィアンは意を決してあるものを渡す。

「これはスキル封じの腕輪だよ。着けているとスキルが一切使えなくなる。怖いのなら、それを着けて一度だけでもリルに会ってみないかい?この際養子のことは考えなくていいから」

 リアはまた黙り込んでしまった。誰かが背中を押さないと彼女はきっと動けないのだろう。真面目すぎる彼女の抱える罪悪感はきっととても深い。

「リルには俺からリアの事情を説明しておく、難しく考えなくていい。ただ一度会うだけだ。クッキーのお姉さんが君だと知ったら、リルはきっと喜ぶだろう。いつも君からの手紙を楽しみにしていたから」

 リアはようやく頷いて言った。

「会います。妹に――リルに会いたいです」

 

 

 

 その頃リルはリアに手紙を書いていた。毎日のようにクッキーと手紙を届けてくれる魔道具の鳥に、返事を書いて渡すためだ。

 リアお姉さんはとても綺麗な字を書く優しいお姉さんだ。いつか会ってみたいと思っていた。リアが本当の姉であることを知らなくても、リルはリアが自分の姉だったらいいのにと思っていた。

 だって彼女は『みちるちゃん』のお姉ちゃんによく似ているのだ。クッキーが得意なことも、運動が好きなことも、『みちるちゃん』が大好きだったお姉ちゃんによく似ている。

 リルはリアお姉さんに、拠点に遊びに来て欲しいと書いた。

 書き終わった手紙をカゴに入れて、魔道具の鳥に渡す。

 

 リルはこの願いが予想外の形で叶うことを、まだ知らなかった。

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