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「ちょっとそこの貴方、お話がありますの。わたくし達についてきてくださるかしら」


翌日の昼休み。

探しに行こうとしていた人達が向こうから声をかけてきた。

いかにも悪役令嬢っぽく目がつり上がった赤毛のツインドリル少女。その後ろに控える黒髪ポニーテールのこれまたつり目の少女、そして大人しそうな茶髪をおかっぱにした少女。この三人がロゼッタ以外の婚約者候補達だ。

彼女達に連れていかれたのは屋上。

向かい合うとツインドリル少女が名乗った。


「わたくし、メリアーナ・ライールと申します。ライール公爵家の次女ですの。こちらの黒髪の方がニコラ・ピアリー公爵令嬢、茶髪の方がミシェリー・リーバス公爵令嬢ですわ。わたくし達、ゼス様の婚約者候補ですの」


ツインドリル――改めメリアーナは他の二人の紹介を終えると胸の前で腕を組んで真っ直ぐに私を睨み付けた。


「貴女のことは調べてありますのよ、フィーネ・ランドル!わたくし達を差し置いてゼス様に取り入ろうだなんて恥を知りなさい!」


連れ出された時から何となく察していたがやはり用件は私への忠告らしい。

大方昨日ゼスと中庭で話していたのを誰かに見られ、彼女達に元平民の男爵令嬢が王子を狙ってるという噂となって届いたのだろう。


「誤解です、メリアーナさん。私は王子様に興味などありません」

「嘘おっしゃい!昨日、中庭で逢い引きしていたのを見た者がいるんですのよ!」

「あれは魔法を見せて欲しいと頼まれたのです。丁重にお断りしましたが」

「そんな言い訳が通じるとでも思っていますの!?」


メリアーナは話を聞かないタイプなのか目をつり上げたまま問い詰めてくる。

どうすれば信じてもらえるのだろうと困っていると、メリアーナの後ろにいたニコラが一歩前に出た。


「メリアーナ、落ち着いて」

「そ、そうですよぅ……話を聞かないのはよくないと思いますぅ……」


ニコラに続きミシェリーがおどおどしながらも止めに入った。


「う……わたくしとした事が……つい感情的になってしまいましたわ」


二人に止められ冷静さを取り戻したメリアーナは私に向き直る。


「……貴女がゼス様と何を話していたのか、お聞かせ願えますかしら。婚約者候補として、わたくし達はあの方を不埒な輩から守る義務があるのですわ」

「はい、私も誤解されたくありませんから」


私は素直に応じゼスとのやり取りを事細かに説明した。

彼を嫌いと言ったところも隠さずに。


「……貴女は本当にゼス様に取り入ろうとしているつもりはないのですね?」

「はい、寧ろお金を積まれてもお断りします!」

「そ、そんなに……?」


いい笑顔で即答すればメリアーナは目を丸くした。


「なぜですの!?ゼス様はあんなに素敵でお強くてお優しくて素晴らしいお方だというのにっ……!」


寧ろ私が聞きたい。

あれのどこに惚れる要素があるというのだろう。

私にはわからないだけでこの世界の女性はあれがいいのだろうか。

戸惑っているとニコラがメリアーナの肩をぽんと叩いた。


「婚約者候補達の中であの人の事をそう思ってるのはメリアーナだけ」

「ニコラさんに同じくですぅ。私達……多分ロゼッタ様も、あの方と本当に婚約したいとは微塵も思ってないのですよぉ」

「あ、貴方達まで!?」


訂正、どうやらゼスに本気なのはメリアーナだけらしい。

そうであるなら考えるまでもなくロゼッタを自由にする為にゼスに宛がうべきはメリアーナだ。

彼女の方もゼスに気があるのなら問題ないだろう。


「……つまりあの王子様を好きなのはメリアーナさんだけってことなんですね?」


尋ねてみればニコラとミシェリーがこくりと頷く。


「べ、べべべ別にっ!好きとかそう言った事ではなく、わたくしは貴族として憧れているといいますか尊敬しているだけでっ……!」


メリアーナは分かりやすいほど頬を赤くして狼狽えだした。

その様子に私だけでなくニコラやミシェリーまで生暖かい眼差しを向けていた。


(ロゼッタが私の最推しであることに変わりはないのですが……メリアーナもなかなかに推せますね。素直になれないのも照れ隠しが出来てない所も可愛いです)


ほこほことした気持ちになりながら私はメリアーナに一歩近付く。


「メリアーナさんが王子様の事を大好きなのがよくわかりました。王子様の心をメリアーナさんが射止められるように私、全力で協力します!」


「だ、だからそういうのでは……っ!え、協力?」


再び目を丸くしたメリアーナに私は笑顔で頷いた。


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