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救援

「アナスタシア!アナスタシア!返事して!大丈夫!?」

 映像通信機から聞こえたリアの声に、アナスタシアはハッとして急いで通信機のところに行った。そして大丈夫だと伝える。

 進展があったから一旦切るねと言うと。通信を終わらせた。

 

 マリオン王国の代表は全ての肉を調べると、ため息をついた。

「これだけでは場所の特定は困難ですね。もっとメッセージがあれば……」

 その時森から餌を抱えたゴリラが戻ってきた。他の神獣たちもそれぞればら撒かれた餌を持っていた。

「探してくれたんだね、ありがとう」

 アナスタシアが受け取ると、他にもあるがありすぎて運べないと言っているとシドーが空中に光の文字を書いて教えてくれた。

「その場所まで騎士を案内してくれる?」

 神獣は頷いた。

 肉を開いてみると、紙が挟まっているものがいくつかあった。マリオン王国の代表が、草の汁が滲み出て読みづらいそれを並べてゆく。

 それぞれに短い場所のヒントが書かれたそれを繋ぎ合わせて、やっと居場所を特定することが出来た。

 マリオン王国の騎士は早速その場所に突入し、犯人確保と監禁されていると思われる手紙の送り主の保護をすると話し合っていた。

 

 マリオン王国の代表がアナスタシアに話し掛けてくる。

「愛し子様、おかげでやっと今回の騒動を終わらせることが出来るでしょう。我が国では凶暴化した魔物によって多くの者が亡くなりました。犯人を捕えられるのは愛し子様とドラゴン様のお陰です。本当にありがとうございます」

 彼はアナスタシアに深く頭を下げた。大したことをしたつもりのないアナスタシアは居心地が悪かった。

「あの、では帰る時に神獣を数匹連れ帰ってもいいですか?可愛らしい子が多いので他の愛し子も喜ぶと思うんです」

「勿論かまいませんとも、見たところウィルス王国とは棲息する神獣の種類が異なるようですし、友好の証にどうぞお好きな者をお連れください」

 

 アナスタシアは喜んだ。これでパンダを連れ帰れる。一匹では繁殖できないから二家族ほど連れ帰れるようパンダと交渉しなくては、アナスタシアは早速シドーにお願いして通訳してもらった。無事二家族に了承を貰い、アナスタシアはご機嫌だった。

「国の危機を救ったんだからもっと色々要求してもいいのに、欲がないのね」

 ジュリアナがクスクスと笑う。

「欲ならあるよ。かわいい動物に囲まれて平穏な生活をしたいって欲がね」

 アナスタシアはおどけて言った。他の大きな要求は国がするだろう。自分はちゃっかり一番ほしいものを手に入れるだけだ。

 ジュリアナは口元を隠して笑っていた。国のための駆け引きばかり考える自分とは大違いだと、アナスタシアの自由さを好ましく思っていた。

 

 

 

 その後、犯人の拠点と思われる場所に突入した騎士は、縛られ衰弱した二人の子供だけを保護して帰ってきた。

 他の者の姿は無く、もぬけの殻だったという。

 騎士達は内通者の存在を疑った。

 保護された二人の子供からも証言が得られ、騎士の中に内通者が居るのが確定事項になった。

 騎士達が互いを疑い疑心暗鬼になる中、騎士の一人にイタチの神獣が近づいた。

『こいつ、同じ匂いがするよ。あの捕まったヤツと』

 シドーが通訳すると騎士は逃げ出そうとした。しかしドラゴンを前に逃げられるはずがない。あっという間に捕まって捕えられる。その騎士は小隊長という地位にいた。内通者がそんな高位の騎士だと思っていなかったマリオン王国側は驚いていた。今までもこちらの情報は筒抜けだったのだろう。道理で捕まらないわけだ。

 念の為ほかの騎士もイタチに確認してもらい、一応この騒動は終焉を迎えた。犯人達を逃がしてしまったのは痛手だが、この国もウィルス王国に倣って、神獣との最低限の協力体制を築けるようにするらしい。今までのようにはいかないだろう。

 

 保護された子供のうちの一人、十三歳になるパメラという子が薬を作っていたらしい。両親を『明けの光明』に殺され、弟を人質に取られていたそうだ。パメラには薬師としての類まれなる才能があった。それに目をつけられたのだ。本人は魔物を凶暴化させる薬を作り出してしまったことを悔いて、これからは対魔物用の薬を作るつもりでいるという。

 そのパメラが言うには『明けの光明』の信者は各国の貴族の中にもいて、彼らが資金源になっているそうだ。彼女は教団の連中の話をこっそり聞いていたらしい。そして旧レイズ王国にも教団の拠点がある様だ。レイズ王国崩壊後の混乱に紛れて潜伏しているのだろう。

 

 アナスタシアはとりあえず無事仕事を果たせてホッとした。これでも緊張していたのだ。早く帰って皆にパンダを紹介したいと息を吐いた。

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