営業マンと雀
彼は営業マンだった。
毎日暑い中も寒い中も歩き回ってあらゆる家に訪れた。
ノルマを果たさなければ上司に怒鳴られる。
しかし、彼からすればどう見ても価値のない商品を何も知らない無知なお爺ちゃんお婆ちゃんや若者に売り付けるのは辛いものだった。
罪悪感で押しつぶされそうだ。
けれども、これをしなくてはお金が稼げない。お金が稼げないと、生きていけない。
俺は別に何十人の美少女に好かれてハーレム築きたいって言ってるわけじゃないのに。
俺は別に巨大な城のマイホームが欲しいって言ってるわけじゃないのに。
ただ、生きたいだけなのに。なんでこんなつらい目に合わないといけないんだろう?
ある日、彼は ああ、休みたいな 働きたくないな と思いながら朝の支度をしていた。
ベランダをふと見ると雀がいた。
彼は呟いた。
「いいなぁ、雀は。俺も雀になりたい。毎日アホな顔してエサ食ってチュンチュン言ってりゃいいんだろう」
ベランダの雀は部屋の中の彼を見て思っていた。
「いいよなあ人間は。
仕事して美味いもん食えてネットで遊んでTV見てスポーツしてゲームして、何でも出来るんじゃねえか
俺たちなんかアホな顔してエサ食ってチュンチュン言う事ぐらいしかやる事ねえよ」