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プロローグ

ずぶ濡れの少女が一人、何者かに焼き尽くされたかのように灰塵に帰した村を歩いていた


かつてこの村は規模は小さいながら活気に満ちていた


村人は汗を流して畑を耕し、、子供は畑仕事を手伝い終わった後に村中を友と共に駆け回って遊ぶ

夜にささやかに食事をとり、家族といつもの変わらない会話をする



そんな村は、もう無い




春が訪れたばかりのうらやかないつもと変わらない日に、奴らはやってきた


黒く巨大な馬に跨がり、黒く重厚な鎧で身を包む集団―


その鎧の胸部に描かれた双頭竜の紋章が見えると、私たちは皆即座に顔から血の気を失った


「帝国」軍は私達が逃げ惑うのを見ると、黒馬で突撃し、次々と踏み潰していった


いつも優しくしてくれたアンネおばさんが槍に貫かれるのが見えた


子供が生まれたばかりのこの村の子供皆のお姉さん役のフィンネが剣の一振りで体を裂かれ、赤ん坊が黒馬に踏みつけられるのが見えた、


物心がついていない時からの親友であったリーンが魔炎によって消し炭にされるのが見えた



もはや私は逃げる足を止めていた


親友が死に、皆が死に

こんな状態でこれからを生きて何になるというのか


呆然と立ち尽くしていた私に帝国兵の黒馬が駆けて近づいてくる


私は微動だにせず奴の槍が私を貫こうとするのを見ていた


魔炎球(ヴァルス)!」


聞きなれた声の詠唱が聞こえた直後、炎球が当に私を貫かんとしていた帝国兵へと直撃し、馬もろとも全身が魔炎に包まれ消し炭となった


「フォルテ!」


父は私の名を呼ぶと 強引に手を引っ張り私を引き寄せ、そのまま抱えて走り出した

後ろからは帝国兵が後を追ってくる


父は家と家の間の細い道を通り、村の外れの井戸をめがけて走った


「フォルテ・・・」


「・・・お父さん?」


「生きろ」


そういうと父は私を井戸の中へ放り投げた


「おとおさあああああああん!!!!!!!!!!!!!!」


叫びの直後 私は水に強く打たれ、そのまま意識が遠退いていった





意識を取り戻し、井戸の外へ出た時には この村は灰塵に帰していた


春が訪れてばかりにもかかわらず、冬のように色の無い世界がそこにあった


彼女は父を探すことなく村を出た


恐らく父はもう生きてはいないだろう


にも拘らず遺体を探そうとすらしなかったのは、父の亡骸を目にしてしまったら もう、生きていく気力が無くなってしまうかもしれなかったから


父は生きろと言い、自分の身を省みず私の命を救ってくれた


この命を無駄にする訳には、いかない


私が死ぬ時は、帝国を地上から駆逐する時




少女は草原の道を歩いた


辺りはもう日が沈み暗くなっている


空を見上げると西の方向に青月(ラディナ)緑月(カルディナ)が見えた


その下に、黒曜石で造られた小さな塔が見えた


十二大神の一柱 復讐の神"ガロン"の祠である


少女は祠の前に跪き、祈る―



「天に召します我らが神よ、偉大なる復讐の神ガロン様よ・・・どうか、我が下に蛮虐なる帝国を撃滅せんとする勇者様をお呼び寄せ下さい―――」







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