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27.初めての外出

「お買い物?」

 リルはイアンの言葉にキョトンとしてしまった。

「そうだ、一緒に街に行ってお買い物しよう」

 リルはその言葉を理解するのに少し時間がかかった。お買い物なんて今まで一度もしたことがなかったからだ。

 イアンはリルに体力がつくのを待っていた。最近は神獣たちとの遊びのおかげで体力がついてきたので、そろそろ良いかと思ったのだ。

「お買い物、行っていいの?」

 意味を理解したリルはワクワクした。ショッピングは楽しいものだと『みちるちゃん』も言っている。

「もちろん、リルが好きなものを買いに行こう」

「やったー!楽しみ!」

 リルは飛び跳ねて喜んだ。初めての買い物だ、何を買おうか考える。

 

 イアンは買い物に行く前に、リルにそれぞれのお金の価値と使い方を教えた。そしてリルのカバンに銅貨を沢山と小銀貨を少し入れてやる。リルは計算が得意だから、きっと予算内で上手に買い物できるだろう。お金に関する教育ではイアンはリルを甘やかすつもりはなかった。

そしてリルに、街では絶対に自分から離れないようにと言いつける。リルはしっかりと頷いた。

 

 街には神獣は連れて行けないらしい。リルはそれだけが悲しかった。なんだか途端に不安になる。

『不安に思うことなんてないさ、お父さんがいるだろう?帰ってきたら沢山話を聞かせておくれよ』

 マロンと琥珀はリルを慰める。

 

 馬に乗る準備をしていると、神獣たちが集まってくる。

『お出かけ?』

『どこに行くの?』

「あのね、お父さんと街に買い物に行くんだよ」

 みんなリルを応援してくれた。

『行ってらっしゃい!』

 神獣たちは総出でリルのお見送りをした。

 

 

 

 イアンと一緒に馬に乗って街に向かう。リルは馬に乗るのは初めてで少し怖かった。

 街に到着するとリルは感動した。思っていたよりずっと大きな町だったのだ。

 イアンいわく王都との中継地点の街らしい。王都はもっと大きいのだそうだ。

 イアンは人混みの中をリルを抱き上げて進む。リルがあまりにキョロキョロとして危なっかしかったからだ。視界が高くなったリルには店の様子がよく見えるようになった。何やら美味しそうなものが沢山売っている。ここは食品が多いらしい。

 

 イアンはゆっくりと歩いて、やがて日用品を多く売っている通りに出た。リルは可愛らしい雑貨屋さんやおもちゃ屋さんを見つけて大騒ぎだ。

 どこを見ても目移りしてしまって何を買うかなかなか決まらない。でもリルには一つだけどうしても欲しいものがあった。

「ねえお父さん、ブラシを売ってるお店あるかな?」

「ブラシ?……神獣用か?」

 イアンは思わず笑ってしまった。一番欲しいものがそれなのは流石に予想外であった。

 イアンは動物関連の物を売っている店にリルを連れていく。この辺りでは一番大きな店だから、きっとリルの気に入るものが見つかるだろう。

 

 リルは店内に入って感動する。ブラシだけでなくみんなが好きそうなおもちゃなども売っていて、つい衝動買いをしそうになった。

 リルはまずブラシを見る。神獣は色々な大きさがいるのでかなり悩む。イアンにも相談して三種類のサイズのブラシを買うことに決めた。

 その後おもちゃも見てみる。前に遊んだフリスビーや音の鳴るボールなど、色々あって悩んでしまった。結局値段の安いボールを数種類買ってお土産にすることにした。


「上手に買い物出来たな」

 お会計をしてイアンに頭を撫でてもらうと、なんだか誇らしい気持ちになった。お金を払う時はちょっと緊張したのだ。

 

「次はリルの欲しいものを買おうな」

 イアンはまたリルを抱き上げて先程の通りを歩く。リルは悩んだ。お人形も可愛いし、アクセサリーも可愛い。悩んだ末に綺麗な絵の書いてある小箱を買った。宝物入れにするのだ。

 イアンは実用的なものを買ったリルに感心する。子供は玩具を選ぶものだと思っていたからだ。

 だがリルらしいのかもしれないと思い直す。だってリルはひとり遊びをすることがない。いつも沢山の神獣がそばに居るのだから。

 

 帰りに屋台で売っているお菓子を買って二人で食べた。

 そしてリルの初めての買い物は終了したのである。

 初めてのことで疲れたのだろう、リルは帰りの馬の上で眠っていた。

 


 

 拠点に帰ると神獣たちが総出でお出迎えしてくれた。リルを起こすと、リルは眠っていたことも忘れて神獣たちの元に報告に行く。

 イアンはそんなリルを微笑ましく見守った。

 

 リルは買ってきたボールを取り出すと、みんなで遊ぶ。初めてのお買い物はリルにとって大成功だった。

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