第二話 新生活
「あっ、起きたんですね!よかったー、もう3日も寝どおしてましたから心配しましたよー」
「うむ・・・して、そちは一体?」
「私ですか?私はルミナ。あなたこそ一体誰なんですか?家の庭にボロボロになって倒れていたからびっくりしたんですよー?」
「るみなか、名前からして紅毛人っぽいが・・・」
繊細で流れるようにさらさらとした金色の髪や南蛮人の商人が持ってくるような宝石のように透き通った翡翠色の目はどうみても日の本の民のものではない
しかし紅毛人のように顔の堀が深いのでもなく、どちらかというと日の本との混血のような顔立ちをしている
(齢は13程か?それにしても美しい少女だ)
「あのー・・・どうしたんですか?」
「んっ、これはすまぬ。少々考え事をしておってな。儂の名は織田信長だ。」
「ノブナガ・・・ですか。珍しい名前ですね」
「それよりもそちは先程儂がボロボロで倒れていたと言っていたが・・・」
「はい、服が焦げたように真っ黒でボロボロになっていて裸同然でしたよ!」
(・・・本能寺の炎のせいだな)
「そちらで寝ている人はちゃんと服を着ていたんですけどね」
「そち、こやつと知り合いではないのか?」
「全然。一日に二人も知らない人が敷地内で倒れていたからもう訳が分からなかったんですよ!因みにそちらの人は屋根の上に倒れてました」
(やはりこやつも儂と同じ境遇であったか)
「ふむ、未だに状況が掴めないが取り敢えず助けてもらったことに礼を言う」
「まあいいですけど。それよりもご飯にしましょう、3日も寝ていたんだからお腹も減っているはずですよ!」
「むぅ、確かに飯が食べたい。すまんがそうしてくれ」
信長の腹の中は胃液がほとばしる音でいっぱいとなっていた
「では、今から作りますからノブナガさんも手伝って下さいね!」
「むっ わ、儂に食事の用意を手伝えだと!?」
いきなりの発言に呆気にとられる信長
「当然です。この村では働かざる者食うべからずですよ。ノブナガさんも見た感じ体調も問題ないみたいですからね」
「一城の主であった儂がまさか食事の用意を手伝うことになるとは・・・」
ため息を吐いたが、この身を助けてもらったのだから文句は言えまい
「そんなに難しいことは頼まないから大丈夫ですよ。私の弟も手伝ってますから」
「弟?」
信長がぴくりと反応する
「はい、3歳年下の弟でリュータって言うんです」
「竜太か、日の本にもいそうな名前だな」
「ヒノモト・・・?まあいいや、そろそろ食事を作りましょう」
ルミナはそう言うと部屋から出て、大声で弟を呼んだ
「リューターーーー!!!!!ご飯作るわよー!!!」
「今行くよー姉ちゃん!」
小わっぱの高めの声が聞こえたと思うとすぐに階段を走って降りる音が聞こえてきた
「おまたせ姉ちゃ・・・あっ!面白い髪型のおじさん起きたんだ!!おはよう!」
少年は無邪気な笑顔で言う
面白い髪型とはまさか髷のことか?
こやつ武士の魂を「面白い」と申したな?
まあ、ここが日の本ではないのなら理解できぬのも無理は無いか
リュータといったこの少年
見た目は姉と同じく金髪で翡翠色の目をしており、まさに美少年である
(どことなく蘭丸に似ておる)
「うむ、これからしびらく世話なるぞ リュータとやら」
「うん、こちらこそよろしくね!」
「じゃあ、昼御飯作りましょうか」
こうして信長の異世界における新たな生活が始まることとなった
次回でアレクサンドロスが目覚めます