2 あゆみとの話し合い
俺の名前は大沢隼人。
27歳のサラリーマンだ。
俺には大学の頃から付き合い、結婚した妻がいる。
旧姓北山あゆみ。
同い年で、割と大学でも人気だった。
小柄だが、男好きしそうなスタイル。
滅茶苦茶美人っていうワケでもないが、愛嬌があって、人から好かれる。
一緒の講義が結構あって、そのうち話すようになり、仲良くなった。
自然と付き合うようになり、俺はあゆみをどんどん好きになって行った。
俺は今まで付き合ってきたタイプが、割と気の強い女性が多かった為、素直に俺に甘えるあゆみに惹かれて行った。
あゆみはいつも彼氏とは一緒に居たいタイプで、俺にべったりだった。
順調に交際を続け、社会人となり、生活が落ち着いたら結婚することになった。
必死で仕事をこなし、社会人になって四年後、あゆみと結婚した。
幸せだった。
だが、結婚して一年、最近は俺にはあまり執着しなくなった。
結婚生活に慣れてきたんだろう、と思っていた。
いつまでも俺にべったりではなくなっただけ、と思っていた。
「ああっ!雄大さんっ!素敵っ!あんっ!」
佐竹から送られて来た動画を観るまでは。
佐竹雄大。
俺の会社の元先輩で、営業マンとして優秀な男だった。
俺が主任に抜擢されたタイミングで会社を辞めて行った。
プライドが傷ついたのだろう。
後輩に成績を抜かれ、先に出世されたのだ。
そうなるのも仕方のないことかもしれない。
しかし、だからといって。
「ははっ!大沢よりもイイだろ?あ?言ってみろよ!」
「はっ、はいっ!隼人よりもイイですっ!」
佐竹は俺達の結婚式にも招待していた。
あゆみの事はそこで知ったんだろう。
ふざけやがって。
「今日は何時まで一緒に居れますか?」
「あ?なんだよ、俺と一緒に居たいのか?」
「だっ、だって……あの……もう少しだけ……」
「もう少しだけ、なんだよ?」
「……一緒に居たいです……」
「したいです、の間違いじゃねえの?」
「もう!意地悪!」
最初は脅されていたはずのあゆみも、最近の動画では満更でもなさそうだった。
何故初めに脅されたときに俺に相談してくれなかったんだ?
俺を逆恨みした佐竹が原因だったはずだ。
なら、俺の責任もあるだろう。
相談さえしてくれれば、脅しに使われた動画を観たとしても、あゆみを嫌いになる事なんてない。
相談してくれれば、いくらでも動きようはあったってのに……。
重い足取りで家路に着く。
「ただいま……」
「おかえりなさい、隼人!」
いつもと同じ笑顔で俺を出迎えるあゆみ。
ここでいつもなら俺も笑顔を返すんだが……。
「あれ?元気ない?疲れてるの?」
「ああ、まあな……」
「そう?お風呂入る?すぐ寝たい?」
「ああ、風呂は入るよ」
「わかった、準備できてるよ」
「ああ」
湯船につかりながら、どうするか考える。
あゆみは最近でも俺との約束を断り、佐竹と会っているようだった。
これは脅されているから、で納得できるか?
わからない。
あゆみの気持ちが。
このままあゆみと何事も無かったかのように、今まで通り結婚生活を続けていく事は出来ない。
話すしか……ないか。
「あ、お風呂出たの?ご飯どうする?体調が悪いなら」
「あゆみ、話がある」
「?話?」
「ああ、そこに座ってくれ」
「あ、うん」
佐竹から送られて来た動画をあゆみに見せた。
「あっ!違うの!!これは違うの!!」
「違う?」
「こ、これは雄大さ……佐竹さんに脅されたの!」
「脅された?」
「そうなの!半年くらい前に、佐竹さんが家に来て……佐竹さんって隼人の先輩だったでしょ?だから……」
「家に入れたのか?」
「隼人に用があるからって……仕事辞めて起業するって言ってて……隼人も誘いたいって。だから隼人の帰りを待たせてくれって……」
「それで?」
「お茶を出して暫くお話してたんだけど…‥睡眠薬かなんかを入れられたみたいで……気が付いたら裸で……動画とか写真とか撮られてて……」
「襲われたって事か?」
「そうなの!だから……」
「何で俺に相談してくれなかった?」
「え……だって、隼人に嫌われると思ったから……隼人と別れたくないから……」
「だからずっと佐竹の言いなりになってたって事か?」
「そう……よ。隼人に知られたくなかった……」
「そうか、じゃあ今から警察行くぞ」
「え?警察?」
「ああ、薬盛られて襲われたんだろ?立派な犯罪だ」
「えっ?えっ?で、でも……」
「強姦されて脅されてたんだろ?被害届出しに行こう」
「えっ……そ、そんな……大袈裟だよ」
「大袈裟なんかじゃない。犯罪なんだから」
「で、でもね?ゆうだ……佐竹さんも今大変なのよ?」
「……はあ?」
「起業するなんて言ってたけど、実際はそんなつもりなかったの。それで就職も決まらないらしくて」
「それがどうした?」
「え……あの……」
「あゆみを襲って脅した犯人なんだろ?」
「そ、それはそうだけど……」
「だから、ほら。警察行くぞ?」
「い、いいよ、そこまでしなくても」
そ れ が お 前 の 答 え か