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狼少年の最後の言葉は

作者: てぺ

だいぶ複雑になりましたが。

自分の中で納得するまで読んでいただければ幸いです。

 赤ずきんと狼少年の話


 昔々のそのまた昔、いつの話だったのか。

 それともついこの間の話だったのかもしれない。

 ついぞ本当の言葉を口から出さなかった少年がいたらしい。

 もちろんボクは嘘を吐いたことなんて一回もないし、嘘を吐きたいとも思わない。


 だからボクの言ったことはすべてホントのことだ、ウソはつかない、これからも。


 ****


「キミはカミサマって信じるかい?」


 過去の夢を見ている


「ボクかい?質問に質問を返すとは、キミはなんて非常識なんだ!」


 初めて『あいつ』に会った時の夢


「そこまで言われては、さすがのボクも言わざるを得ないね」


 どんな関係性かと問われれば「腐れ縁」間違いなくそう答える


「ボクは居ないと思っているよ、だってそんなのがいたらこの世界はもっと不幸に満ち溢れているはずだからね」


 ずっと一緒だと諦めたほどに


「なんの意味があるかって?いやいやこれはスゴク重要なことなんだよ、なんたってキミの一生を左右するんだから」


『あいつ』は一言で言うと「嘘吐き」


「いたい、いたいよ、ボクに物を投げないで、痛くて痛くて泣いてしまうから」


 四六時中嘘を吐いていて本当のことを言ったことなんて、一回も無い


「ゴメンね、ホントはそこまで重要なことではないんだ、ほらキミなんだか無口そうだからさ、話のタネにしてみただけだよ」


 そう、『一度も本当のことをその口から聞いたことが無い』


「ボクの名前は■■■■だ、これからよろしくね」


 結局その名前も嘘だった。


 ****



 場面は飛ぶ、これは夢なのだから当然といえば当然だ。


 ーー傘を忘れた日に、雨が降った。

「キミに水は似合わない、あいにく僕の傘は一人用だからね、キミの入るスペースはないよ」


 そう言って、傘に入れてくれた。

 後から聞いたのだが、水も滴るとかけたらしい。

 それだと、意味が変わってしまうのだが『あいつ』は気づいているのだろうか


 ーー運動不足が祟って山登り中にバテた。

「もうへばったの?キミ根性無いからね、ボク先行っちゃうから」


 そういう割には顔がニヤついていて、側についていてくれたことを覚えている。


 ーー『あいつ』と二人で服屋に行った。

「あんまり似合わないよそれ」

 あまりにも真剣な顔で言われたから、本気にしてしまってトイレに駆け込んだ、すぐに間違いに気づいたのだけれども。


 戻ってみたら購入済みのソレを渡されて、人にもらったなんて言われた。



『あいつ』は嘘しか言わないくせに致命的に嘘が下手だ、もともと嘘を吐いて人を騙すことを諦めているみたいに。

『あいつ』は嘘しか言わないくせに正直者だ、もともと人を騙すことを知らないみたいに

 だから時々、本当か嘘かわからなくなる時がある。

 そんな時『あいつ』は見計らったように


「ボクは、ウソついたことがないよ、これまでも、そしてこれからも」

 そう言って私を安心させる。

 ****


 ーー過去の夢は最後の場面まで跳ぶ『あいつ』が出てくる最後の場面まで、


 それは唐突に訪れる、まるで天変地異のように私の全て(セカイ)を変えていく。


「もう会うこともないだろうからね、バイバイ」


 私の家まで付き添った『あいつ』はそう言った、

 いつもの挨拶……そこには何の違和感も無く、いつもの言葉に私はまた明日とか、そんな風に答えたはずだ。



 だからずっと後悔している、

 二度と会えないのであればそうと言ってくれればよかったのに、

 また明日と『あいつ』が言っていたら、違和感に気付くことができたのに、


 だがこれは、ありえない

『あいつ』は本当のことを言ったそぶりを見せなかった、

 いつもの調子で、いつもの顔で、『あいつ』はウソ(本当)を言った


 次の日『あいつ』は居なかった

