表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/118

25.あったかスポット

 今日は神獣達のためのあったかスポットを作る日である。張り切ったリルは早起きした。寝ぼけ眼のマロンを起こしていると、大きな風の音がした。昨日と同じ音だ。

 気づいたリルは玄関に走る。思った通り、ドラゴンのお爺さんが居た。

『おはよう、リルよ。冬支度の費用の足しになればと思い、これを持ってきたぞ』

「おはようございます!なんですか?これ?」

 リルはドラゴンの差し出した真っ黒な大きな石を不思議そうに眺めた。

『それは人間が好む鉱石だ。森の奥深くにしか無いのでな、人間の世界では希少価値が高いものだ』

「そんな希少なもの、貰っちゃっていいんですか?」

 リルは心配になって聞いた。

『なに、人間の世界では希少と言うだけだ。私の住処には沢山ある。神獣のために住み良い環境を提供してくれると言うのだ。最古のドラゴンとしてこれくらいの礼はすべきであろう』

「ありがとうございます。お金を出してくれた人に渡しますね」

 ドラゴンはそうしてくれと言うと、また空高く飛び立った。

 

「リル、ドラゴンは何の用事だったんだ?」

 気がついたらリルの後ろに騎士たちが揃っていた。

「お父さん。あのね、神獣のための冬支度の費用の足しにしてくれって、これを貰ったの。お金を出した人に渡すって約束しちゃった」

 イアンは石を見て頭を抱えた。費用の足し所では無い。この鉱石一つで同じものが百は作れる。これは間違いなく伝説のオリハルコンだ。ドラゴンの巣にしか存在しないと言われる石だ。

 とりあえず早急に国に持って行ってもらおうと、イアンは決めた。

 

 

 

 さて、ドラゴンの来訪があったが、今日の目的は床暖房の設置である。まずは三十センチくらいの深さの大きな穴を掘るらしい。

 リルはスコップで頑張って穴を掘った。穴掘り名人のウサギたちが小さな前足で一生懸命手伝ってくれる。

 浅い穴を掘るのは加減が難しくて結構大変だった。

 

 次はその穴に砂利を敷く。十センチ位が、小さな砂利で埋まった。

 そうしたらそこに、何かの箱に繋がったパネルを並べる。パネル同士も繋げることが出来て、一つずつ繋げながら敷いてゆく。

 聞いたら箱はスイッチと制御装置らしい。そしてパネルが暖かくなるのだそうだ。夏は涼しくもできるらしい。

 

 仕上げにパネルを敷いた穴にセメントのようなものを流し入れる。固まったら完成だ。

 今回も一時間程度で固まるようだ。みんなソワソワしながら待っている。

 

 

 

 固まるのを待つ間、リルはみんなでおやつタイムにすることにした。

 昨日のドラゴンが持ってきてくれたお肉が沢山あるので、ミレナがせっせと燻製にしてくれたのだ。

 草食組には木の実で申し訳ないが、みんなで食べることにした。

 濃厚な味のする燻製は琥珀の大好物だ。普通のお肉より好きらしい。

 

 昨日会った子ヒョウたちは二匹で燻製を取り合っている。母ヒョウに叱られてションボリしていたので、二個分けてあげた。

『ありがとう』

『やったー』

 甘やかさないでちょうだいと母ヒョウに叱られてしまったが、可愛かったからしょうがないとリルは思う。

 

 ヒョウの子供たちを見たロザリンとグロリアが可愛いとはしゃいで、触らせてもらっていた。

 やっぱりかわいいは正義だと『みちるちゃん』も言っている。

 

 

 

 セメントのようなものが乾くと、そこは白い大理石を敷き詰めたようになっていた。リルは思わずメイナードの方を見てしまう。

「ははは、不思議だよね。魔法がかけてあって、乾くと色が変わるんだよ」

 なんだかとても高級感のある質感になっていて、魔法ってすごいなとリルは思った。

 リルはメイナードに言われるまま制御盤のスイッチを押した。

 すると、稼働したらしく制御盤が光っている。

 どれ位で暖かくなるんだろうとワクワクしながら石床に手をついた。

 神獣たちもみんな石床に乗ってくる。するとだんだん暖かくなってゆくのが分かる。それはちょうどいい温かさだった。

 神獣たちが石床の上で溶けている。かなりホカホカで気持ちいいらしい。

 冬場は毛布なんかを持ち込んでもいいかもしれない。あとでお願いしようとリルは決めた。


『これ最高だよー』

『ずっとここに居たい』

 好評すぎてみんなここから離れないかもしれない。

 特にネコ科の子達は大きいのにかなり気に入ってしまったようだ。

 みんな巨大な団子のようになって石床の上にいる。

「これは増設が必要だな……」

 イアンが呆れたような声で言った。

「そうだね、お父さん」

 冬が来る前にもう一回頑張って作ろう。騎士たちとリルは、神獣たちを眺めながら思った。

ブックマークや評価をして下さると励みになります。

お気に召しましたらよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