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23.姉妹

 その日は朝早くから来客があった。リヴィアンとマーリンである。リルはあまりにも早い時間の訪問に何かあったのかと心配になった。

 リヴィアンは大丈夫だと笑ってリルの頭を撫でてくれた。今日もリヴィアンはイアンに用事があるらしく、リルはマーリンたちと遊ぶことにした。

 

 

 

「それで、どうしたんです兄上。こんな朝早くから」

 リヴィアンは暗い顔でため息を吐きながら言った。

「聖女を保護した」

 イアンはカップを落としそうになる。聖女はリルの双子の姉だ。驚愕した目のまま続きを促す。

「彼女、逞しすぎるよ。自分で自殺を偽装して逃げようとしたんだよ。信じられるかい?『透視』のスキル持ちに見張らせてなかったら保護できないところだったよ」

 それはとんでもない話だとイアンも思った。

「彼女は賢いなんてもんじゃない、冷静だし客観的に物事を判断できるし、地に足が着いている。どこかの政治家と話している気分だったよ。話が早いにも程がある」

 イアンは優秀な兄にここまで言わせる彼女は一体何者なのかと考える。返す言葉が見つからない。


「でも、リルの話をした時だけは泣いていたよ。生きていると知って喜んでいた。でもリルに合わせる顔がないと言っていてね。保護されていることは秘密にして欲しいそうだ。彼女には、きっとまだ時間が必要だ」

「そうですか……一応、リルにもう一度姉について聞いてみます」

 リヴィアンはそうしてくれと言うとお茶に手をつけた。その表情はどこか暗い。

 

「何かありましたか?兄上」

 イアンは兄のいつに無い様子を心配していた。

「ああ聖女――リアと名付けたのだけど、どう接するべきか困っていてね。本当に子供らしくない子供なんだ。玩具をあげようとしたら、それより書物が欲しいと丁重に断られたよ」

 リヴィアンはさらに深くため息をついた。

「オマケに可愛いドレスを買ってきたのに着たがらないんだよ。脱走の時に男の子の格好をしたのが気に入ったみたいで、スカートを拒否するんだ。性別を偽った方がバレるリスクが減るだろうと僕を丸め込もうとする始末だ」

 

 兄がここまで悩んでいるのは珍しいと、イアンは瞠目した。

「時間が必要なのでは無いですか?リルも子供らしさが出てくるまでは少し時間がかかりましたし」

「そうかな?リルと一緒ならしっかり者のお姉ちゃんと無邪気な妹って感じでいいと思うんだけど、本人が拒んでるからなぁ……はあ、やっぱり中々上手くいかないよね、子育てって」

 イアンは兄の子供達を思い浮かべる。確かに兄の子達はみんな跳ねっ返りだった。

「まあ、リルのためにも頑張ってください」

「他人事だなぁ……」

 リヴィアンはお茶を一気に飲み干すと、今日はもう帰るよと言って去っていった。

 リアのことを報告しに来ただけだったらしい。

 

 

 

 その日の夜、イアンはリルに聞いてみた。

「リルはお姉ちゃんに会いたいと思うか?」

 リルは少し考えた。

「会えるなら会ってみたい!でも嫌われてるかも……」

 沈んだリルにマロンが言った。

『リル、ミレイユは自分に妹がいるなんて知らなかったんだよ。だから嫌われてるはずがないさ』

 リルは驚いてマロンを見た。

「そうだったの!?」

 リルはずっと家族みんなが自分を嫌っているのだと思っていた。でも違ったのだ。

「それなら会いたいな。ずっとお姉ちゃんに会ってみたかったの」

『ミレイユはいいヤツだよ、前にクッキーをくれたんだ。屋敷のメイドはみんな僕をみるとホウキを持って追いかけてくるのにさ』

「そっか優しい人なんだね、会えたら仲良くなれるかな?」

『きっとなれるさ!』

リルは嬉しそうに笑った。

 そうか、とイアンは会話を打ち切った。これを伝えたらリアはリルに会おうと思うだろうか。

 

 時間がかかってもいい、二人が姉妹としてやり直せるといいなとイアンは思った。

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