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拠点の日常

 今日はパンダさん達の歓迎パーティーだ。神獣達の強い希望により焼肉とお菓子が振る舞われる。折角なので近しい人達も招待した。

 

「招待して下さって嬉しいです、リル嬢。マリオン王国で何があったかジュリアナに聞きました。お気をつけくださいね」

 招待させたパーネルは心配そうにリルの手を取る。学園祭騒動から数年、パーネルは現在学園を卒業してウィルス王国とドラゴニア聖国の間に街道を作る事業の責任者をしている。リルの為にウィルス王国に居座る気満々だ。その手腕にはリアも感心するほどだった。

 リルはパーネルの思いに気づいているのかいないのか、通常営業でパーネルに接している。リアから見れば少しは脈があるのではと思っている。

 

 パーネルと一緒に来たエルヴィスは、ここ数年でリアへの猫可愛がりが落ち着いた。流石に抱っこはされなくなってリアとしては安堵している。あれは本当に子供扱いだったのだ。でもまだ隙あれば子供扱いしてくるので注意が必要だ。

「リアも気をつけるんだよ。不審者を見つけても基本護衛に任せて自分で倒しに行かないように」

 エルヴィスはリアの性格をよく分かっていた。心配の方向性が普通の女性相手では無い。ここ数年で数々の戦闘術を叩き込んだのはエルヴィス自身なのだから当たり前だ。

 

 すっかり恒例になった焼肉パーティーの準備をしていると、パンダが興味深そうに覗き込んでくる。小さな神獣達がそんなパンダに焼肉がいかに楽しいか説明しているのが微笑ましい。

 今は大きい子達は狩りに出ている。誰が一番美味しい獲物を狩れるのか競うのも恒例行事だ。大体はシドーが優勝なのだが、みんなドラゴンとは競う気が無いようで次席を争っている。

 

『む、今日はクマと同じ獲物か……残念だったな。私達の方が大きいから今回は私達の勝ちだ!』

 銀狼が高らかに吠えるとクマも負けじと言い返す。

『味は大きさでは決まらないだろう。そちらはオス、こちらはメスだ。肉が柔らかくてこちらの方が美味いに決まっている』

 ギャンギャンと喧嘩する神獣達に公平なジャッジをくだすのはリアの役目だ。料理が上手いリアは神獣達からも一目置かれているのだ。

「はいはい、今日はクマさんの勝ちね。サシの入り具合が美味しそう」

 肉を手早く捌きながら言うと、銀狼が悔しそうに唸る。前回は確か銀狼が勝ったのだから良いだろうにと思うのだが、みんな狩りでは譲れないらしい。リアは銀狼達の様子がおかしくてくすりと笑った。

 

 クマ達が狩ってきた獲物の前に小さな神獣達が群がると、それぞれしっぽを振ったり耳をピコピコさせたりと大忙しだ。早く食べたくてしょうがないらしい。

「もうちょっと待ってね」

 リルがアナスタシアと鉄板に油を塗りながら神獣達に言う。みんないい子にリル達の足元に集まってくるのが可愛らしかった。

 

 今は拠点に聖騎士以外の騎士も数名護衛として滞在している。例の明けの光明のせいだ。騎士達は拠点の日常風景を不思議そうに眺めていた。

 焼肉は初体験のキンバリーも、手伝いながら感心していた。拠点に来てから神獣達との触れ合いには慣れたつもりだったが、まだまだ上があったらしい。

「肉が大体切れたぞ、そろそろ始めるか?」

 イアンが大皿に大量の肉を持ってきてくれた。まずはパンダに大きめに切った肉をレアで焼いてやる。因みにタレは神獣達に人気の果物たっぷりの甘めのタレだ。さっきからハルキが頑張って作っていた。


「では、これよりパンダさんの歓迎会を始めます!みんな喧嘩しないでいい子で楽しんでね!」

 リルが音頭をとると、パンダの元にとびきり上等な肉を運ぶ。一口食べたパンダは感動していた。

『美味しい!お肉がこんなに美味しいなんて!』

 パンダは元の住処でも時々肉を食べていたらしいが焼肉は初めてだ。

 何故か周りで見ていた神獣達がドヤ顔をしている。かわいいなあとリルはみんなの分も焼き始めた。焼肉は神獣達の分からがこの拠点のルールだ。暫くは忙しい。お客様なはずのパーネルと、エルヴィスも慣れた様子で手伝っている。

 王子様なパーネルは初めて焼肉に参加した時何も手伝えなかったので、わざわざ騎士の野営に参加して特訓したらしい。マジかとリアはリルに対するその執念に感服した。

 エルヴィスは猫のご飯を自分で用意してあげる事もあるらしく、初めから多少料理に慣れていた。リアは呆れ返った。

 

 アナスタシアは最近物騒な話が多かったのでこの平和に安心していた。シリアスな展開はどうも苦手だ。

 この時はこの先起こる騒動をまだ誰も知らなかったのである。

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