 どこを探しても居なかった『あいつ』を見つけるのは得意だと、そう豪語していたのに、影も形も残ってない。


 何回も通話をしていたのに『履歴に(その記録は)残っていなかった』

 何枚も写真を撮ったはずなのに『そんな(写真)ものは最初からなかった』

 卒業アルバムを見ても『そこ(あいつの場所)には誰も居なかった』


 誰かに『あいつ』のことを聞く勇気がない、『そんな人どこにも居なかったと言われたら』


 それでも一縷の望みを賭けて『あいつ』の家に行った


 ーーそこは空き地だった

 通りかかった灰色のモノに、ここに家がなかったか聞いた『現実を認めたくなくて』

 だが現実は無情だった、灰色のモノは意味のわからない言語で「そんなものは無かった」と言った。


 そこで私は心の折れる音が聞こえる。

『あいつ』はもともとどこにも居なかった。


 嘘を吐き続けた、その狼少年は最後に本当の事を言ったが誰も信じてはもらえない。


 狼少年は狼に喰い殺された『嘘吐きは嘘に殺された』


『あいつ』は世界の「嘘」にされたのだ、

 誰もおぼえていない

 どこにも残っていない

 何もおかしいところは無い


 そこから先はどう帰ったのか憶えていない、いやそもそも帰ったか?



 ーーいや、どうでもいいことだ『そこには貴方(あいつ)がいないのだから』

 ####

 心の柱は折れたままだ。


 会ったばかりの頃、転んだ私に貴方は手を差し出した。

 何度もその言葉()に救われた。

 だが私が貴方を救ったことはあっただろうか。

 いつも救われてばかりの私は、不安になってまた貴方に問いかける。

 貴方はいつもどおりの答えを返すだろう。

 ーーカミサマはいなかった

 貴方の言葉にまた私は救われる。


 ーーここに至って初めて気付く、私には貴方が必要だ

 消えた貴方に壊れた私を捧げよう『ずっと貰ってばかりだったせめてものお礼に』

 貴方なら私を救うことなど造作ないだろう『だがそれでは私は弱いままだから』

 体は重く動かないが、思考だけは延々と『貴方がなければ私には意味がない』


 だから最後に貴方に体を預けよう『だからそれに意味はあるのだろう』


 消えた貴方に壊れた私を捧げます『もらった勇気を決意に』

 ####

 ****

 夢から覚める『目前にはトラックが迫っている』


 あぁ、今まで夢だと思っていたのは走馬灯だったらしい。

 いまのままの速度で突っ込まれたら、死んでしまうだろう。

 しかし、これで『あいつ』のところに行けるだろうか。

 てをしっかりと握って、今度は離さないと言ってやろう。

 また貴方と会えたなら、最後のウソ(本当)本当()にできる。

 すぐにまた会える、絶対に。



 それにしても、死ぬ時は笑顔でと、決めていたのに、なぜか笑顔を作ることが、できない。

 隣に貴方がいないからだろうか、貴方の最後(本当)の言葉はずっと決まっていたはずなのに。


 意識がなくなる直前に、聞き慣れた声が聞こえた気がした。



 ####

 ーー貴方にもらった勇気は此処にある


 貴方の本当の名前を覚えている『その記録が何ひとつ無くなっても』

「櫛 犬良」ずっと一緒だと諦めた(信じていた)貴方の名前を

 貴方との思い出はまだ消えていない『その証拠が何ひとつ無くなっても』

 ウソをついたことがないと言った貴方の優しい顔を憶えている

 貴方が消えたことで私は決意した。『その記憶が何ひとつ無くなっても』

 この決意が貴方がいた何よりの証拠


 忘れることはありえない『そう私が決めたから』

 忘れることは許さない『そう私が定めたから』

 忘れることはありえない『忘れる前にまた会えるのだから』


ご読了ありがとうございます

自分でもかなり読みにくいものになったと思いますが、それでも最後まで読んでださった方に改めて感謝を。



名前の由来

櫛→木節→キブシ キブシの花言葉は……


犬良→狼 狼少年はいつも嘘を……


縦読みの箇所があるかも

ヒント・不自然にひらがなの場所があります。

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