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24.ドラゴン再び

 それは早朝のことだった。リルは大きな風の音で目を覚ました。

 マロンと琥珀も起きて首を傾げる。

『この気配は……リル、急いで外に出ましょう』

 何やら琥珀が慌てている。

 リルは緊急事態だと思って、急いで着替えて外に出た。

 

 そこに居たのは以前琥珀を送り届けてくれたドラゴンだった。

『すまないな、ゆっくり降りたつもりだったが、翼の音で起こしてしまったか?』

「大丈夫です。また来てくれてありがとうございます」

 リルは丁寧にお辞儀をした。このドラゴンは千年以上生きている大先輩だということを思い出したのだ。

『最近銀狼たちの噂で、ここが神獣たちの憩いの場になったと聞いてな、様子を見に来たのだ。ここにあるのは手土産だ受け取ってくれ』

 そこにはリルの数倍大きな魔物の死体があった。リルはあまりの大きさに驚いてしまった。

「ありがとうございます!」 


 ドラゴンはぐるりと玄関前の広場を見回すと笑った。

『また短期間で様変わりしたものよ。人間の技術力はこれだから侮れぬ』

「聖騎士のメイナードさんがほとんど作ってくれたんです!みんなで使える水飲み場と、アスレチック、温室もあります!」

 リルが簡単に説明するとドラゴンは上機嫌で言った。

『ほう、そうか。どれ、この老いたドラゴンに詳しく教えておくれ』 

 リルは喜んで説明した。朝から遊びに来ていた神獣たちも加わって、アスレチックがどれほど楽しいか一生懸命説明してくれた。

 ドラゴンは優しげに目を細めてそれに聞き入っていた。

 

『ここ数百年はなんの動きもなく退屈していたが、久しぶりに楽しめた。礼を言うぞ、リル』

「退屈ならいつでも遊びに来てください。明日は冬に備えて地面を暖かくする魔道具を設置するんですよ!」

 リルが言うとドラゴンが驚いた。

『そんな魔道具まであるのか、人間はやはり面白いことを考えるのう……しかし、神獣たちのためにここまでしてくれて感謝するぞ。弱き者たちはこれで安心して冬を越せるだろう』

 リルは嬉しくて笑った。自分のした事は間違ってなかったとそう思えたからだ。

 

『ウィルスの奴が死んでから『通訳者』が現れなかったからの、どんどん人間と神獣の距離が開いていくのを憂いておったのだ』

 そう言ったドラゴンは悲しげだった。ウィルスとは初代国王の事だ。きっと仲の良い友人だったのだろうとリルは悲しくなった。

『リルはまだ若い。後数十年は退屈せずに済みそうじゃ。どうかまた神獣と人間が共にあれるようにしておくれ』

「まかせてください!」

 リルは気合を入れて両手を握る。ドラゴンは大笑いした。

 

 そして好々爺のドラゴンは去っていった。またすぐ来ると言ってくれてリルは嬉しくなった。

 

 

 

 リルはドラゴンを見送った後、すぐ騎士たちに事情を聞かれた。

 どうやら途中からずっと見ていたが、楽しそうだったので間に入らなかったらしい。

 様子を見に来てくれただけだと言うと、騎士たちは安堵していた。

 貰ったお土産を指さすとみんな大興奮していた。

 この魔物は森の奥のさらに奥、秘境と呼ばれる場所にしか居ないのだそうだ。とっても珍しいものをくれたのだなと、リルは改めてドラゴンに感謝した。

 

 

 ドラゴンが帰った後、リルは朝から遊びに来ていてくれた子達と改めて遊んだ。みんなもドラゴンに会えたことが嬉しかったらしく、口々にカッコよかったと言っている。神獣の間でもドラゴンは憧れの的な存在なのだろう。リルは聞いてみた。

「ドラゴンは沢山いるの?」

『いないよ』

『五匹だけだよ』

 さらに聞くと、ドラゴンは世界に五匹しか存在することができないらしい。神獣たちの数も増えすぎないように神様が制御してるのだそうだ。

『だから神獣はあまり子供を産まないわ、銀狼族なんて私が一番若いくらいだもの』

 確か琥珀は四十歳位だったはずだ。リルは驚いた。

「残念、いつか神獣の子供が見られると思ってたのにな」

 それはきっと可愛いだろうと考えていたのだが、あまり生まれないのなら仕方ない。

 

 みんなと鬼ごっこをして遊んでいたら、ヒョウが何かを二匹連れてやって来た。小さいヒョウだ!リルはあまりの可愛さに感動した。

『子供が見たいと言ったから連れてきたわ』

 子ヒョウは二匹とも母親の後ろに隠れてしまっている。緊張しているようだ。

『考えてみたら、森よりここの方が安全なんだから、連れてきても良かったのよね』

 子ヒョウは生まれて三ヶ月ほどらしく、タヌキと同じくらいの大きさだった。三ヶ月でこんなに大きくなるのかと感動した。

「はじめまして、リルだよ」

『はじめまして』

『こんにちは』

 挨拶すると、母親の後ろに隠れたまま返してくれる。

 抱っこしてモフモフしたい。リルは必死にその衝動と戦っていた。

「そうだオヤツがあるよ」

 リルはポーチの中からジャーキーを取り出した。みんなで食べようと思っていたおやつだ。

 リルはジャーキーを振って二匹を呼び寄せる。誘惑に抗えなかったらしい二匹は近づいてきてくれた。

 二匹はジャーキーの匂いを嗅ぐと食べ始める。もぐもぐ動く口が可愛い。

「触ってもいい?」

『いいよ』

『しょうがないな』

 ジャーキーで仲良くなれたようだ。リルは二匹を一緒にモフモフする。本当に可愛くてしょうがなかった。

 会わせてくれたお母さんヒョウに、ありがとうと言ってジャーキーをあげる。今度からは毎回連れてきてくれるらしい。

 リルは嬉しかった。

 

 二匹とも他の神獣たちと挨拶している。小さい子たちがお話ししている光景はやはり可愛い。リルはその光景を見て和んだ。

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