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「ここで何をしている」


黒い瞳に睨まれ思わず後ずさる。


「……先生に頼まれて資料を取りに来たんです」

「壁に耳をつけていただろう。あれはなんだ?」

「壁がいい素材でしたのでつい!私、壁のひんやりスベスベした感触が大好きな壁マニアなので!!」


我ながら苦しい言い分けだと思う。

ヴィンセントの視線が痛い。


「それより貴方こそどうしてここに?ドアが開いた音なんてしませんでしたけど」


なんとか話をそらそうと問い掛ければ彼は肩を竦め深くため息をついた。


「俺は最初からここにいた。お前が後から入ってきたんだ……ようやく一人になれる場所を見つけたと思ったのに」


その言葉には思い当たる節がある。

ヴィンセントは王子以上に顔が整っていて父は騎士団を纏め上げる団長。彼自身も将来はその役職を継ぐと期待されるほど強い。そんな優良物件を女性達が放って置くはずもなくゲームの中では常に交流を持ちたい女性達に追いかけられ逃げていた。

やっと見つけた一人になれる安息の場所に、私という乱入者が現れてうんざりしているのだろう。


「では取引しましょう」

「取引?」


眉を寄せたヴィンセントに私は頷いて見せる。


「私は貴方がここにいる事を誰にも話しません。その代わりに貴方も私がここでしていた事を誰にも言わないでください」

「なるほど……お前が保健室を盗み聞きしていた事を黙っていろ、と言うことか」


やはりヴィンセントは誤魔化されてくれなかったらしい。

正直に頷くと見定めるような視線を向けた後短く「わかった取引に応じよう」と了承してくれた。

その時、保健室のドアがガラリと開く音がして誰かが出ていく足音がした。慌ててヴィンセントの横を通り抜けドアを数ミリ開けて出てきた人物を確認する。出てきた人物はロゼッタだった。なぜか悲しげに顔を歪めている。


(推しの悲しげな顔……可愛すぎますが壁一枚挟んだ向こうで一体何が!?こうしちゃいられません!ロゼッタの後を追わねば)


「それでは私は用事があるのでこれにて失礼します!」

「おい!?待て!」



ヴィンセントが引き留める声を無視して私はロゼッタを追い掛ける為、資料室を飛び出した。



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