21.冬支度
最近、リルのお仕事に落ち葉掃除が加わった。急に寒くなってきて、もうすぐ冬が訪れる。拠点は広大な敷地に建てられているので、落ち葉掃除は大変である。毎日山のような落ち葉が集まる。
リルが箒で落ち葉を集めていると、ヘイデンが芋を持ってやって来た。これも最近恒例となりつつある。
一生懸命集めた落ち葉で焼いた焼き芋は格別に美味しいとリルは思っている。
芋を焼いていると、神獣たちが集まってくる。寒いからみんな焚き火に当たりたいのだ。今でこんなに寒いなら冬場の神獣たちのためになにか用意した方がいいかもしれないとリルは考えた。
何がいいだろう。コタツ?パネルヒーター?『みちるちゃん』の記憶から良さそうなものを探した。床暖房、これは良いかもしれない。雪かきの手間も省けて一石二鳥だ。
そんな魔道具が作れるだろうか。後でメイナードさんに聞いてみようとリルは思った。
「よーし焼けたぞ、食べよう」
焼きあがった焼き芋はとても美味しそうな匂いを放っている。リルは半分に割ると、神獣たちにも分けてあげた。特にキツネは焼き芋が大好きだ。
ヘイデンも多めに焼いた焼き芋を神獣たちのために解してやっている。最近ヘイデンは神獣たちに美味しいものをくれる人と認識されているらしく、何も持って居なくても擦り寄って来てくれるようになったと喜んでいた。
焼き芋はちゃんと中まで火が通るように、蒸してから焼いているので中はホクホクだ。
リルはいちばん美味しい所は沢山食べられないマロンにあげた。琥珀は一本まるまる食べている。
リルがこの拠点で暮らすようになって二ヶ月ほどたった。ここでの暮らしにもすっかり慣れた。最近は沢山食べられるようになってきて、少し大きくなった気がしていた。リルはとても幸せだった。
拠点の中に戻ると、メイナードを探す。神獣たちのためのあったかスポットの相談だ。
メイナードは食堂でお茶を飲んでいた。
リルは早速相談すると、地面に埋め込む暖房の魔道具があると教えてもらった。貴族のお屋敷の庭でよく使われるものらしい。
二人でイアンに相談しに行った。
イアンが言うにはこの拠点は、神獣との友好のためのモデルになっているそうだ。だから大抵の許可は下りるだろうということだった。リルは嬉しくなった。ほかの拠点でも神獣たちと聖騎士が仲良くなれればいいなと思った。
魔道具が届くのは早くても三日は掛かるだろうと言うことだ。むしろそんなに早く届くのかとリルは驚いた。この世界の物流はどうなっているのだろう。
騎士たちが見回りに行った後、リルは庭でみんなに暖かい魔道具が届くことを説明していた。みんな嬉しそうにしている。冬に会えなくなってしまうのは寂しいから、拠点をどんどん快適にしていこうと決めた。
今日の留守番のメイナードがリルの元に走ってくる。何でも床暖房を敷く場所に屋根を設置するのだそうだ。リルは魔法でお手伝いすることにした。
『がんばれー』
神獣たちが応援してくれる。リルは言われるがままに木を切った。かなりの数だった。雪が勝手に落ちるように傾斜のキツイ斜めの屋根にするらしい。不思議な屋根だなとリルは思った。
切った木を前回のように地面に埋め込んで柱を作る。そこに板を張って屋根を作ってゆく。傾斜が急な屋根の上に乗って作業をするメイナードをハラハラしながら見守った。そして騎士たちが帰ってくる頃、あったかスポットの屋根が完成したのである。
帰ってきたイアンは頭を抱えた。また大きな建造物が増えている。神獣たちが喜んでいるので別に悪いことでは無いのだが、せめて許可をとってからやって欲しいと思う。おそらくメイナードの中では床暖房の話をした時に、それ関連をすべて許可された事になっているのだろう。
最近、メイナードはなぜ騎士になったのかと疑問に思うイアンだった。
その日の夕食、リルは魔力を沢山使ったのでお腹が空いていた。いつも以上に沢山食べるリルを見てみんなホッとした。
もうリルがここに来てから季節がひとつ変わるのだ。随分長い間一緒にいたような気もするが、まだ二ヶ月程度しか経っていない。その間色々なことがあり過ぎた。
リルがいなかった頃の拠点が思い出せないくらい、リルが中心の生活に変わってしまっていた。
もうすぐ冬になる。冬になると森は雪で閉ざされ、人の出入りが困難になるので、もっとリルと一緒にいてあげられるだろう。
イアンはその時が待ち遠しかった。
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