親友
彼はヘラリと笑って「出来たら責任取るから」と言った。
言った瞬間、親友の右手は見えない早さで動き、ヘラリと笑った彼はソファーから床へ転がり落ちていた。
「あっアキちゃん……!」
「有紗は黙ってて」
ワナワナと怒りで親友の体が震えている。怒るのは当然だ。
でもそれは、本来私がしなければいけない事なのに、親友任せで情けない。
彼にとって私は遊び相手だったのかもしれない。でも私は本気だった、本気のつもりだった。
ずっと、親友は私の心配をして反対してくれていたのに、中出しされたあげく浮気現場なんて見なきゃ、今でも夢見がちに彼を想っていただろう。
「出来たら責任取るですって? どうやって?」
「痛っ……だから、結婚するって言ってんだろ!」
「紙切れに名前書いただけでヒト1人の命に責任取れたと思うな馬鹿野郎!」
叫んだ瞬間親友の体は飛び上がり、着地地点には頬を撫でながら驚愕に目を見開く彼が居た。
話し合いという名の一方的な制裁が終わり、親友の家に着くと涙が出た。
感謝してもしきれない。私が馬鹿なせいで、親友も沢山傷つけた。
「ごめん、ごめんねアキちゃん」
「なぁーによぅ、いい加減泣き止まないとチューするからね」
「うん、うん、ごめんね」
「はいはい、ほらお茶飲んで水分補給」
「ん、……はぁ、久しぶり男のアキちゃん見ちゃった」
涙で赤くなった顔を隠しながら言うと、親友は不貞腐れたように唇を尖らせる。
「心外ねー、心はいつでも男の子よー?」
「え? 見た目じゃなくて?」
「やだ、見た目まで女にしたらただのオカマじゃない!」
「違うの!?」
「あんた何年アタシの親友やってんの? ンもぅ信じらんない! この口調だってあんたが喜ぶからやり始めただけなのに!」
「え? え? だってアキちゃん出会った時にはもうそんな口調だったし」
「そうよぉ! あんた馬鹿彼氏が居たからね、男だと思われたらお知り合いになれないじゃない。警戒されない為に研究したんだから! あーもぅイヤんなっちゃうわ」
「ご、ごめんね?」
「もーいいわよ、馬鹿男とは切れたんだから、それに謝る必要もないわ」
アキちゃんが姿勢を正すから、私も隠してた顔を上げて視線を合わせる。
「最初からあんた狙って近づいたアタシの方が、ある意味あの馬鹿男を馬鹿と呼べないからね」
「え? 狙っ……どういう意味?」
「そのままの意味よぉ? 失恋して泣いてる女の子を部屋に連れ込む男の考える事、分かるかしら?」
「え、と……分かりたく、ないような……」
「分かるまで教えて あ げ る」
喉からでかかった悲鳴は、オカマだと信じていた親友の口に塞がれて出せなかった。
エロい展開までいく気力を失った没品をこっちに投げてみるテスト。