試練の洞窟
リル達はトラの案内で試練の洞窟へ向かった。
『おおここだ。昔ウィルスを送り届けた場所だ』
シドーは小さくなると、リルの腕におさまった。
「よし!お宝ゲットだよ!おー!」
リルが叫ぶと、四人で腕を突き出して歩き出す。琥珀とマロン、たぬたぬにタッキー、ナツもそれについてくる。ハルキがライトを持ってきているので暗い洞窟の中も難なく進むことができた。
「この奥、なんか光ってない?」
洞窟が途中で二手に分かれていたのでどちらに行こうか悩んでいると。リアが目を凝らして奥の方を指さした。ハルキが手持ちの明かりを消して道を確かめると、本当に光っている。
「光ってるってことはなんかの魔道具があるんじゃない?行ってみよう!」
こういう時に臆さないのはアナスタシアだ。真っ先にずんずん奥へ進んでゆく。
「この洞窟すごいな。生き物が全然いない……普通虫くらいいるだろ」
ハルキがあたりを見回しながら言うと、リアもそれにならった。
「本当だ。気がつかなかった。魔法かな?」
「虫よけの魔道具、いらなかったかもね」
リルがリュックに取り付けられた虫よけの魔道具を指して言う。ちなみにリルのリュックには、イアンが森を歩くために必要なものを詰め込んである。リルが大きくなってもイアンは過保護だ。
「ついたー!お宝あるのってここじゃない?」
最前を歩いていたアナスタシアが叫ぶと、三人は慌ててアナスタシアを追いかける。そこは真っ白な明かりで照らされた広い部屋だった。床は格子状のガラスで組まれていて、奥の檀上にこれ見よがしに真っ赤な宝箱が置いてある。
「……いかにもお宝ありますって感じだね」
「こんなにあからさまだと逆に罠だと疑いたくなるな」
リアとハルキは呆れているが、アナスタシアとリルと神獣達は楽しそうだ。
「見て、お姉ちゃん。床踏んだら光ったよ」
「待ってリル。危ないかもしれないから、それ以上動かないで」
リアはリルを止めると、あたりを見回す。そして入り口の横に付けられた日本語の案内板に気がついた。
「すべての床を光らせろ。……これもしかしてただのパズル?」
リルが踏んでいる床はその四方の床も光っている。要するに踏んだところを中心に十字に光るため、すべての床を光らせるには少々頭をひねらなければならない。
「……挑戦者の知恵と勇気を試す洞窟、だっけ?」
ハルキが呆れたと言わんばかりに座り込んだ。そこに先ほどまでリルに抱かれていたシドーが飛んでくる。シドーと入れ替わりでナツがゲームに参加しようと駆け出した。
『だから言っただろう。命が危険にさらされるようなものはないと』
魔法で空中に文字を書いたシドーはハルキの隣に座り込んだ。そこにたぬたぬを置いてきたリアもやってくる。
リルとアナスタシアは答えを考えながら床を踏んで楽しそうにしている。四人について来ていたそれぞれのパートナー達も一緒に遊んでいるようだ。リアはその光景を眺めながら湯を沸かしてお茶を入れた。
「リアちゃんは参加しないのか?」
「いいです。リルが楽しそうなので」
二人でゆっくりお茶を飲みながら話すのは教団のことだ。
「リルもアナスタシアも、平気そうにしてるけど結構堪えてると思うんです。私は前世が警察官だったので、荒事には多少耐性がありますけど二人はそうではないので……だからこの宝探しはいい息抜きになると思います」
「……リアちゃん、俺も一応一般市民なんだけど俺のことは心配してくれないの?」
「ハルキさんは……ほら、ある意味最強じゃないですか。魔道具で全身武装してるでしょう?」
「まあいいけどさ。……うーん。教団を壊滅させる手立てを考えないといけないよな」
「そうですね……でも今はゆっくりこの宝探しを楽しみましょう」
二人はあーでもないこーでもないと言いあっているリルとアナスタシアを見る。ときおりたぬたぬが勝手に床を踏んでしまうため、難航しているようだ。
ハルキとリアが休憩に飽きてきたころ、やっとパズルは完成した。
「やったー!これで宝箱が開くよ!」
みんなが宝箱の方を見ると、ゆっくりと宝箱の蓋が開いた。
「自動開閉かよ」
ハルキの突っ込みを無視して、リルが壇上の宝箱から緋色の珠を取り出した、
「やったー!一つ目ゲットー!」
手を取り合って喜ぶリルとアナスタシアに、リアとハルキは拍手を贈った。
「これを六個集めて台座にはめるんだよな。よし、あと五個頑張るか!」
全員は来た道を入り口まで戻ってゆく。入り口で待っていてくれたトラにお別れすると、次の場所に向かった。




