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反撃

「すごい!リアの予想大当たりだね!活動期で儲けた貴族って本当に居たんだね」

 ジャスティンいわく、軍部に属する黒い噂の絶えない貴族らしい。しかしいつも証拠不十分で捕まらないのだそうだ。前に違法薬物の売買に関与したとして調べられた事もある。

 名をダライアス・ブラウンというらしい。アナスタシアは聞き覚えのある名前に首を傾げた。

「ダライアス……どっかで聞いたことあるな、誰だっけ?」

 少し考えて、アナスタシアは思い出した。

「そいつ、私の求婚者の中に居たよ!かなり前から、何通も手紙が届いてる」

 現当主のダライアスは、当主の座を継いだばかりでまだ若いらしい。愛し子に求婚しておいて襲撃を企てるとは中々のタヌキだとアナスタシアは唸る。

「まあ、待て。まだそいつが内通者だと決まったわけじゃない」

 ジャスティンは今にも飛び出していきそうなアナスタシアを宥める。特に今回はなんの証拠もないのだ、捜査しようがない。

 

『なら、僕がそいつの屋敷に侵入しようか?僕はネズミだから警戒されないし、字も読める、きっと証拠を持ち帰って見せるよ』

 マロンの言葉にリルは危ないからダメだと声を上げる。

 突然声を上げたリルにみんな何事かと問いかけた。リルがマロンの言葉を通訳すると、リアがそれはいいかもしれないと賛同の意を示す。

 リルは珍しく怒ってリアにくってかかった。しかし、マロンの周りに他のネズミ達が集まってきて、次々に自分も協力すると訴える。

 あまりの人数の多さにリルは途方に暮れてしまった。

「ほら、みんなもやる気だし、このまま何もせずに放置しておく方が危険だよ。ネズミさん達に調べてもらおうよ」

 リアの言葉にリルは渋々頷いた。確かに何もしないままでは神獣の移送も終わらない。内部に敵がいる状態は一刻も早く解消したかった。

 

 そうと決まればと、ジャスティンは父であるリヴィアンに連絡をとった。詳細な作戦は父に丸投げしようと、女性陣の勢いに疲れきったジャスティンは思っていた。

 

 

 

 数日後、拠点にリヴィアンがやって来た。

「やあ、作戦について、ちょっと相談したいことがあって来たんだ」

 リヴィアンは出されたお茶を飲むと唐突に言った。

「アナスタシアに見合いをしてもらいたいんだ」

 部屋にいた全員が首を傾げた。アナスタシアは即刻で嫌だと返す。

「まあ、聞いてよ。実はほかにも疑わしい人物がいてね。この機会に一掃してしまいたい。証拠を持ち帰るにも、屋敷の重要箇所に人が居ない時間を狙わなければならないだろう?アナスタシアが見合いをして気を引いてくれれば、マロン達も安心して仕事が出来ると思わないかい?」

 リヴィアンはアナスタシアにどうかなと提案する。

 アナスタシアは悩んだ。しかしそれで内通者を捕まえられるならと承諾する。

 そしてアナスタシアのお見合い舞踏会が開催されることが決まったのである。

 

 リヴィアンは次に調べて欲しい屋敷の地図を取り出すと、マロン達に依頼をした。リルを介して話し合いをする。

「この屋敷の図面に怪しい箇所を記入してある。舞踏会当日までに少数で侵入して下調べをしてほしい。証拠を確保するのは舞踏会当日一斉にだ。探すのは神獣絡みじゃなくても不正の証拠であれば何でもいい。要は屋敷を調べる大義名分が出来ればいいんだからね」

 マロンは頷くとネズミ部隊に何やら指示を出した。たくさんのネズミ達の中から少数がリヴィアンの元へやって来る。リルに聞くと先遣部隊だそうだ。やたらと統率の取れたネズミ達に、マロンには軍師の才もありそうだとリヴィアンは驚いた。

 実際マロンはその賢さでネズミ達から一目置かれているのだ。マロンに憧れて、努力して文字を覚えたネズミも居たくらいだ。

 先遣部隊は当日まで屋敷に侵入して下調べをすることになった。リヴィアンは先遣部隊を馬車に乗せて連れていく。

 

 そして大変なのはアナスタシアだ。舞踏会当日までに今まで逃げてきた令嬢教育というやつをやり直さなくてはならない。

 特にダンスが、アナスタシアは苦手だった。三拍子は日本人には難しすぎるとアナスタシアは思っていた。単にアナスタシアにリズム感が無いだけなのだが。

 練習相手として付き合わされたジャスティンは、最終的につま先に金属板の入った靴に履き替える事になった。足を踏まれすぎてどうしようも無くなったのだ。踏まれる度に治癒を依頼されたイアンは苦笑いしていた。

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