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30.子ウサギ

 草食の子たちのための温室は、順調に稼働していた。

 今日もシカとウサギが温室の近くのあったかスポットに集まっていたので、リルは野菜と果物を出してあげる。食べやすくナイフで切るのも忘れない。

 巣にいる仲間に持って帰りたいという子もいる為、それ用のカゴも用意した。カゴの事は他の拠点にも周知されたらしく、みんな今年の冬は飢えることなく過ごせそうだということだ。

 

 リルは毎日巣に沢山お持ち帰りするウサギがいた事に気づいていた。白い毛皮のウサギで、ウサギ内では地位の高い子らしい。リルはあまり気にしていなかった。

 

 しかし、今日温室近くのあったかスポットには、白い毛皮のうさぎの他に子ウサギが三匹居たのである。

 リルはあまりの可愛さに大興奮した。

 聞けば、妊娠しているウサギにずっと食料を届けていたらしい。

 子ウサギは生まれて二週間ほどで、今日から少しずつ母乳以外も食べ始めるそうだ。

 目の開いたばかりだというウサギは本当に小さくて愛らしい。

 あったかスポットで元気に歩き回って、シカ達にちょっかいを出している。シカも特に気にしていないようで、遊ばせてやっている。

『子供が見たいと言っていたから連れてきたんだ。暖かいここで育ててもいい?』

 白ウサギがそう言うので勿論オーケーだと返した。寒さで弱ってしまったら大変だ。

 

 今日は初めて母乳以外のものを食べるらしく、野菜に興味津々だった。リルは食べやすいようにレタスの柔らかいところを細かくちぎってあげた。

『おいちい』

まだ上手く喋れないらしく、一生懸命口を動かしながら食べては美味しいと言っている。あまりの可愛さに言葉が出なかった。

 ちょっと食べたらお腹一杯になってしまったらしい。母ウサギの近くに行って眠る体勢になった。いつまでも見ていられる気がする。

 

 異変に気づいた他の神獣たちも近づいてくる。みんなで赤ちゃん見学会だ。

『ウサギの赤ちゃんも可愛いね』

『僕らも少し数を増やそうか?』

 是非増やして欲しいとリルは思った。

 

 子供を横目に見ながら、リルは日誌を書き始めた。これは国から与えられたリルのお仕事だ。神獣たちの様子を観察して記録するのである。内容は完全に子供の絵日記だが、リルが子供であることは国もわかっているので問題ない。

 ただリルは『みちるちゃん』の影響で異様に絵が上手いので、最初に見たイアンは驚いていた。地下にいた時、いつも指で壁に絵を描く真似をしていた話をマロンとしたため、イアンはとても悲しそうだった。後日リルの為に沢山の画材をプレゼントしてくれたので、今はよく神獣たちの絵を書いている。

 最近文通を始めたクッキーのお姉さんにも神獣の絵を描いて送ったら、とても褒められた。

 

 リルは日誌を書いた後、子ウサギを沢山スケッチすると満足した。

 今日からこの子ウサギの成長を見守れるのが嬉しい。

 スケッチしている内に子供たちも起きたので、みんなで追いかけっこをして遊んだ。

 

 

 

 遊び疲れて休憩している時、リルは思っていたことを聞いてみることにした。

「ねえ、ライオンさんと銀狼さんとクマさんはどうして滅多に拠点に来ないの?」

『森の見回りという大事な仕事があるからね。人間は冬場森には近づかないけど、魔物もいるし広いから管理するのが大変なのよ』

 琥珀が教えてくれた。そうか、森を守ろうとしてるのは騎士たちだけでは無いのかと、リルは感心した。今度来たら労ってあげようと思う。

 しかしよく考えたら、確かに拠点に来るのは弱い子達が多い。ヒョウとトラという例外はいるが、彼らは拠点では眠っていることが多い。案外夜に見回りをしているのかもしれない。

「みんなお仕事大変なんだね」

『リルだって最近は沢山お仕事しているじゃないか。こんなに働いてる六歳児はリルぐらいだよ』

 確かに、日誌を書いたり神獣たちとお話しするのはリルのお仕事だ。

 でもとてもとても楽しいお仕事なので苦痛では無い。

「私、とっても幸せだね」

 リルはマロンと琥珀と笑いあった。『通訳者』であってよかったとリルはスキルをくれた神様に感謝した。

 

「ライオンさんたちも、たまにはお休みして遊びにこられたらいいのにね」

 リルは働き者のライオンたちにお休みを作ってあげる方法を考えたが、上手い方法は見つからなかった。

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