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通信

 アナスタシアがマリオン王国で奮闘していた頃、リルとリアは大変な仕事を片付けていた。旧レイズ王国の森に移住してもらう神獣の選別である。

 種族ごとにバランス良く居住してもらわなければならないため、数を管理するのが大変だった。鳥達が手伝ってくれて、各森に神獣達の意思を聞きに行ってくれたので大分楽にはなったが、それでも大変な作業だった。

 リルは机に突っ伏したまま作業の終わりを喜んだ。後はハルキの車で希望者を運搬するだけである。

 

 リアは先程のアナスタシアとの通信を思い出して心配していた。今のところ旧レイズ王国の付近の森に、凶暴化した魔物が出現しているからだ。移住したばかりの森で凶暴な魔物が現れたら、なすすべもなくやられてしまうかもしれない。リアは早く『明けの光明』が捕まってくれることを祈っていた。

 

 そんな時、またアナスタシアから通信が入った。リルとリアは慌てて応答する。

「どうなった?大丈夫?」

 リアが問うと、アナスタシアとジュリアナが大丈夫だと笑った。そして事の顛末を報告する。

「そっか、逃げられたんだ……」

 リルとリアは暗い顔で言う。

「マリオン王国側は国外逃亡を防ぐために港を封鎖しましたが、もう逃げられている可能性も高いでしょう。逃亡先は恐らく未だ混乱している旧レイズ王国でしょうね」

 ジュリアナは冷静に状況を分析していた。

「暫くは神獣達にもお願いして例の薬を森にばらまかれないように警戒するしかないね」

 リルはこれからの事を思うとまた頭が痛いとソファに沈み込んだ。

「……貴族の中にも信者がいるって言うけど、本当に信者なのかな?」

 リアが首を傾げる。ジュリアナは顔を顰めた。

「どういう事?」

「連中の目的は多分擬似的な活動期を起こすことでしょう?活動期で儲かった商人とか貴族とかも居たはずだよね。武器とか防具商売で成り上がった貴族とか、そういう商家の人間と婚姻して資金援助を受けてる貴族とか……」

 ジュリアナはハッとした。

「なるほど、その線から探ってみるのもいいわね。今は手がかりが全く無い状態だし。資金源を絶ってしまえばろくな活動もできないでしょう」

「こっちも調べて貰うことにするよ」

 ジュリアナとリアは頷きあった。

 

「その教団の人達、神獣のことはどう思っているんだろう……攻撃されたりしないかな?」

 リルの言葉に、みんな黙り込んでしまった。魔物と対極にある存在が神獣だ。魔物が崇拝対象なのだから、魔物を倒す役割を持つ神獣のことは推して知るべしだろう。勿論神獣の愛し子やドラゴンの聖女と呼ばれている自分達の事も。

「警備を強化しないとね……」

 四人はため息をついてこれからの事に頭を悩ませた。

 

 

 

 気分を変えようとリアが明るい話題を振る。

「そういえば、映像通信機をジュリアナとメリーに贈る許可が下りたよ」

「本当に!?こんな凄いもの貰ってしまっていいの?」

 ジュリアナは大喜びだった。

「顔を見て話せるのは嬉しいわ!これ、作ったのはハルキさんなのでしょう。普通の通信機もそうだけど本当に画期的よね」

 ドラゴニア聖国でもハルキは一目置かれていた。ハルキはどちらかというと生活が便利になったり、娯楽目的だったりする魔道具を多く作っている。それを安価で販売しているのだ。国一番の魔道具技師でありながら、私欲に走らず一般市民の為に魔道具を作っているから人気があるのだ。

 ジュリアナは、愛し子は神にそれぞれ特別な才能を与えられているのだと思っていた。リルは『通訳者』だし、リアのスキルは知らないがスキル封じの腕輪をはめているのは知っている。アナスタシアの『獣医師』のスキルも、他に持っている人を見たことがない。

 さらに四人は難しい魔法も難なく使いこなすのだ。魔法使いとしても超一流だった。

 初めて見た時には愛し子を過小評価していた事を恥じたくらいだ。

 実際神が特別な才能を与えて直接この世界に落とした人間なので、ジュリアナの推測は間違っていなかった。

 

「この間貰った写真機も凄く楽しかった。部屋がリリアンの写真で一杯になっちゃったもの」

 ジュリアナはコロコロと笑う。

『私は疲れた。だって一日中付き合ったの』

 リリアンの言葉にリルが笑った。通訳するとみんな笑い出す。

「ごめんねリリアン。つい楽しくて」

 リリアンはしょうがないなという顔でため息をつく。

 その様子にまた笑ってしまった。

 



「そろそろ切るよ。明日には帰るから」

 話題も尽きた頃、アナスタシアが言う。

「そろそろ夕食ね、長く話しすぎたわ。またこうして話しましょう。今度はメリーも一緒に。そちらにいらっしゃるパーネル殿下にもどうかよろしく」

 ジュリアナがそう言うと、通信が切られた。

 リルとリアは先程聞いた事をイアンに報告するため、団長室に向かうのだった。

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