奇妙な出逢い
霊感が強くないと言えば嘘になる。
恵南高校二年の男子生徒である少年は、今日の一時限目の授業を受けていたとき、ある不審な点に気づいた。
いつもどおり、板書をノートへ書き写していたときのこと。
そのノートに知らない字が書かれていたのだ。
もちろん、書き写した漢字の読み方がわからないとかそういうことではない。
書いた覚えのない文字が書かれていたのだ。
初めは何かのいたずらであろうと思った。
『ねぇ、この文字みえてる?』
と書かれていた。一瞥し、特に何も思うところはなく、その文字を消した。
それが引き金となったのだろう。考えてみればそうだ。見えているかという、文字の問いに対して、その文字を消すということは、その文字が見えている証左、応答に他ならないのだ。
もし、この文字を消さなかったなら少年の高校二年生の一年間は、全く別のものになっていたことであろう。
気を取り直してページめくり、板書写しを再開しようとすると今度は、はっきりと見た。
徐々に文字がノートに浮かび上がっている。
『みえてるんだ!』
『私、たぶん幽霊になっちゃったの!』
『なんかあんまり記憶もなくって、どうしようかと思ってたの!』
『曖昧模糊ってかんじで、なんかよくわかんないけど、文字は書けるみたいなの!』
『声は出せないみたいで、誰も気づいてくれないから、たぶん私の姿も誰にもみえてないの!』
『この文字に気づいてくれたってことは他の人にも、この文字はみえるのかな?』
「(知らんがな)」
面白味がなく真っ白だったノートには、際限なく言葉が溢れ出し、すぐに、寄せ書きさながらの喧騒に包まれていった。
そして、少年はそのなかの一つに目を止めた。
『探してほしいものがあるの』