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第八話 紅龍

明けましておめでとうございます!


今年もどうぞ「英雄連合」を宜しくお願います

一体何が起こった?


揺れる頭を抑えながらヴォードがゆっくりと半身を起こす

胸が異常に痛む

目線を下に下ろしてみるが 視界がかすれて胸の状況を視認出来ない

ヴォードは胸に手を当ててみる、すると鎧に(ひび)が入っている感触がした


馬鹿な

特注の鎧に罅をいれるなど・・・一体どうやって?

ヴォードは胸に手を当てたまま 暫く静止する


すると、前方から足音が少しずつ迫ってくるのが聞こえてきた

ヴォードは顔を上げ、霞む目を凝らして前を見つめる

視界がぼんやりとする中で、赤い光がうっすら浮かんでいるでいるのが見える

やがて視界が晴れる


「っ・・・貴様っ!!」

ヴォードがぎこちなく立ち上がる

「随分と飛ばされていたようじゃのう」

信長が歩きながら煽りを投げ掛ける


その右手には 見慣れぬ形をした剣が握られている

刃は月光を受けて目を突き刺すような鋭い光を放っていた


「・・・召具魔法(スワフト)を使って生み出したのか?」

ヴォードが問う

「すわふと?よく分からぬが魔法のことなぞ一切知らぬぞ?」

信長が声を少し高めて答える


「・・・」

一体どのようにしてあの剣を作り出したのかは知らない

だが一つ分かることがある

・・・あの剣に近づくのは危険だ

刃から量り知れぬほどの魔力を体に感じる

次に先程の槍のような一撃を受けたら ただでは済まないだろう


ならば、遠距離からの攻撃が一番だ

ヴォードが両腕に気を集中させて信長の方向へと掌を向ける

両の掌に円陣が浮かび上がる


火炎球(ヴァルス)!!」

ヴォードの詠唱と同時に 二つの円陣から火の玉が放たれる

信長の頭ほどの大きさの火の玉が燕が空を駆けるかのような速さで、一直線に信長を目指して進む

空気と炎か擦れる音が信長へと迫る


「くっ・・・!」

二つの火の玉が信長と二歩ほどの距離にまで迫る

心臓の鼓動が動きを早める―


瞬間、腕の龍が赤みを強め 信長の眼孔が紅色へと変わった

すると―


見える


火の玉は燕の飛ぶ速さから、亀の歩くがごとき遅さへと変わった

火の揺らめく様子までもが 鮮明に見える


信長はその場で火の玉を躱せるように身を傾ける


信長の眼孔が紅色から 元の黒眼へと移る


直後、火の玉は信長の真横を通りすぎ はるか後方で爆発する音が聞こえた

振り返ると、家が炎上し炎柱が見上げるほどの高さにまで上っていた


「おーよく燃えとるわ、こりゃまともにくらうことは出来んのう」

信長が余裕を浮かべてる様子でしゃべる一方で、ヴォードは呆然と相手を見つめる


(あの一瞬の動きは何だ!?)


もはやどんな超人であろうと避けられぬほどの距離にまで迫っていたはず

だが奴は火の玉を目前にして信じられぬほどの速さで姿勢を変えてこれを避けた

どう考えても人間の動きではない


「そろそろ儂から仕掛けてもよいか?」

信長が刀を握りしめ、刃の先をヴォードに向けながら言う


ヴォードは先程飛ばされた際に失った黒鎚を即座に召喚して構える

相手の動向を一瞬の瞬きもせずに見つめる

額に汗が流れるのを 感じる


「・・・ゆくぞ」

信長が刀を下段の構えに変える

そして膝を曲げたかと思うと そのまま地面を蹴ってヴォードへと勢い強く駆け出した

目にも留まらぬ速さで 一直線に突き進む


(っ!?やはり速い!)


槍での戦いの時とは明らかに速さが異なっている

目で追っても残像しか見えてこない

あの赤い光が関係しているのかは分からんがそんなことを考えている暇は無い


(黒鎚を振ったところでこれでは躱されるだけだろう・・・だが、奴は幸いにも動きを変えることなく一直線で向かってきている。なら・・・)


ヴォードが目の前の足元に掌を向ける

加重(グラビドン)!」

詠唱として認識されるかどうかほどの早さで唱える


信長が、ヴォードと7歩ほどの距離にまで迫る


掌が向けられた地面では円陣の形成が始まっている


(間に合え・・・頼む!!)


ヴォードはコンマ秒の世界をかなり長く感じていた


円陣の形成が進み紫色の耀きを帯びはじめる


信長はヴォードと5歩の距離にまで迫る


(円陣はまだか!?)

ヴォードは黒鎚を構えながらも円陣を見つめる


3歩の距離にまで迫った時、遂に刀の間合いにヴォードが入る

(今じゃ!)

信長が刀を振り上げんと手に力を込める

瞬間


魔罠発動―加重(グラビドン)


信長の足元で円陣が紫の耀きを放つ


信長がその光に気づくよりも先に、足に違和感を感じた


(っ!?足が動かぬ!)

目線を下ろすと円陣のようなものに足が捕らわれているのが見えた

足が地面にめり込んでいく感触がする


(間に合ったか!)

ヴォードが兜の奥で歓喜の表情を浮かべる

黒槌を頭上高くに掲げる


「死ね!ノブナガァ!!!!」

叫び声とともに黒鎚が信長へと勢いよく降り下ろされる


(くそっ 避けられぬ!)

足の動きを封じられた信長は黒い鉄の塊を躱すことが出来ない


ならば

信長は下段に構えていた刀に再び力を込める


(・・・頼んだぞ)


黒鎚が頭上に直撃しようとしていた


直前、刀が迫り来る黒鎚へと振り上げられた


黒鎚のような巨大な鋼鉄の塊には、名人が悠久の時間をかけて作り上げた刀をもったとしても歯が立たないであろう

それに加え、黒鎚が降り下ろされた状態であるならもはやどうにも出来ないはずだ


だが― シュッ


刀が出したのは 黒鎚に弾かれて刃が折れる音ではなく、黒鎚に刃が入り込む音であった


刃が黒鎚を真っ二つにするように鋼鉄を裂いて進む

刃が通った線が赤く輝く


刃の先が黒鎚から顔出す

直後、黒鎚の頭は真っ二つに裂かれ 黒い鉄の塊が二つ、地面に落ちる

鉄の塊の断面は二つとも、まるで製鉄途中の鉄のように熱で溶けて真っ赤に輝いていた


「い・・・ったい 何が・・・」

ヴォードが地面に転がる鉄の塊を見て呆然とする

「き、貴様っ!」

ヴォードが信長を睨み付けようと目線を上げる


しかし目に入ってきたのは 信長が刀を両手で引いて構える姿


「死ね」


一瞬の出来事であった


刀はヴォードの胸をめがけて突き進む


次に信長が手に感じたのは、金属に弾かれる感触ではない


刀が鉄を突き破り、肉を引き裂いていく感触であった







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