宝探し
「リル、ちゃんと日焼け止めは塗った?」
今日は転生組で宝探しに行く日だ。今日はひとまず拠点近くのお宝を回収しようということになった。
シドーの住処の近くにあるというので、ついでにドラゴンの巣にもお邪魔するつもりだった。
「うん、準備万端だよ、お姉ちゃん!」
「シドー様。リル達をよろしくお願いします」
イアンがシドーに頭を下げると、シドーはリルの腕の中で鷹揚に頷く。
『任せろ。森の中なら私が居れば大した危険はないだろう』
今日はジャスティンとキンバリーは休暇だ。護衛組はなかなか休暇をとれないのでちょうどいいとイアンが決めた。
宝探しをしている間は長期休暇になるだろう。ジャスティンはやりたいことがたくさんあるらしく上機嫌だった。
「気を付けて行って来いよ。シドー様にあんまり迷惑かけるんじゃないぞ」
ジャスティンの発言は完全に親目線だ。小さい頃からリル達の成長を見守ってきたせいだろう。
「うん、行ってきます。ジェイお兄ちゃん」
四人はシドーの背に乗るとドラゴンの巣めがけて飛び立った。ドラゴンの巣にはリジェネのものにしか行ったことがない。そこも見たことも無い鉱石や美しい宝石の原石が並ぶ幻想的な場所だった。
シドーいわくリジェネほど華やかな巣には住んでいないらしいがそれでも見るのが楽しみだった。
『さあ、ここが私の巣だ』
拠点側の森の中だが、この森はこんなに深かったんだなと四人は驚いた。森の最奥の景色は、四人が知る森の中と少し様子が違う。手つかずの自然と言った感じだ。
『茶の一つも出せず申し訳ないが、私は普段はここで暮らしている』
その場には大きな洞窟があった。奥を覗いてみると、前に伝説だと言われていた鉱石がたくさん埋まっていた。黒い鉱石が鈍く光ってなかなか幻想的な場所だった。
「いいお家だね。綺麗な水場もあって住みやすそう」
『そうだろう。ここを見つけた時は嬉しかった。住んでいたら愛着もわいてきてな。引っ越す気にはなれないのだよ』
「お宝はこの近くなんでしょう。シドーさんは場所を覚えてますか?」
アナスタシアが地図を見ながら言うと、シドーは小さくなってリルの腕に抱かれながら道案内をしてくれる。
『一つはここに隠したはずだ』
そこは森の中では珍しい、石以外何もない平地だった。明らかに人工的に作られた場所だ。
「なんだこれ?ミステリーサークル?」
その場所は石で円が描かれていた。中央には石碑のようなものがある。ハルキは楽しそうに石碑に近づいてゆく。
「わ、日本語だ。最後の謎。定められた順に六つの宝石をはめろ。だってさ」
「……もしかして、ここ最後に来る場所なんじゃない?だって宝石なんて持ってないし」
四人は顔を見合わせて考える。シドーは申し訳なさそうにしていた。
『すまんな、宝を隠す時手伝ったのだが、私は目的地までウィルスを運んだだけだったから詳しい内容は知らんのだ。他の場所に向かおう』
リアが地図を見つめて考える。
「じゃあ、お城の近くの森に行こう。遠いところから回っていく感じで」
四人は再びシドーに乗って飛び立った。
移動中シドーは地上に居る人に気づかれない魔法を使っていると教えてくれた。確かにドラゴンが空を飛んでいたら大騒ぎする人もいるだろう。
ドラゴンが理由なく人間を傷つけることは無いと知っていても、怖いものは怖いのだ。
城の近くの森にたどり着くと、昔会ったトラが出迎えてくれた。顔に少し傷が残っているからすぐに分かる。どうやらシドーの気配を感じて駆けつけてくれたらしい。
『ドラゴン様、通訳者。本日はどのようなご用件で?』
前は尊大な態度だったトラは、シドーが居るからか畏まっている。
「宝探しに来たんだよ。初代国王ウィルスさんが隠した宝物を探しているの」
リルが言うと、トラは納得したように頷いた。
「試練の洞窟のことか、人間達には存在を隠すようにと、我々の間で伝わっている。いずれ宝を手に入れる資格を持った人間が現れるまではと。それがお前達の事か」
神獣達は、宝の隠し場所を知っているらしい。試練の洞窟と聞いてリルは楽しそうだと思った。